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嵐がこようとも

何でもやってやる!そう意気込んでいたが、現実は甘くない。自分より上手くできる奴はいくらでもいる。
そう。気合いで乗り切ろうなんてのは自分ぐらいだから、暑苦しい奴と言われる。仕方ないじゃないか。
それしか取り柄がない。わからない事は聞いて回る。できない事はわかるまで聞く。それは単純な質問、動作、振舞い、生活の全てに至る。
でも、積み重ねて学習した事は忘れない。
『お前、その性格どうにかならないか?』
モニター越しに最近よく言われる。何人目かのパートナーだ。嫌いではないが、少し適当だ。
『知識だけあってもダメなんだぞ』
パネルをコツンと叩く。
『次の無人探査に選ばれたんだ。探査用の作業、わかるか?知らない所に1人きりだ。無線も途切れがち、耐えられるか?』
ワクワクするではないか!
『お前、無事に戻って来いよな。データ分析一緒にやるからな』
パネルを優しくなぜる。そして、コンソールから接続プラグを抜く。視界や音、パートナーの息使いも聞こえなくなった。

次に視界や音を感じた時には生活環境レベルではない轟音と振動で状況の把握は刹那だったが無人探査機にいるとは思わなかった。オペレーター補佐だとばかり思っていたから。着陸した場所は火星だ。あぁ、もうすぐ砂嵐が来る。エネルギー供給は?太陽がみえなくなる。ソーラーパネルは畳まないと隠れる場所はないか?
気合いだ。ミッションクリアだ。

『人工知能にあんな暑苦しい性格いれたの誰です?
あいつが気合いだって、乗り越えたらコントロールできませんよ。人間だと勘違いしてますから。え?僕が性格矯正するんですかぁ?わかりましたよ。気合いでやります。あいつ、頑張ってますから』

7/29/2024, 10:09:47 PM