春ノ花

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1/16/2026, 1:16:59 AM

この世界は

屈折とは
光波・音波などが、一つの媒質から他の媒質にはいる時、その境の面で進む向きが変わること。

「ねぇ朱里(あかり)、このノート渡しといてくれる」
「自分で渡してみたら」
「だって、溝口さんってなんかずっと怒ってるじゃん。怖いもん」
「じゃあわかった。渡しとくね」
私は溝口胡桃(くるみ)と書かれてあるノートを受け取る

私は自席に座っている胡桃の元へとノートを届ける
「胡桃、これ、ノート返ってきたけど」
「いらない!」
胡桃はそっぽを向いたままそう言う
そしてちらっとこちらを見てから胡桃はノートを奪い取るように受け取る

今日も1日の授業が終わり、私は胡桃の席へと向かう
胡桃は帰り支度をしている最中だった
私はそんな周りの様子なんて気にしていない胡桃に話しかけた
「胡桃、一緒に帰ろう」
「やだ!」
胡桃は帰り支度の手を止めないで言った
そう言われて私はカバンを肩にかけて教室を出て、廊下を歩いて1人帰路へと向かう
すると気づけば、左後ろに胡桃がカバンを持ってついてきている
私は何気なく口にする
「今日もいい天気だね」
「雨!」
胡桃はそう返事する

私の友達、溝口胡桃が見ている世界は屈折している
胡桃は他の人とは見えている世界が違うだけ
屈折しているだけなのだ

私と胡桃は一緒に帰路を歩いていた
すると
「あっちいけ!」
胡桃が急にそんな事を言う
「えっなんで?」
私はそんな率直な疑問が口を出た
胡桃は向こうの方を指差している
「お前なんて大嫌い!」
「はいはい」
私は胡桃が指差す方へと1人歩いていく
そしてちらっと胡桃の方を振り向くと
胡桃は小さな少女が落としたのであろうマフラーを拾って渡してあげていた

1/14/2026, 11:50:27 PM

どうして

私は電車に揺られて都会の喧騒から程遠い街へと降り立った
そこでとある本屋さんに立ち寄る
帽子を目深に被り、マスクをしている
なにか目的の本があるわけではない私はその本屋さんをぐるっと見て回る
そしてかわいらしいPOPがたくさんつけられている棚の前に立ち、眺める
『物語好きに届ける物語たち』と銘打たれていた
それをしばらく眺める

「何かお探しですか」
後ろからそっと話しかけられる
「自分の何かを変えてくれるような本を探しに来ました」
私は呟いた
店員さんは私の横に立つ
「この棚、僕が作ったんです」
「へぇ〜そうなんですね。あのうさぎさんとかかわいいですね」
私は大きいうさぎさんが飛び跳ねているイラストのPOPを指差す
「ありがとうございます。『しろいうさぎとくろいうさぎ』って知ってますか」
「いや、初めて聞きました」
「心温まる物語なんです」
「ゴーンゴーン」
大きい鐘の音が鳴った
私はびっくりした
「この街では1日に3回鐘の音が鳴るんです」
「あぁそうだったんですね」
鐘の音が鳴り終わると静寂が訪れる
その静寂がこの本屋さんの中を落ち着く雰囲気へと変貌させていた
この店内と外の世界とでは時間の流れ方が違う気がした
そう思わせるほどに私は今落ち着いていた
今日私はどうしてここに来たのかが今わかった
この場所に巡り合うためだったのだ
「お探しのものは見つかりましたか」

1/14/2026, 2:14:08 AM

夢を見てたい

僕は毎晩同じ夢を見る
人通りの多い真っ直ぐ長く続く路地を歩いている
その先には少女が立っている
黒の格好に黒の帽子、そしてその隙間からは黒の長髪が見える
そしてその少女は、顔がない

僕は毎晩その人の下までたどり着けずに目を覚ます
あれが誰なのか、なぜずっと立ったままで動かないのか
夢だからと片付けてしまえばそれでおしまいだが、僕は考えてしまう

その日学校に行くと授業で〈自分を見つめ直そう〉ということをした
みんなにプリントが配られ、そこには『自分はこんな人間』という文字だけが書かれていて大きい空白があった
「今からそこに自分について思うことを書けるだけ書いてください。そして、あとで隣の人とそれを見せ合って、主観的な自分と客観的な自分を比べてみましょう」
先生はそう言った

僕はなんて書くべきか悩んだ
自分で自分のことがわからない
僕は白紙のまま隣の人に見せた
「それが自分自身なんじゃない?」
隣の席の彼女は言う
「私から見たら、君は真面目かな。それでまっすぐ、周りの人ばかり気にして、自分をみてないんじゃないかな。」
僕はその言葉に納得した

今日もいつもと同じ夢を見る
人通りの多い真っ直ぐ長く続く路地を歩いている
その先には少女が立っている
黒の格好に黒の帽子、そしてその隙間からは黒の長髪が見える
そしてその少女は、顔がない
しかしいつもと違って、今日はその少女の下へ辿り着いた
そして顔をよく見れば、見覚えのある顔だったと思った途端
目の前に鏡が現れた
そこには自分だけがいた

1/13/2026, 5:59:11 AM

ずっとこのまま

“ラジオネーム、迷える子羊さん。

こんばんは桜楽さん、メール失礼します。
早速なんですが、先日彼氏ができました!
でも一つ分からないことがあるんです。
彼氏からは「これからも一緒に笑い合いましょう。僕と付き合ってください」と言われました。
これって結婚を見据えた告白なのか、そうじゃないのかどっちだと思いますか。
気になって夜しか眠れません!

まずは、おめでとうございまーす!
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ちなみに私はなんかいろいろ例えたりとか、いっぱい言葉を並べて告白するよりかは純粋に付き合ってくださいの一言だけの方が好きです
それは、今という瞬間を大切にしていると感じるからです”


私は毎晩の日課となっている日記を書きながら、そんなラジオを聴いていた
そして私はいつも1人放課後に居残って勉強をする名城くんのことを考えていた

「ねぇ美咲(みさき)、好きな人とかいるの?」
「えっ、いや別に」
「これはいるなぁ〜」
放課後の教室、私は友達の佳奈(かな)と2人談笑していた
「クラス1の美人に好きな人がいないわけないじゃん」
佳奈はそう声高らかに言う
「もういいよそれ」
私はそれを否定する
クラス1の美人と言われて嬉しいが、単純に恐れ多い
「じゃあ私部活行くね」
そう言って、佳奈は教室を出て行ってしまった
教室には私と、ずっと黙々と勉強をしている名城くんとの2人だけとなった

「ねぇ名城くん」
私は名城くんの方を向いて話しかける
「、、、」
名城くんのペンの動きは止まらない
「ねぇ、」
「なんですか」
私がもう一度話しかけようとしたらそれに覆いかぶさるように返ってきた
名城くんはペンを動かすのを止める
「えっと、名城くんは好きな人とかいるの?」
「、、、」
名城くんはペンを持ったまま、正面を見つめて考えている様子
私は聞かないほうが良かったかなと後悔する
それほどに名城くんは思い悩んでいるようだった
そして、やっと口を開いた
「アルキメデス」
「、、、あははははは」
私はその解答に思わず笑ってしまった
名城くんは不思議そうな顔を浮かべている

「ごめんね、ちょっとおかしくて」
「別に、何にも気にしてないんで」
その言葉の通り、名城くんは冷たい顔である
私は落ち着きを取り戻して、さらに聞いてみる
「名城くんにとって勉強することは大切なの?」
「学校という場において、当たり前のことです。学生が1番に明け暮れるものは勉学であるべきなんで」
名城くんは即答した
「そっかぁ。名城くんは今という瞬間、勉強を大切にしてるんだね。」
「はい」
「友達は?」
「それは、今は必要としてないです」

私は純粋に名城くんと仲良くなりたいと思う
友達になりたいと思う
それは私が名城くんのことが好きだから
名城くんはいつも放課後に1人残って勉強をしている
その光景を私はよく目にしていた
1人でなにかに取り組むということは、先が見えない暗闇を歩いているようで大変なことなのだ
その隣に私はいてあげたいと思っていた
私は口を開く
「名城くんにお願いがあるの」
「はい、」
名城くんはこちらをチラと見て私の言葉を待つ
未だにペンを持つ名城くんを見て、私はそれから先の言葉を飲み込んだ
名城くんは今という瞬間、勉強を大切にしている
それは本当に素晴らしいことだと思う
「やっぱり今はいいや」
私はそう口にした
「そうですか」
「じゃあまたね」
そう言い残して、私はカバンを持ち教室を出た

私は名城くんの考えを尊重するべきと考えて、今はこのままでもいいかと思った
この気持ちは閉まっておこう。いつか時効が来る日までは、

1/11/2026, 10:24:01 PM

寒さが身に染みて

"ぱちっぱちっ"
窓は真っ白に染まる
暖炉のおかげでこの部屋は外とはまるで隔絶された空間のように暖かった
森の中のこじんまりとした古屋
しかし特殊なコーティングを施してあるので外の寒さが伝わることはない
人が来ることはない辺境の地である

「あぁ。薪がないな」
俺は暖炉にくべる薪がもう底をつきそうなのに気づく
「昨日のうちにもっと切っておくべきだったかぁ」
暖炉の前の椅子に腰掛けている俺はしばらくぼーっと暖炉の火を眺める
「はぁ。行くかぁ」
俺は外へと出ることを決心した
特殊な加工がされた毛皮のコートを羽織る
そして窓の白を擦る
「今日も寒そうな夜だな。朝が恋しいよ」
玄関までゆっくりと歩く
「俺の魔術じゃあ、暖はとれないからなぁ」
そう皮肉を言って扉を開ける
外に出ると真っ暗な夜が広がる
永遠に続く夜が広がる
「はぁ。寒いなぁ」
家の脇、薪の置かれている場所まで行く
「おっと。危ない」
俺は歩く板の上で足を滑らせるところだった
普通の地面なんて歩けたもんじゃない
底冷えで大変だ

「やらなきゃいけねぇーかぁ」
薪置場の薪が枯渇していることに気づく
持ってきた原木を薪のかたちに切って置かないといけない
今置いてある分だけで今日一日の分はあるだろうが、明日以降のことを考えると難しい
「明日のことは明日考えればいいかぁ」
その時だった
俺の家や周りの森が照らされた
俺は後ろに振り向く
少し離れた街が薄っすら見える
そこには古くに見覚えのある太陽があった
何十年ぶりに俺は太陽に照らされた
そしてその太陽は一瞬の間に空に朝と昼と夕方を届けて消えていってしまった
「懐かしいなぁ。切るか、薪」

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