燃える葉
轟々に燃え上がる炎
キャプファイアーを囲んで、死のゲームが始まる
僕はいずれ自分の身が焼かれるかもしれない炎を眺める
そこには落ち葉がひらひらと落ちてきた
そして燃えた
『今からデスゲームを開始します』
何事もなかったようにアナウンスが始まる
この落ち葉のように僕の死は、何事もなかったように過ぎ去っていくのだろうかと、僕は自分の運命を悟った
moonlight
そこには、賑わう街並みが広がっていた
夜とは思えないほどに、すべてに活気がある
人の多さ、たくさんの足音、きらびやかな出店たち、輝かしい街頭、光を優しく反射するレンガの地面、そして家々の壁、真っ赤な屋根
まさしくお祭りのような夜がここにはあった
私は圧倒されていた
「こんばんは、オリーブ」
「わぁっ、バーミントさん」
この雑踏の中で私は、すぐ横に来るまでバーミントさんがいることに気づかなかった
アンガス•バーミント、この国一番の最強女剣士
私はそんな頼もしい先輩の誘いで、この場所に来ていた
「今日も賑わっているなぁ」
バーミントさんは周りの人の流れや出店を見回している
バーミントさんの横顔を見れば、街頭たちのスポットライトに照らされ、きれいだった
「私、はじめてなんですけど、いつもこんな感じなんですか」
「あぁ、月に一度この街はお祭りのように賑わう」
「みんな、笑顔ですね」
「そうだな、いいことだ、、では向かおうか」
そう言ってバーミントさんは先導し前を歩き出す
今日はこの夜に溶け込むような黒を基調とした美しいドレスを着こなすバーミントさん、うつくしい
「どうした?」
見惚れている私にバーミントさんは振り返った
「あっはい!」
私はバーミントさんのあとに続いた
「おぉーミンティー!ちょっと寄ってきな!」
「やぁひと月ぶりだな、ゲイル」
バーミントさんと左右に出店が広がるきらびやかな道を歩いて、目的地へと向かう途中、声をかけられた
バーミントさんが反応しているので、声をかけられたということだ
バーミントさんは人の流れと交差するように縫って、その店の前へ
私もその後をついていく
店の前に着くと、そこには身体が大きく、綺麗に整えられた白いヒゲを携えた褐色のおじさんの店主がいた
「ミンティー!久しぶり、今日はな、だんごっていうおいしいものがあるから食べていきな
「だんご?、聞き慣れない名だな」
このゲイルという人はあのバーミントさんのことをミンティーと呼んでいるようだ
ゲイルさんはあのアンガス•バーミントと理解しているのだろうかと疑問に思った
バーミントさんが戦場とは違い、町中では世を忍ぶミンティーという名で通している可能性がある
もしそうでなければ相当に仲の良い間柄なのだろう、羨ましい
そんなことを考えている間にも話は進む
「異国の食べ物だ、この前の防衛戦のおかげで滞りなく貿易が進み、流れ込んできた代物だぁ!」
「そうだったかぁ、それはよかった。では頂こうか、いくらだ」
「いやいや!そんなもんしまってくれ、言ったでしょ!防衛戦のおかげで来た代物だ、ウチらはミンティーに感謝してるんだ、タダで持っていってくれ」
知っている、この人はあのバーミントさんと知ってミンティーと呼んでいる
戦場とでは大違いである
「そうはいかない、商売なんだから利益が出ないと意味がないだろ」
そう言いながらバーミントさんは財布を持ったまま食い下がる
「いーんだぁいーんだぁ、それに今日は月に一度の特別な日なんだら、大丈夫だよ、なっ持ってきな」
「そうかぁ、なら甘えさせてもらって、ありがたくいただかせてもらう」
バーミントさんはたくさん並んでいる中から三色に彩られたものを手にした
その光景は不思議と美しかった
異国の食べ物だというそれは、まるで剣のようで棒に刺さっていた
しかし戦場で剣を握っているバーミントさんの姿と似ているようで、違った
バーミントさんはそれを子どものようなかわいい笑顔で見つめている
「ほらっそっちのお連れさんも食べてきな!おいしいよ」
「、、あっはい、ありがとうございます」
見惚れていた私は急に矛先を向けられて驚いた
そして私もバーミントさんにならい、三色のものを手にする
「なかなかにおいしかったな、だんごというものは」
「そうですね」
私たちは店をあとにして、目的地へと向かう道に戻った
そしてバーミントさんが少し前を歩く形で私たちは進む
雑踏を歩く中、私はふたつの疑問が頭の中にあったので、その一つをぶつけた
「バーミントさんはみなさんから慕われていて、すごいですね」
「この街の人たちは優しい人ばかりだ、私が守るこの美しい街を作っていることを、私は深く感謝している」
やはり私はこの人に強く憧れる
「すべて、バーミントさんのおかげですから」
「ははっ、君も慕ってくれるのか、ありがたい」
バーミントさんは横目で私を見る、かっこいい笑顔
「もしかしたらみんな今日という日に浮かれているだけかもな」
バーミントさんは微笑みながらそう付け加える
そうだ、私はもう一つの疑問をぶつける
「そういえば、今日は何の日なんですか」
バーミントさんや店主の言葉から今日はどうやら何か特別な日であることは理解した
しかしそれが私にはわからなかった
「あれ?言ってなかったか?」
「えっと、今日は舞台を観に行くんでしたよね」
人の波を縫うように進みながら私たちは会話を続ける
「そうだぁ、それだ」
「舞台って頻繁にしているものなのではないのですか?告知板でもよく目にしますし」
「あぁそういうことか、なるほど、私の説明不足だったな」
「いえいえ」
「普段この街のムーンライト教会では週に3回のペースで舞台が行われる、日の昇る時間にだ」
「…!」
私は気づいた、今は夜なのだ
「だが、月に一度夜にだけ開かれる舞台がある、今日はそれを見に来たんだ」
そういうことだったのかと納得する、、いやまた一つ疑問ができてしまった
「なぜ月に一度だけなのでしょうか?」
「ついたな」
そう会話をしているうちに目的地のムーンライト教会に着いた
そしてバーミントさんは私を見て、優しい笑顔で答える
「せっかくだから見てのお楽しみ、ということにしようか」
教会の扉をくぐると、なにも変わらない普通の教会だった
長い椅子が規則正しく並び、奥には少しせり上がった舞台がある
普段なら祭壇があるであろう場所はぽっかりと空いていた
そしてこの教会内は淡い明かりに照らされているだけで暗かった
私はバーミントさんと横並びになり座る
周りにはたくさんの人たちがすでにいて、みんな何かを待っている様子だ
私が一つ気になったことといえば、誰もバーミントさんがいることに反応しない
先程まで道を歩いているときは、たまにバーミントさんと気づき、何やら噂をしている人が複数人いたし、実際店主もわざわざ大きい声で呼びかけて話していた
そのときも周りは少しばかりザワザワしていた
それもそのはず、この国で一番の女騎士が町中を歩いていたらみんな噂するはずなのだ
しかし、この教会に入ってからは一度もない
そう考えていると袖から1人の女性が出てきて、舞台が始まった
「まもなく時間となります、みなさまご静観いただきますようお願いいたします」
そしてその女性が立ち去った直後だった
教会の少しせり上がった舞台の奥、そこには大きな丸い窓があった
そこに現れたのだった
大きい満月が顔を出した
少しずつせり上がってくるそれは
まるで舞台の始まりを告げるカウントダウンのようだった
「この教会は、建築士の人たちが緻密に作り上げ、正面の大窓や、そして横の小窓から毎月、満月の夜に綺麗にその光が差し込むように設計されているのだ」
バーミントさんは横から小声で告げてくれた
そして続ける
「だから、今日だけは教会には一切のロウソクなどの明かりを設置していないのだ」
言うまでもなく、それから行われた月下の舞台は美しいものだった
無事舞台が終わり、また暗くなった教会内では余韻に浸り未だに椅子に座ったままの人や足早に外の祭りに戻る人と分かれていた
そしてバーミントさんは余韻に浸りながら言った
「この戦時下の中、こうしてみなが一堂に介して、同じものを観て、同じように感激する。それを素晴らしく美しいと私は思う」
今日だけ許して
悪口罪
それは、おもに人のような知能を持った人に対しての悪口を言えば罰せられる、というものだ
ちなみに罰とは、死
「おはようございます」
僕は自分のデスクへと向かう
カバンを机の下に置き、椅子に座る
そしてパソコンを起動
右下を見ると時刻はまだ8時45分
僕は朝礼までの15分の間にネットニュースを漁る
今日もたくさん死んでいる
みんな悪口を言ったからだ
以前から匿名SNSでの裏垢にて他の芸能人の悪口を書き込んでいると噂されていた俳優
記者からの挑発に乗って悪口をつい口にしてしまった政治家
そして、僕の彼女である一ノ瀬寧々のことは書いていなかった
『悪口絶対ダメ!悪口絶対ダメ!このAIジャスティスくんがいれば、日本中の電波を制御して、各地に備えられている監視録音カメラから悪口を言っている人を感知!、そして即警察へ伝わり、駆けつけて、屠殺ボックスカーにて即排除!、このAIジャスティスくんがいれば、日本は平和な国となるのです!
さぁみんな一緒に、悪口絶対ダメ!!』
今日も朝礼では国が出す啓発動画が流される
「さぁみんな、せーのっ」
「「「悪口絶対ダメ!」」」
上司の掛け声をきっかけにみんな合言葉を口にする
「ん?相模健くん?今、合言葉言った?」
上司は不敵な笑みを浮かべながら僕に問いかける
「えっ、あっはい、、言いました」
僕は言い詰められ、嘘をついた
「なら、よかった、今日も平和だ」
上司の言う平和が僕には理解できなくなっていた
みんな何事もなかったように自分のデスクに戻り、仕事を始める
僕だけが立ち尽くしたままだ
「相模健くん、何をやっているんだい?、仕事は?」
「、、、」
「どうしたんだい、」
上司は無言で立ち尽くす僕に問いかける
気持ち悪い
僕は口を開いた
「あの、気持ち悪いです、」
「えーとっ、それは、、私に対する悪口、と捉えていいかな?」
「、、、はい、お前は、、ブタ、ハゲ、チビ、くさい、気持ち悪いんだよ」
僕は静かに言った
でも自分が言ったことに実感が持てた
この空間で鳴り響いていたキーボードのカタカタ音がピタリと止まった
そして、僕は最後に大きい声で言ってやった
「お前のその喋り方が1番気持ち悪いんだよ!!」
確実にみんなが作業の手を止めて、僕を見つめている
そして上司はニコリとしていた
その直後
『悪口感知!悪口感知!悪口感知!悪口感知!』
上司のデスクの後ろに備え付けられていた監視録音カメラが反応、警報音と共にそんな警告音が流れ続けている
僕はすぐさま自分のデスクのパソコンのキーボードを叩いた
みんなが僕の一挙手一投足に注目している
僕は、この瞬間を待っていた
「あ、あ、マイクテスト、マイクテスト、みんな!聞こえてるかな!?今から僕は悪口を言う!」
この空間に備え付けられている監視録音カメラが反応すれば動き出す、とあるプログラムを用意していた
僕はAIジャスティスくんの日本中の電波を制御する機能を逆に利用した
僕は自分のデスクのパソコンから強制全国配信を始めた
「僕の愛する人は殺された!、この世の中に!」
僕は日本中に届くように声を張る
「僕の愛する人はすごく親友想いの人だった!、だから!親友が口を滑らせて言ってしまった悪口を庇って!」
僕は言葉に詰まった
涙が出ようと構いはしない
「僕の愛する人は殺されたぁ!親友を守ってぇ!殺されたぁ!」
僕の感情は止まらない
「そして、その親友はそれから恐怖で声が出なくなったぁ!」
僕は涙を散らしながら周りを見る
みんな僕に注目し、そして驚いた顔をしている
おそらく日本中の人たちも今同じ顔をしているだろう
場所が違うだけ
お茶の間のテレビ、定食屋のテレビ、様々な競技場の電光掲示板、街中のアナウンス、そして人間みんなが手にしているスマホ
それらからみんなが注目している、今の僕の言葉に
そしてみんなの心に響いていることを願って続ける
「日本中のみんな!よく耳をかっぽじって聞いてろぉ!その愛する人の名は、一ノ瀬寧々だ!!」
言った、僕はこの世の誰もが知らない臆病な英雄の名を叫んだ
僕にとってはそこら辺の俳優や政治家なんかより大切な人の名だ
「寧々が正しくて、この世の中が間違っている!、そう!この世の中は間違っている!矛盾しているんだぁ!」
そして僕はこの言葉で締めくくる
「悪口罪とは、それは、おもに『人のような知能を持った人』に対しての悪口を言えば罰せられる、というものだ、わかるかぁ?!今僕はこの世の中、悪口罪という概念に悪口を言ったぁ!、だから!僕はこの事では罪に問われない、これが矛盾のある間違った世の中の証明だぁ!!」
誰か
人間はどこまでいっても人間同士でわかり合えない生き物
なのにこの空間ではみんなが一体となって拳を上げて、叫んでいる
こんなにも異質な空間に来たのは初めてだった
「はぁはぁはぁ」
"ガタンゴトン""ガタンゴトン"
『次は、高校前駅、高校前駅、左側の扉が開きます』
「はぁはぁはぁ」
私はスマホを強く握りしめる
目を強く瞑る
鼓動をはやらせる
そしてただ聴覚をアナウンスだけに集中してしぼる
次の駅で降りる、次の駅で降りるんだ
そう何度も言い聞かせる
人の視線、人の話し声、私はそれらすべてに恐れている
みんな、一人でいる私のことを嗤ってるんじゃないか
絶対そうだ、そうなんだ
私は今日もやっとの思いで教室の自席へとたどり着けた
ここだけが外での唯一の居場所
「おはよ~美玖!」
「うん、おはよう、沙良」
ここに来たらいつも沙良が側にいてくれる
誰かと一緒にいるということは、一人ではないということ
だから誰からも嗤われない
「その、人の多い場所が苦手で、電車とかが、ちょっと」
私は自分の悩みを初めて吐露した
私は心療内科へ初診で来ていた
「はい、幻聴などは聞こえますか」
「いや、そこまでは、でもそれに近いものはあるかもしれないです」
「他人から常に見られているような感覚でしょうか」
「はい、そうです」
「まぁとりあえず、夜が寝れるようになることを優先しながら、安静に過ごすことを努力してください」
どうやって、安静に過ごすというのだ
毎日登校するのに不可能だ
「はい、、」
「夜寝れるようになる薬と、不安を和らげる薬を処方しておきますね」
「はい、ありがとうございます」
「一つ言わせてもらうと、人は意外と他人のことを見てないからね、そこまで気にしなくてもいいよ」
人は意外と他人のことを見ていない、、かぁ
だから気にしないでいい
そう思うようにしようと私はそう決心して病院をあとにした
「はぁはぁはぁ」
"ガタンゴトン""ガタンゴトン"
『次は、高校前駅、高校前駅、左側の扉が開きます』
みんな私を見ていない、だから気にしなくていい
みんな私を見ていない、だから気にしなくていい
そんなおまじないは効果がなかった
私は今日もやっとの思いで教室の自席へとたどり着けた
「おはよ~美玖!」
「うん、おはよう、沙良」
「ねぇ、これ聞いて!」
沙良は私にイヤホンの片方を差し出してくれた
それを耳にすると、ポップでテンポ感のいい曲が流れていた
「この曲最近ハマってるの!」
「そうなんだ、すごくいいね」
「でしょ!また今度さ、一緒にライブ行こ!」
「えっ」
私は想像してしまった
ライブ会場とは人の多い場所だ
私には無理、、、だけど唯一の居場所である沙良との関係が壊れてしまえば、私の人生は終わる
「うん、行こ」
私は肯定するしかなかった
「ドリンク代300円になります」
「はぁはぁ、あっはい、」
私は意識を保つのでやっとだった
あまりにも人が多すぎる
定期的に目を瞑らないと意識を保てない
「美玖?大丈夫?」
「、、うん、大丈夫」
私はなんとか声を絞り出す
そのギリギリの状態を保ちながら、私たちはスタンディングの会場へとたどり着いた
中は暗くて、先ほどまでよりは安心できる空間だった
少しだけ落ち着いて、私は理解した
【人は意外と他人のことを見てない】
その言葉がブーメランであることに気づいた
【人は】、ということはその中には自分も含まれている
だから私自身も他人を見ていない
私は架空の他人を作り出して、それに怯えているに過ぎない
結局自分の気持ちの持ち様次第になるということなのだ
私はそんなループ構造のようになっている【人は意外と他人のことを見てない】という現象に絶望した
このループに入ってしまえばもう抜け出せない
『まもなく始まります、もうしばらくお待ち下さい』
そのアナウンスの少しあとに会場がより暗くなる
「いよいよ始まるよ!美玖」
「うん、そうだね」
久しぶりの静寂が訪れた
聞こえるのは舞台に立っている人の声、音だけ
暗いのも相まって、そして先程までとの落差で落ち着く空間となっていた
そして曲が流れ始める
こんなにも異質な空間に来たのは初めてだった
みんなが一体になって拳を上げて、叫んでいる
舞台からの音を主軸に一体となった音と振動
暗い空間にはより際立つ照明たち
この小さく異質な空間では私のことを見ている人は誰もいない
そう思えた
客観的にこの非日常の空間を見たとき、私は心の底からこの光景を美しいと思った
解決した訳ではないが、私は解放された
そう感じた
遠い足音
"サクッサクッ"
雲一つない綺麗な青空
朝の澄んだ空気
そして、私たちは湖が綺麗に見える丘に来ていた
私の前を歩くのは憧れのヒーロー
今は私の直属の先輩にして、最強の戦士
アンガス•バーミントさん
この世で最も強い女性だ
「バーミントさん、ありがとうございます」
「あぁ、非番なのに呼び出してすまないな」
「いえいえ、」
ちょっとしたハイキングで息を切らしていたが、嬉しかった
あのバーミントさんが休日という大切な時間にわざわざ私と過ごしてくれているのだ
バーミントさんの私服は初めて見る
飾ったような格好ではなく、この湖の畔に溶け込むほどの美しい水色を基調とした格好
戦場とは違い、意外とかわいいかも
「先日のバンクーデン防衛作戦では、大きな活躍をしてくれたようだな、ありがとう」
「そんなっ、バーミントさんが魔人の首をとってくれたおかげです、私はただの時間稼ぎを、」
「それがありがたいと言っているのだ、君のおかげで多くの犠牲を出さなくてすんだんだ」
「全然、、、ありがとうございます」
照れくさく、霧のかかった湖に目を向ける
少し肌寒いが、そこには綺麗な湖があった
「ここの湖があるのも、この防衛戦を乗り越えたおかげだ」
「そうですね」
バーミントさんの横顔は凛としていて美しかった
「君は、何がために軍に入った?」
「私は、、、」
自分の不純な理由に言葉が詰まってしまった
バーミントさんに憧れて、わざわざ死地に足を運んでいるなんて言えない
「私は、守るために軍に入った」
バーミントさんは先導して話してくれた
いつもそうだ
「まもる、、国民の皆をですか、」
「ん〜、そうだな、、いや、実のところを言うとそうじゃないんだ」
「えっじゃあ何を守ってるんですか」
知りたかった、私の前を歩く憧れのヒーローのさらに先にあるもの
「私はこの湖や美しい場所を守るために戦っている、、、そうだな、あれを守るために戦っている」
バーミントさんは丘の下、湖のさらに先を指さしていた
「あっ」
私は思わず声が出た
そこには先程まであった霧が引いて、朝日に照らされた素晴らしく美しいものがあった
「あの美しい街だ」
やはりすごい、この人は私なんかよりもずっと前を歩いている