春ノ花

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1/14/2026, 2:14:08 AM

夢を見てたい

僕は毎晩同じ夢を見る
人通りの多い真っ直ぐ長く続く路地を歩いている
その先には少女が立っている
黒の格好に黒の帽子、そしてその隙間からは黒の長髪が見える
そしてその少女は、顔がない

僕は毎晩その人の下までたどり着けずに目を覚ます
あれが誰なのか、なぜずっと立ったままで動かないのか
夢だからと片付けてしまえばそれでおしまいだが、僕は考えてしまう

その日学校に行くと授業で〈自分を見つめ直そう〉ということをした
みんなにプリントが配られ、そこには『自分はこんな人間』という文字だけが書かれていて大きい空白があった
「今からそこに自分について思うことを書けるだけ書いてください。そして、あとで隣の人とそれを見せ合って、主観的な自分と客観的な自分を比べてみましょう」
先生はそう言った

僕はなんて書くべきか悩んだ
自分で自分のことがわからない
僕は白紙のまま隣の人に見せた
「それが自分自身なんじゃない?」
隣の席の彼女は言う
「私から見たら、君は真面目かな。それでまっすぐ、周りの人ばかり気にして、自分をみてないんじゃないかな。」
僕はその言葉に納得した

今日もいつもと同じ夢を見る
人通りの多い真っ直ぐ長く続く路地を歩いている
その先には少女が立っている
黒の格好に黒の帽子、そしてその隙間からは黒の長髪が見える
そしてその少女は、顔がない
しかしいつもと違って、今日はその少女の下へ辿り着いた
そして顔をよく見れば、見覚えのある顔だったと思った途端
目の前に鏡が現れた
そこには自分だけがいた

1/13/2026, 5:59:11 AM

ずっとこのまま

“ラジオネーム、迷える子羊さん。

こんばんは桜楽さん、メール失礼します。
早速なんですが、先日彼氏ができました!
でも一つ分からないことがあるんです。
彼氏からは「これからも一緒に笑い合いましょう。僕と付き合ってください」と言われました。
これって結婚を見据えた告白なのか、そうじゃないのかどっちだと思いますか。
気になって夜しか眠れません!

まずは、おめでとうございまーす!
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ちなみに私はなんかいろいろ例えたりとか、いっぱい言葉を並べて告白するよりかは純粋に付き合ってくださいの一言だけの方が好きです
それは、今という瞬間を大切にしていると感じるからです”


私は毎晩の日課となっている日記を書きながら、そんなラジオを聴いていた
そして私はいつも1人放課後に居残って勉強をする名城くんのことを考えていた

「ねぇ美咲(みさき)、好きな人とかいるの?」
「えっ、いや別に」
「これはいるなぁ〜」
放課後の教室、私は友達の佳奈(かな)と2人談笑していた
「クラス1の美人に好きな人がいないわけないじゃん」
佳奈はそう声高らかに言う
「もういいよそれ」
私はそれを否定する
クラス1の美人と言われて嬉しいが、単純に恐れ多い
「じゃあ私部活行くね」
そう言って、佳奈は教室を出て行ってしまった
教室には私と、ずっと黙々と勉強をしている名城くんとの2人だけとなった

「ねぇ名城くん」
私は名城くんの方を向いて話しかける
「、、、」
名城くんのペンの動きは止まらない
「ねぇ、」
「なんですか」
私がもう一度話しかけようとしたらそれに覆いかぶさるように返ってきた
名城くんはペンを動かすのを止める
「えっと、名城くんは好きな人とかいるの?」
「、、、」
名城くんはペンを持ったまま、正面を見つめて考えている様子
私は聞かないほうが良かったかなと後悔する
それほどに名城くんは思い悩んでいるようだった
そして、やっと口を開いた
「アルキメデス」
「、、、あははははは」
私はその解答に思わず笑ってしまった
名城くんは不思議そうな顔を浮かべている

「ごめんね、ちょっとおかしくて」
「別に、何にも気にしてないんで」
その言葉の通り、名城くんは冷たい顔である
私は落ち着きを取り戻して、さらに聞いてみる
「名城くんにとって勉強することは大切なの?」
「学校という場において、当たり前のことです。学生が1番に明け暮れるものは勉学であるべきなんで」
名城くんは即答した
「そっかぁ。名城くんは今という瞬間、勉強を大切にしてるんだね。」
「はい」
「友達は?」
「それは、今は必要としてないです」

私は純粋に名城くんと仲良くなりたいと思う
友達になりたいと思う
それは私が名城くんのことが好きだから
名城くんはいつも放課後に1人残って勉強をしている
その光景を私はよく目にしていた
1人でなにかに取り組むということは、先が見えない暗闇を歩いているようで大変なことなのだ
その隣に私はいてあげたいと思っていた
私は口を開く
「名城くんにお願いがあるの」
「はい、」
名城くんはこちらをチラと見て私の言葉を待つ
未だにペンを持つ名城くんを見て、私はそれから先の言葉を飲み込んだ
名城くんは今という瞬間、勉強を大切にしている
それは本当に素晴らしいことだと思う
「やっぱり今はいいや」
私はそう口にした
「そうですか」
「じゃあまたね」
そう言い残して、私はカバンを持ち教室を出た

私は名城くんの考えを尊重するべきと考えて、今はこのままでもいいかと思った
この気持ちは閉まっておこう。いつか時効が来る日までは、

1/11/2026, 10:24:01 PM

寒さが身に染みて

"ぱちっぱちっ"
窓は真っ白に染まる
暖炉のおかげでこの部屋は外とはまるで隔絶された空間のように暖かった
森の中のこじんまりとした古屋
しかし特殊なコーティングを施してあるので外の寒さが伝わることはない
人が来ることはない辺境の地である

「あぁ。薪がないな」
俺は暖炉にくべる薪がもう底をつきそうなのに気づく
「昨日のうちにもっと切っておくべきだったかぁ」
暖炉の前の椅子に腰掛けている俺はしばらくぼーっと暖炉の火を眺める
「はぁ。行くかぁ」
俺は外へと出ることを決心した
特殊な加工がされた毛皮のコートを羽織る
そして窓の白を擦る
「今日も寒そうな夜だな。朝が恋しいよ」
玄関までゆっくりと歩く
「俺の魔術じゃあ、暖はとれないからなぁ」
そう皮肉を言って扉を開ける
外に出ると真っ暗な夜が広がる
永遠に続く夜が広がる
「はぁ。寒いなぁ」
家の脇、薪の置かれている場所まで行く
「おっと。危ない」
俺は歩く板の上で足を滑らせるところだった
普通の地面なんて歩けたもんじゃない
底冷えで大変だ

「やらなきゃいけねぇーかぁ」
薪置場の薪が枯渇していることに気づく
持ってきた原木を薪のかたちに切って置かないといけない
今置いてある分だけで今日一日の分はあるだろうが、明日以降のことを考えると難しい
「明日のことは明日考えればいいかぁ」
その時だった
俺の家や周りの森が照らされた
俺は後ろに振り向く
少し離れた街が薄っすら見える
そこには古くに見覚えのある太陽があった
何十年ぶりに俺は太陽に照らされた
そしてその太陽は一瞬の間に空に朝と昼と夕方を届けて消えていってしまった
「懐かしいなぁ。切るか、薪」

1/11/2026, 3:01:47 AM

20歳

「なぁこの問題教えてぇ」
自習時間、僕の隣にやってきたのは言わゆる一軍男子の1人
隣の席のクラス1美人の女子に今日も今日とて近づきに来た
僕とその女子との間に椅子を持ち寄って、一軍男子は詰め寄っていた
その女子はいかにも嫌そうである
僕はこの光景を見るといつも胸が苦しくなる
ちらっと見ると、一軍男子を挟んだ反対側の女子と目が合った気がした
僕は何もできなかった

僕は成人式には行かなかった
あの場は言うなれば同窓会
まぁ僕の出身中学では実際に成人式の後に同窓会が開かれるらしい
僕はそこにも行くつもりがなかった
学生時代に青春を経験していなかった僕は、行ったところで名前すら覚えられていないような人種なのだ
簡単に言えば『友達のいないぼっち』だった
だから行かない、避けていた
同窓会は中学校で行われるらしい
中学校からの招待状で知った
僕は未だに実家暮らしをしている
そして中学校はすぐ近くにある
その日はできるだけ外に出ないようにした
出くわしたら面倒だ

学生が1番に明け暮れることは勉学ではない
それを自室のベッドで考える
では学生が1番に明け暮れることとは友人関係である
友達のいるいないはその後の人生に大きく影響する
僕自身はそう考える
学生時代に友人を作れぬまま進んだ先に今の引きこもりニートがある
そんな自分の経験から僕は勉学ではなく、友人関係に重点を置くべきだと後悔していた

僕は夜になると散歩に出かける
それが好きだから
でも親が心配することもあり、夜遅くには行かないようにする
本当は夜中の散歩が1番好きなのだが
今日もそうした
もうとっくに同窓会も終わってお開きになっているだろうし、そうした

僕が中学の前を通ると、門はまだ少し開いていた
本当はいけないのだが、僕は何も言わずにその門の隙間から校舎へと足を踏み入れた
それはただ単純に思い出にふけりたかっただけなのだ
学生時代を最後に人との関わりが全くなくなった僕にとっては、人生最後の記憶が残るのが学校と言ってもいいだろう
だからその学校の思い出にふけりたいから入った
誰もいない学校
階段を登って自分が勉学に励んでいた教室へと向かう
さすがにもう同級生はいないと思うが、一応耳を澄ませながらおそるおそると教室に近づく

教室の扉は少し開いていた
まだ誰かが残っているのだと思い、物音を立てずに踵を返す
しかし、教室内からの話し声や物音は一切していなかった
それに気づき、僕は戻って扉の隙間からゆっくりと顔をのぞかせる
そこには、誰もいなかった
僕はホッとして、教室内へと入る
おそらく鍵を閉め忘れたのだろう
そしてゆっくりと歩いて窓の側まで行って校庭を眺める
よく1人で放課後に残って勉強をしていた教室
そして、よく勉強の合間にこの窓から校庭で練習をする運動部の光景を眺めていたことを思い出す
「、、、」
充分思いふけることができた
しかし欲が出た
最後に僕は学生時代に座っていた席につく
こんな機会滅多にない
学校の門が開いていて、教室の扉も開いていて
これが最後の教室になるだろうと目を閉じて思いふける
「、、、」

どれだけの時間そうしていただろう
僕は目を開ける
そして教室から出ようと
「えっ!?」
「久しぶり」
隣の席には女性が1人座っていた
暗い教室に輝くような明るい格好をしている女性
暗い教室に溶け込むジャージ姿の自分が惨めに見えるほどに、彼女は輝いている
絶句している僕に彼女は続ける
「覚えてる?」
「えっと、」
「あの頃もここの席だったね」
彼女は前方を見つめ直して言う
「ごめんなさい、」
僕は席にちゃんと座り直して俯く
「そっかぁ。名前覚えてなかったかぁ~」
彼女はどこか楽しそうである
「君に関係なく、人の名前を覚えるのが苦手で、、」
「へぇ〜そうだったんだぁ。ちなみに私は覚えてるよ、名城くんだよね」
「えっ?、、」
僕は『友達のいないぼっち』のはずなのだ
名前を覚えられているはずがないのに、彼女は僕名前を呼んだ
「今日は来てくれないのかと思っちゃった」
彼女は柔らかい表情を見せる
「名城くんにお願いがあるの」
そう言われて、ちゃんと彼女の方を見て、そこでやっと目が合う
僕は思い出した
彼女はあのとき僕が助けてあげることのできなかった人なのである
「あのっ!」
僕は思わず声を上げた
そして自分勝手に続ける
「あのときは、助けられなくてごめん」
彼女の表情は固まる
そして、一筋の涙が流れた
僕は慌てた
「えっと、ごめん自分勝手で。お願いがあるんだよね」
「うん。私と友達になってください」
僕の目からも一筋の涙が流れた

1/10/2026, 1:19:53 AM

三日月

あの空の向こうには神様がいて、僕たち人間に性格というものを与えた
自分がなぜこのような性格に生まれたのか、聞いてみたいと思う

僕は食べかけが嫌い
強い嫌悪感を感じる
夜空に描かれる三日月を見ていると、それを思い出す
まるで食べかけみたいな月だな
なぜ僕をそんな性格にしたのですか

テニスボールを見ていると、まるで月みたいだなと思う
ネットの脇に散らばるたくさんの月を見つけると、まるでガラクタだな
月なんていくらでも代えがきくから、なんて考えて描いているんだろう
なぜ僕にそんなことを考えさせるんですか

僕は毎日、月の夜に散歩に出かける
月の影とともに歩く
いつもと同じ道を歩く
いつもと同じ道を歩く
ぐるぐるぐるぐる
僕はあなたの思考から出ることはできない
なぜ僕にこんなことをさせるんですか

僕はいつもの散歩道から外れた
その先には、何もなかった
結局僕はあの空の向こうにいるあなたの書く物語から抜け出せない
僕はただの登場人物に過ぎない

何もない場所を僕は歩く
気づけば、影もいない
どうやら僕はあなたの描く物語の外にいるのだと理解する
そこに音楽が流れる
それはやさしい音色
僕は空を見上げて聞く
「あなたはやさしい人なんですか」
「              」

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