春ノ花

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1/9/2026, 5:00:11 AM

色とりどり

音楽では生きられない。そんなことを考えていた

僕は展示会へと足を運んだ
さまざまな展示品が立ち並ぶ中、僕にとって一際目立って見えたのはそれだった

【自分】
人は孤独を愛する。しかし孤独を嫌う。
誰もが一度は思ったことがあると思う。
何者かになりたいと。
自分勝手とも錯覚してしまうその感情は自分本来の正常な反応
この世の中は人が多すぎる。関わりが無限に広がる。
そんな大勢のなかにいれば誰しもがそこから出たくなる
自分が横並びで、埋もれていることに嫌悪を抱くのは当たり前なのだ
そしてその横並びから出た時、人は孤独となる
やっと唯一無二の頂点となったのに。いや、唯一無二になったからこそ孤独なのだ
そしてその孤独を嫌うのも同じ人間
この矛盾こそが人間の美しいところ
そこの狭間で思い悩む
そんな君を見ていると、私は胸が苦しくなる
だから最後に一言
「君を愛している人がここにいます」

この説明文と共に飾られていた絵には、ピアノを弾く少年の後ろ姿が描かれていた
どこか思い悩むように頭を抱える少年

僕は、ここにはもういない彼女を奏でる

1/8/2026, 2:36:33 AM



1999年12月24日
私は、太陽を見たことがない

「みなさん!手を合わせて!さぁ神様に感謝を!、いただきます!」
「「「いただきます!」」」
みんな何の疑問も抱かずに手を合わせて、そしてご飯を食べている
私からすればこの世に神様なんていないと思う
もし神様がいるのであれば、もうとっくにこの世界はどうにかなっているはずだから
齢12歳の私はそんな世の中に対する不満を抱きながら生きている
ただ一人私は、目の前に置かれたご飯を見つめているだけ

「みなさん!礼拝堂に行きますよ。ちゃんとコートは着ましたか」
「「「はーい」」」
みんなこの状況に何の違和感も感じていない
私のようなまだ年端もいかない子どもたちにとってはこの世界が当たり前
でも私には理解できなかった

この世界には時間がない
時間は止まったままなのだ
だから永遠に太陽は昇らない
ここ何十年以上、夜のまま時間は止まっている
外に出るときは特殊な毛皮のコートを着ないと凍え死んでしまうほどの寒さが広がる世界

「お姉さんが今からこの絵本をみなさんに読むので、静かに聞いてくれるとうれしいな。」
礼拝堂ではボランティアのお姉さんが待っていた
そのお姉さんはやさしい声音で言ってくれた
みんな「はーい」と返事をする
そしてみんな静かに座って、少しせり上がった舞台の上のお姉さんへと視線を向ける
お姉さんは絵本の読み聞かせを始めてくれる
私にはやっぱりこの状況が理解できない
屋外にむやみに出ることはできず、くたびれた屋内にみんなで身を寄せ合う
「もう無理」
私はそう小声で言って、礼拝堂から飛び出る
コートを着ないで、屋外へと飛び出る

寒い。私は何の目的もなく真っ暗で誰もいない町中を駆ける
限界は意外とすぐに来て、私は寒さに立ち止まり、縮こまる
「もう無理、、、」
私はこのまま一人孤独に死んでいくんだ

「大丈夫。」
死にかけの私に、やさしい声音が降りかかる
そして後ろから私の縮こまっている背中にコートが羽織られる
「やだ!もうほっといて!」
私はそのコートを跳ね除ける
そして後ろを振り向くと、そこには読み聞かせボランティアのお姉さんがいた
もちろんコートを着て、そして私のためのコートも手にしている
「寒いよ。」
お姉さんはやさしい声で心配してくれる
「もうこのまま死なせて、、」
お姉さんは私の正面へとしゃがみ込む
私は縮こまりながら俯く
寒い。私は手を擦る
すると手があたたかくなった
体にやさしいあたたかさを感じる
私は正面を向いた
「えっ」
私は驚いて、尻もちをつく
そこには炎があった
お姉さんは手を差し出していて、その手のひらの上からは炎が上がっている
「あたたかい。」
お姉さんはやさしい声で問いかける
「なにこれ?どういうこと?」
私は困惑する
寒さで幻覚が見えているに違いない
「これはね。熱くない炎だよ。でもあたたかいよ。」
「、、、」
「これは、、、雪、かな。生まれては消えてを繰り返す雪みたいな炎だよ。手をかざしてみて。」
お姉さんはまるで言い訳を言うように、しどろもどろに言う
まだ意味がわからない
でも私は試しに、その炎に手をかざしてみる
「あたたかい」
それにはやさしいあたたかさがあった
「でしょ。」
お姉さんはやさしい笑顔を私に向けてくれる
その顔を見て、私はこれ以上この炎に関して詮索しないようにした
それがやさしさと思っての考えだった
この世の中は理解できないことでありふれている
世界もこの炎もそうだ
私は炎の向こう側にいるお姉さんに聞いてみる
「お姉さんは太陽を見たことがある?」
「ないよ。」
やさしい炎と沈黙が広がる
「太陽、見たいの。」
お姉さんは問いかける
私は首を横に振る
「太陽かぁ。」
お姉さんは夜空にそう呟く

「本当に大丈夫?」
「うん、一人で大丈夫だから」
私はコートを着て一人で外へと出る
「舗装されていない道は歩かないようにね」
先生の声は常に心配一色だった
私は何の目的もなく一人暗い街中を歩き出した

礼拝堂を勝手に飛び出した日から先生たちが私のことを心配して、一人での外出をなかなか許してくれなかった
でも今日はどうしても一人になりたい気分だったので、なんとか押し切った

街は変わりなく真っ暗で人はほとんどいない
長期的な夜の到来はこの世界に寒さを与えた
その寒さは世界を大きく変えてしまった
既存の建物はすべてその寒さに耐えうることができず、利用されることもなく、時間とともに廃れていった
この街も廃都市と化していた
そして道も一緒
既存の道は底冷えにより歩くことさえできない
だからしっかりと舗装された道を歩かなければいけないのだ
私はそんな街を目的もなく一人歩いていた

「何してるの。」
後ろからやさしい声が聞こえてきた
振り向かなくてもわかった、ボランティアのお姉さんだ
だから私はそのまま歩きながら答える
「お姉さんには関係ないでしょ」
「そっかぁ。」
私は歩き続ける
「今日も寒いね。」
お姉さんは私の後ろについてきて、まだ話しかけてくる
私は無視して歩き続ける
「太陽、見たいの。」
「もうついてこないで!」
私は振り向いて、しつこいお姉さんに怒鳴る
「えっ」
私は驚いた
「なに、その格好、」
私はそう口にしていた
お姉さんはコートを着ていなかった
それだけではない、サンタクロースの格好をしているのだ
「今日は12月24日でしょ。」
理解できない
「いや、、そんなの私たちが生まれる前からずっとそうじゃん」
この世界は1999年12月24日で時間が止まっている
そんなのは当たり前
「それよりも、コートは?」
私は一番の問題点をつく
「大丈夫だよ。これ、意外とあたたかいの。」
そんなわけがない
そのサンタクロースの格好は脚や腕が露出している
これであたたかいわけがない
そう思っているとお姉さんは答えてくれた
「まぁそれは建前で。私、寒いのは平気なの。」
「それはこの前の、、雪みたいな炎の力で?」
普通の人間であれば絶対に生きられない寒さに耐えられるとすればそれしか私には考えられなかった
「まぁそんな感じかな。あそこにこの街で一番高いビルがあるでしょ。」
お姉さんは話を変えた
私はお姉さんが指差した方、そのビルの方を見る
「あの辺りを見ててね。」
「どういう意味?」
私はお姉さんの言葉が理解できなく、意味を問う
でもお姉さんは「見たらわかるよ。」とだけ答えて、去っていってしまった
それを見送り、私は再び何の目的もなく歩き出した

この街にいれば嫌でも、どこからでもあのビルは見える
それほどに高いからだ
先ほどお姉さんが指差したそのビルを気にしながら私は歩き続けていた
するとそのビルの屋上になにやら人影が見えた
私は立ち止まる
「えっ」
私は驚いた
その人影はビルの屋上から落ちたのだ
その時だった
「うわっ!眩しいっ」
その人影は爆発的に激しく燃え上がったのだ
なんとか目を見開いてそれを見ると、それはやさしく燃え上がる大きい炎だった
それは街を照らした
そしてすぐに消えていった
まるで生まれては消える雪のような、太陽
私は、初めて太陽を見た

「どうだった。」
声がして、後ろに振り向くと、そこにはサンタクロースのお姉さんが立っていた
この世の中は理解できないことでありふれている
そして自分でもよくわからないが私はそう口にした、
「お姉さん、ありがと」
私はそう言って、微笑む

1/7/2026, 2:07:01 AM

君と一緒に

私の名前は未衣(みい)、花の女子高生!
「次って移動教室だったよね」
私は後ろの席に向いて言う
彼女の名前は夜(よる)、不思議な女子高生!
「うん。まだもう少し時間あるよ」
「ん〜、、暇だぁー!花の女子高生たるものこんなに暇であっていいはずがなぁーい!」
私は嘆く
女子高生とは常に流行を取り入れ、暇なんてあってはならないのだ
そんな私に夜は提案してくれる
「最近流行りのおもしろいゲームがあるけど」
「えっ?!なになに?しよ!」
私は流行りという言葉に反応した
「じゃあ、イヤホンガンガン伝言ゲーム、しよっか」

夜はルールを説明してくれた
片方がイヤホンをつけ、大音量で音楽を聞く
もう片方が何かワードを言って、それが何と言ったかをイヤホンがつけている側が解答する
という簡単なものだ
「じゃあ、はいっ」
夜から私へとイヤホンが手渡される
最初は夜が出題者で私が解答者

「えっ?なんて?」
夜が何を言っているのか全く聞こえない
「分かんない!もう1回!」
夜の口の動きに注目する
「分かんないけど、多分これかなぁ」
そう言って私はイヤホンを外す
「なんて言ったでしょう」
夜は聞いてくる
「たぶん、『未衣は世界一の美貌を持つ』かな」
「あぁ、惜しい。正解は『未衣は世界一のお調子もの』」
「わぁ〜、あともうちょっとだったのに、、、てかそんなこと思ってたの!?」
「じゃあ次は私だね」
夜はそう言って私の手にあったイヤホンを耳につける
私はどんなワードを言おうか悩む

「なんて言ったでしょう」
イヤホンを外した夜に、私は問いかける
「たぶんこれかな。『お弁当足りなかった、お腹すいた』」
「違いま〜す。正解は『夜からもらった卵焼きおいしかったな』で〜す、、、てか私食いしん坊キャラじゃないから!」
「じゃあ次は未衣ね」
そう言って夜は私にイヤホンを手渡す

私はイヤホンをつけて、夜のワードを待つ
すると夜は斜め上へと視線を動かし何かを見た
いや、何かを考えているだけだろうか
そして私の方に向いて何かを言う
やっぱり音は全く聞こえない
夜の口の動きに集中する
「よしっオッケー」
私はそう言ってイヤホンを外す
「なんて言ったでしょう」
夜はそうやってお決まりのセリフを言う
「今回は自信ある、『オムライスおいしいよ』でしょ!」
「正解は、」
夜はやたらと長い間を空ける
そして答えを教えてくれる
「『もう授業始まってるよ』でした」
「えっ?!」
私は斜め上、黒板の上の時計へと視線を動かし見た
「ヤバっ!!」
"ガラガラ"
「お前ら何やってる!もう授業始まってるぞ!」
教室の扉から語気を強めた口調で先生が現れた
「「ごめんなさい」」
私と夜は謝った
その時の夜の顔は、にこやかだった

1/6/2026, 1:32:05 AM

冬晴れ

僕の街では10時、12時、17時と1日3回鐘の音が鳴る
それは晴れの日も、雨の日も、そして雪の日も

「住野くん、これレジの後ろに置いといてくれる」
広瀬先輩にそう言われて「はい、わかりました」とだけ言って、言われた通りに本のたくさん入ったダンボールを持ち上げた
この重いダンボールも運び慣れたものだ
僕は本屋さんで働いている
「ゴーンゴーン」
そして1日の最初の鐘の音と共にこの店の営業は始まる

僕はブックカバーをつける
「1000円お預かりします」
レジを動かす
「220円のお返しになります」
そしてお客さんにお釣りを手渡す
「ありがとうございました」
お客さんはお釣りとブックカバーに包まれた本を持って去っていく
と思いきや、そのお客さんはレジの前まで戻ってきた
そして少し会釈だけして、レジの前に置き忘れたのであろう傘を取りに来たのだった
今度こそ店の外へと出ていってしまった
僕は斜め後ろにある窓から外を覗き込む
雨が降っていた
「ゴーンゴーン」
12時の鐘の音が鳴って、昼休憩の時間である

僕は重たいダンボールの中から本棚へと本を移していた
明日から恋愛小説特集棚を設置するのだ
今日の締め作業時は他の作業があるとのことで、少し早めに展開を始めている
最近SNSで話題になっている目玉の本は面陳列して目立つよう置く
そしてダンボールの中が空になり、本棚の一角が恋愛小説で埋まる
「住野くんそろそろ上がりの時間だよね。POPは僕が付けておくね。ありがと」
レジに立っていた森田先輩がそう言ってくれた
「ゴーンゴーン」
ちょうどそのタイミングで僕の勤務時間の終了と共に1日の最後の鐘の音が鳴った

「お疲れ様です。」
控室で着替えて帰り支度をして、レジに立っている森田先輩にそう告げて店を出た
「あっ」
僕は傘を開こうとしたが、その手を止めた
昼間に降っていた雨はいつの間にか雪へと変わっていた
僕は傘をささずに帰路へと着く
「明日の朝は寒くなりそうだな。」

「さむっ」
朝家の窓を開けると、そこら中に雪が積もっていた
寒さに辟易とした
今日は遅番でこれから仕事がある
「ゴーンゴーン」
その時1日の最初の鐘の音が鳴った
「そうかぁ。みんなこんな寒いなかでもがんばってるんだな。僕もがんばろうか。」

1/5/2026, 1:46:45 AM

幸せとは

「先生。相談したいことがあります」
私は誰もいなくなった放課後の教室で、受け持つクラスの生徒からそう言って相談を受けた
「うん。いいよ」
私の了承の言葉を聞いて、その生徒は扉から自分の席へとついた
私は教卓に手をつけ体重を預けて、相談の内容を待つ
教卓には私、そして一つの席を残して誰もいない教室内には沈黙が広がる

「先生。幸せとはなんですか」
少し硬い表情を覗かせている
「幸せかぁ。」
私はその単純ではある言葉の核心を考える
「何が幸せと思うかは人それぞれ違うんじゃないかな」
私なりの返答を出した
「、、、」
何か深い悩みを抱えていると見える途廻(とまわり)くんは俯いていた
そこに私は聞いてみた
「なんで聞いたの。なにかあった。」
そうしたら途廻くんは話してくれた
「僕は幸せなはずなんです。毎日ご飯も食べれて、こうやって学校にも来れていて。それなのにより幸せを求めようとする。それって僕が強欲であるからなんですかね」
「強欲であることは絶対的な悪ではないよ。本当の悪は、この世には存在しないから」
そしてさらに私は途廻くんへと質問をする
「どんなときにそれを強く感じたの。話せる範囲で話してくれていいんだけど」
途廻くんの表情は先ほどよりも少しほぐれたように思える
「事あるごとに落ち込んだりするんです。波があるって言うんですかね。例えば、その、なんか、仲良くなりたい人が他の人と仲良くしてると、落ち込んだりとか。そんなことでって思うかもしれないんですけど、そういう些細な事でも強く落ち込んでしまうことがあるんです。」
途廻くんはどこか恥ずかしさを抱きながら語ってくれた
私はゆっくりと歩いて教卓から途廻くんの隣の席へとついた
そして途廻くんと同じ方向を向いて私は答える
「私が思う幸せは『相対的落差』かな。
ずっと幸せな人はそれが当たり前になって幸せだとは感じない、客観的に見れば幸せのはずなのに。でもずっと不幸な人に幸せが舞い降りると強く幸せを感じる。その逆も一緒。普段幸せだから、ちょっとした些細なことで強く落ち込んだりする。」
横を向くと、途廻くんは考え込んでいるようだった
私はそこに付け加える
「まずは途廻くん自身の幸せが何なのかを一緒に考えてみよっか」

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