イオリ

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8/30/2024, 12:03:29 AM

言葉はいらない、ただ……

ちまたでは、総裁選なるものでさわがしい日々のようで。

僕なりに感じることを少し。


念仏を百万遍唱えても実行、実現しなければ意味が無い 田中角栄

これは説明の必要ないね。選挙前は、威勢よく大言壮語を吐く。選挙後、そんなこと言いましたっけ?みたいな、記憶喪失の別人のような顔で、総理の椅子に居座る。いつもの残念パターン。困るよね。

もう一つ。

捨てられたる政治家の壮語すると、破れたる靴の鳴るとは悲し。 長谷川如是閑

簡単に言うと、権力があるときに言ったことはすごいこと言ったな、って感じだけど、権力を失ったら、その言葉が本物だったか疑問、不安になる時があるよって感じ。

もっと簡単に言うと、権力者の言葉は、常に怪しいって思いながら聞こうって感じかな。

結局、政治家は言葉じゃなくて行動なんだよね。



おまけ。(お題とはちょっとずれる)

表紙に若い顔を、という流れがあるようですが。

そうなると、舞台裏に潜む長老たちの、マリオネット操作術にますます磨きがかかりそうで……。

だからむしろ、こういった傀儡師には、表に出て言葉を発してみてほしい。まあ、自信がないから闇に潜むんだろうけど。

人形の糸を断ち切るハサミ。日本列島のどこへ隠れてしまったか。みんなで探しておかなきゃ。



8/29/2024, 1:55:24 AM

突然の君の訪問。

マンションに帰宅すると、扉の前に彼女が腰を下ろしていた。

来るって言ってたっけ?

言ってない。

だよな。 鍵を開け彼女を入れた。

僕が着替えている間、彼女は慣れた手つきで冷蔵庫を開け、料理を始めた。

テーブルに並んだナポリタンとサラダを食べながら、

なんかあった? と彼女に訊いた。

さあ、どうだろ。

なにそれ。 僕は軽く笑った。

昨日実家に帰って掃除してたら、懐かしいもの見つけちゃって。 彼女がカバンから取り出した。CDだった。

ワルツ・フォー・デビイ。懐かしいな。

貸してもらってそのままだったから。

そうだっけ?

うん。

CDなんてもうめったに使ってない。別に急がなくてもいいのに。

まあまあ。ねえ、せっかくだから聞こうよ。 僕が答える前にサッとセットしてスタートした。

ピアノの静かな始まり。そこから少しずつ、少しずつ、膨らんでいくメロディ。エヴァンスの流れる鍵盤が、心のひび割れをゆっくりと埋めていく。寄り添う曲。そんな感じ。

ああ、そうか。 僕は無意識につぶやいた。

え、なに?

いや、なんでもないよ。


最近、忙しかった。疲れてもいた。顔にしっかり出ていたのだろう。

何かあったかと彼女に訊いたが、実際は彼女が僕に訊きたかったのだ。でもあれこれ無遠慮に訊かずに、この曲を持ってきた。持ってきてくれた。

いつの間にか箸を止め、曲に聴き入っていた。彼女も口を開かなかった。


曲が終わった。

いつ聞いても、名曲だな。

そうね。癒やされた?デビイ?

ああ、癒やされた。デビイじゃないけど。

そう。よかったね。


ここで、ありがとうと言えばいいのに、それが言えない、男の照れくささ。


でもいつか言おう。







8/27/2024, 12:46:10 PM

雨に佇む

白い車が、水たまりを全力で蹴散らして行った。水しぶきが、そばを歩いていた小学生たちに勢いよく飛び散った。

何だよ、あの車。 ひでーよ。 子どもたちは大騒ぎ。どうやらあの車の運転手は、ルールかマナーか思いやりかを、家に忘れてしまったらしい。

気の毒に思いつつも、できることはなにもない。僕は子どもたちを無言で追い越した。


バス停にはすでに何人かいた。屋根のあるバス停なので、誰も傘を差す必要はなかった。僕も傘を閉じ、待機所の中に入った。

それにしてもよく降る。今日で3日連続か。その上、これから台風ときた。もうしばらくは、この調子なんだろうな。

時計を見た。バスが来るまで、まだ時間がある。しかもこの雨だ。もしかしたらもう少しかかるかもしれない。

ふと、待機所の外に意識が向いた。小さな花壇に、小さな花が佇んでいる。

なんの花だろう。ニチニチソウかな。白、薄紫。赤もある。

どの花も雨のしずくが重そうだ。

僕は傘を広げ、花壇の側に立った。ニチニチソウも、これで少しは雨をしのげるだろう。

ほんの少しの雨休み。余計なお世話か? 僕は心の中で、花たちに言った。

小学生たちの悲劇を前に、無力な大人だったなという、胸の小さなつかえを、こんなことで少し晴らす。






8/26/2024, 11:44:45 PM

私の日記帳

朝。

青信号に変わって横断歩道を歩き出すと、隣の女が躓いてころんだ。僕は手を差しのべた。

大丈夫?

わたしが見えるのか?

魔女だった。何故かそれから、付きまとわれた。

夜。

もうどっか行ってくれる?

ヤダ。

なんで。

わたしが見える人間は珍しい。もうしばらく居る。

やれやれ。 僕は深くため息を吐いた。

魔女はこちらの行動をつぶさに観察している。何がそんなに面白いのか。

さて、どうしようか。

何をソワソワしている?

してない。

魔女に嘘はつけないぞ。何を考えている?

……日記。

日記?

毎日書いてる。

ふむ。じゃあ書けば?

お前がいる。

だから?

気になる。邪魔。中身見られたくない。

秘密にするほど大事なものなのか。 フフッと、魔女は笑った。

じゃあこうしよう。その日記帳、読ませてくれたらその後去ってやろう。去ってほしいのだろう?

僕は少し考えた。明日あさっても、と思うと、さすがに……。

わかった。 渋々日記帳を差し出した。

魔女は僕の手から奪い取り、ベットに寝そべりながら日記を読み始めた。

ぱらぱら、ぱらぱら。あっという間に読み終えた。

さあ、もういいだろ。帰ってくれ。

わかった。 意外なほどあっさりと、魔女は扉に向かった。

彼女は振り返って、

達者でな。つまらんやつ。 そう言って去っていった。


約束を守って去ったのか、僕という毎日に興味をなくして去ったのか。

いずれにしても、これで安心して今日の日記をつけられる。

さて、何を書こうか。今日も1日、なんということもない日だったなあ。


8/25/2024, 10:13:35 PM

向かい合わせ

痴漢でも脱税でもスピード違反でも窃盗でも殺人でもなんでもいいけど、もしぼくが罪を犯した、と訴える人がいたら、みんなの前でその人と真正面の向かい合わせにしてほしい。

弁護人なんか必要ない。

鉄のまなざしで、相手が惨めに目をそらすさまを見てほしい。それだけで真実は明らかになる。

ぼくにはその自信がある。


というイメージを頭で繰り返すぼくの前に、担任の先生が眉をつり上げて立っている。

それで?自由研究はどうした?

いや、だから、アサガオの観察。

どこにある?

いや、だから、全然育たなかったから。芽が出なかったから、しょうがないじゃん。

ほんとに植えたのか?

植えた。ほんとに。

水は?

……。

み、ず、は?サボらずやったのか?

しょ、証言を拒否します。

……お昼休み、職員室に来なさい。


うぅ。ぼくのまなざしは鉄のはずだったのに。もろくも溶けてしまった。これも温暖化で残暑が酷いせいだ。


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