雨に佇む
白い車が、水たまりを全力で蹴散らして行った。水しぶきが、そばを歩いていた小学生たちに勢いよく飛び散った。
何だよ、あの車。 ひでーよ。 子どもたちは大騒ぎ。どうやらあの車の運転手は、ルールかマナーか思いやりかを、家に忘れてしまったらしい。
気の毒に思いつつも、できることはなにもない。僕は子どもたちを無言で追い越した。
バス停にはすでに何人かいた。屋根のあるバス停なので、誰も傘を差す必要はなかった。僕も傘を閉じ、待機所の中に入った。
それにしてもよく降る。今日で3日連続か。その上、これから台風ときた。もうしばらくは、この調子なんだろうな。
時計を見た。バスが来るまで、まだ時間がある。しかもこの雨だ。もしかしたらもう少しかかるかもしれない。
ふと、待機所の外に意識が向いた。小さな花壇に、小さな花が佇んでいる。
なんの花だろう。ニチニチソウかな。白、薄紫。赤もある。
どの花も雨のしずくが重そうだ。
僕は傘を広げ、花壇の側に立った。ニチニチソウも、これで少しは雨をしのげるだろう。
ほんの少しの雨休み。余計なお世話か? 僕は心の中で、花たちに言った。
小学生たちの悲劇を前に、無力な大人だったなという、胸の小さなつかえを、こんなことで少し晴らす。
8/27/2024, 12:46:10 PM