イオリ

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私の日記帳

朝。

青信号に変わって横断歩道を歩き出すと、隣の女が躓いてころんだ。僕は手を差しのべた。

大丈夫?

わたしが見えるのか?

魔女だった。何故かそれから、付きまとわれた。

夜。

もうどっか行ってくれる?

ヤダ。

なんで。

わたしが見える人間は珍しい。もうしばらく居る。

やれやれ。 僕は深くため息を吐いた。

魔女はこちらの行動をつぶさに観察している。何がそんなに面白いのか。

さて、どうしようか。

何をソワソワしている?

してない。

魔女に嘘はつけないぞ。何を考えている?

……日記。

日記?

毎日書いてる。

ふむ。じゃあ書けば?

お前がいる。

だから?

気になる。邪魔。中身見られたくない。

秘密にするほど大事なものなのか。 フフッと、魔女は笑った。

じゃあこうしよう。その日記帳、読ませてくれたらその後去ってやろう。去ってほしいのだろう?

僕は少し考えた。明日あさっても、と思うと、さすがに……。

わかった。 渋々日記帳を差し出した。

魔女は僕の手から奪い取り、ベットに寝そべりながら日記を読み始めた。

ぱらぱら、ぱらぱら。あっという間に読み終えた。

さあ、もういいだろ。帰ってくれ。

わかった。 意外なほどあっさりと、魔女は扉に向かった。

彼女は振り返って、

達者でな。つまらんやつ。 そう言って去っていった。


約束を守って去ったのか、僕という毎日に興味をなくして去ったのか。

いずれにしても、これで安心して今日の日記をつけられる。

さて、何を書こうか。今日も1日、なんということもない日だったなあ。


8/26/2024, 11:44:45 PM