道を歩いた、レンガの道を。
ふと空を見ると雨は雪に変わっていて、手のひらに舞い落ちた雪はすぐに体温で溶けてしまった。
それから、自分でどこに行く予定だったのかも忘れて、いつも行く公園に足を進めていく、寒さが頬るがそれすらも冬という季節を靡かせているかのようだ。
知らず知らずの間に時間は午後の7時を指していた。帰るべきか否か…いやどこに帰る?、公園に着くとベンチに積もった雪をどかし座る、するとどこからかコーンと小さく響いた音がした。遠くからの音だろうか、ああ思い出した。
目の前には優しく微笑む女性がいて、雪に少し隠れたスターチスの花束を持っていた。自分はそっと彼女の花束を受け取って立ち上がった、感情に咳き込まれるように彼女の手を引き抱き締める。
彼女の頬には少し水滴が付いており、雪が溶けたという彼女の目は赤かった、泣いていたのだろう。
優しく頬を撫で、自分の全てで彼女を包み込むように強く抱きしめ直し、目を潤ませながら何度も謝った。
題名『若年性アルツハイマー。』
彼女との出会いは今でも不思議な出来事のように覚えているよ。
彼女は白い髪に青い瞳をしていて、結構異質な姿をしてるのにも関わらず天使みたいに美しかった。
夏が終わりを告げ始めたセミの亡き頃、園芸部であった僕は植物の様子を見るために体育館の近くにあるのにやけに日当たりのいい温室に来ていた。
そこには居ないはずの人がいて、それは園芸部の部長と彼女だった、彼女は不思議な事に白い薔薇に青い絵の具を垂らして染めていた。
やけに美しいのにかなり変なことをする女の子で、部長も部長で、嬉しそうに彼女を見守っている。
僕は思い切って部長に一歩一歩近付いていく、すると部長は僕を見ていつもの暖かい微笑みを浮かべ、彼女を紹介するように手を広げる。
「彼女は今度転校してくる子なんだよ」
部長の言葉に、僕は少し戸惑った後に彼女に目を向ける。彼女はこちらに一度、目を向けた後に薔薇に気を取られたように目を戻す。
「何故彼女は薔薇を染めてるのですか?、というかこの時期に薔薇って…」
疑問のままに僕が彼女と部長に話すと、部長は少し言葉に詰まったようにしながら苦笑し頭をかく、彼女は手を止めて口を開いた
「青い薔薇が欲しいから」
彼女の声は澄んでいて綺麗だった、天使がいるのならこんな感じだったり?…僕はそんな事を思いながら彼女の青い薔薇が欲しいという言葉に興味を持った。
「青い薔薇は存在しませんが…染めてるなら知ってますよね、」
「ええ。」
僕がそう青く塗られ途中の薔薇を見ながら言葉を落とすと彼女は頷いて作業に戻った。部長は彼女の手伝いをするようにバラの花弁を支える
「彼女は好きなことに忠実だからね」
部長の優しい言葉が温室に音を生し、外のひぐらしの音が微かに聞こえた。
僕はそれ以上に話すこと無く、予定だった花の管理を終えて温室を後にした、扉を開けると夕焼けの蒸し暑さを無視するように風は少し秋の話をする。
彼女の視線が頭にいる。まぁ特徴的な子だったから、
そう、特徴的だったから…気になる理由を暑さのせいにするには時期が遅すぎたのかも知れない。
題名『青い花』
どうしようもないことが嫌だった。
幼い頃からどうにもならない事を叶えられないと言われるのが、出来ないと言われるのが、とても嫌だった。
どうにか出来るはず、
視点を変えるんだ、
工夫をすればなんとかなる。
そんな事を浅はかにも思い続けていた、でも私には足りないものばかりだった、あんな事を思い続けていくには知識も経験も浅くて、上辺だけの考えだったんだ。
気付いた時には壊れてるおもちゃみたいに、私の考えもそうだった、虚しくて何も感じなくて
それが大事だった事も忘れて、日だまりに置いてきたものだ。
どうにもならない事は普通にある。自然が時に残酷で人の気持ちに喘ぐものでは無い、自然にはルールがあり偶然の連載という理論があるのだ。それに勝手に反してるのは人間であって、勝手に人間関係に名前を付けてそれに対する役割を決めつけているのだから、
世界は進む度に自然のルールを無視している、本能を無視している。気持ちや体の問題で増える多様性だったり倫理観、人間が動物と同じじゃないなんて、どんどん離れてるのは自分達だ。
首を絞めていく、簡単な生物でしかないのに、複雑だと開かないドアを叩くように言い合っている。
自然はただ、ルールに従っただけだ。
私の腕の中にいる赤子の存在がとても憎らしくても悲痛な存在であっても、自然はルールを無視してない。夫が悪いのか、いやどうだろうな、
いや分かりたくもないんだ、理解したくもないんだ、
もう何も考えたくない、悲しい気持ちになるくらいなら出会わなければ良かった。
そんな事を考える私はきっとバカなんだろうな、
この子の首を絞めれば、ころっと絞死んでくれるだろう、水に落とせば溺れて死んでくれるだろう。
分かっているさ、この子はただ生きてるだけ、産まれただけ、何も知らずにいる、でも、憎らしい悲しい、どうすればいいのか分からない程に残酷だ。
もう何も見たくない、聞こえなくなった。
夫と不倫相手との子なんて、見たくなかった。
私が悪いのか?否定し続ける事でしか今は咎めることを許されない。
不安が解ければ、深海の音のように聞こえはしないだろう。
題名『咎める真実と心壊』
題名『開かず待ち続けた夕暮れの玄関越しで、誰かがいる気がした。』
どうあるか
どうしたのか
自分にとっての何かなのか
人にとって熱くなれる瞬間なのか、トラウマな瞬間なのか、どちらでもない瞬間なのか、
理解出来なくとも、忘れていたとしても、記憶であることに変わりはない。
忘れたって理解したって、変わらない。
事実を見ることに目を赤くするのか?
その瞬間を思い出すほうが何だかんだ難しくて、その事実にさえ君は悔しくて涙を流すのかい?
あぁ、どちらでもいいよ。
何したって過去に起こった事は変わらない。
だけど、その起こった事の意味を言動で変えることなら、きっと今でも未来でもきっと出来るはずだよね。
何をするのか、その時を思い出す何かが欲しい。
赤く紅く溶けるのならいい、燃えるでも、
何でもいいはず、あの時に何を思ったのか
放課後の赤い夕暮れの光に覆われた学校の廊下、教室沿いに張られた、自分の偽り過ぎた文字に答えなんて見つからない。
誰もいない家で、部屋に落ちる赤い世界。
それを見つめていた。その時、私は何を思っていたんだろうか
寂しくて、答えが見つからないから、理解することを恐れて目を離した領域の思考の髄。
意味が無い。だけどふとした瞬間に零れ落ちるからどうしようもないのだろうか、
『花が枯れること、そしてまた咲くこと』
世の中の全てが見えないわけじゃない。
決まったことはある。
水の入ったコップを倒せば水は溢れること、
夜が来るなら夜明けが来ること、
雨が降るならいつか空は晴れること、
見えないとばかり決めつけるのもどうなんだって話だ。
まぁ、見えない事や、予想できない事を恐れるのも楽しみにするのも必要な事だよね。