『どんな時も見えたはずのもの』
一面の色を飾る綺麗な花畑が目に入った時、
空の色を爽と映す湖の微風に気付いた時、
夜の星をふと見上げて吐息を漏らした時、
雨の雫に反射した景色を無意識に追っていた時、
気付かなかった事に気付けた時にどこが晴れて風が吹き、夢や可能性が広がる。
複雑に考え過ぎていたって、単純でいいって思えると軽くなる。
いつも複雑に考えすぎてしまうから、1つの景色で無駄に気付く事が出来るって分かっているのに視野にはあるのに、
いつまでも考える。無駄と言うのに悩む。死にたいと思うのに怖がる。
無駄と言うのに悩むのは、それでも考えるのは、その気持ちを晴らす事を諦めていない証拠であり
死にたいと思うのに怖がるのは、それでも今も息をするのは、生きるのを諦めたわけじゃない事の証拠で、
死にたい訳じゃない、ただ正しく生きたいと思う事だった。やれることをやればいいのにそれだけなのにずっと悩む。
まぁ仕方ない、風っていつも不意に来るんだ。
題名『燈火』
ロウソクに火を付けた時、ロウソクの蝋は時間が経てば火の熱で溶けて液体になっていく。
ロウソクの蝋は熱に溶けやすいのだから、当たり前だよね。
それを記憶に例えるのか…簡単だけど言葉にするのがどうも思い付かなくて面倒くさいな。
まぁどんなに忘れたくても、思い出したかったにせよ、今に残っているものは火じゃなくてロウソクだったもの、溶けた蝋の固まりなんだろう。
もしランタン自体が自分自身だったなら、中の炎は何度も消えて痕跡が積み重り残っていく、それをふと見た時にその時のロウソクを思い出す。
そいうものが記憶なのか思い出なのか、その時の灯りが何を照らしてるのか、
その時の自分が火なら何度も自分は生まれ変わって痕跡は足元にいるのか、
今の自分が、過去の自分を溶かして殺した、いや死んだわけじゃなく、ただ過去として固まってるだけ、そうだな。
剥がして溶かしてまた形にすれば、また同じじゃなくともロウソクとして使えるんだから、殺した訳じゃない、無くしたわけでもない。
それなら火の消え方はどうだろう。溶け切って消えたか、衝動で勝手に消えたか、他者からの吹きかけで言葉で消えたか、自分自身が吹きかけて消したのか、それが励ましか辛辣なものだったかは分からない。
とにかく火の消え方も自分自身の変わり方もそれぞれ異ったものである事で
ただ着飾るのも自分自身である事も疲れてしまうっていう話か。
題名『覆うもの。』
春とは違う
夏とはまるで違う
秋とは似たようで違う。
冬は嫌いだ、着替える時が寒い。
冬は好きだ、虫がいない。
冬は嫌いだ、乾くから喉が痛む。
冬は好きだ、星がよく見える。
冬は嫌いだ、葉っぱが無くて寂しい。
冬は好きだ、雪が綺麗だから。
冬を完全に嫌いになるには好きが少しだけ邪魔をしている。
湯気がよく見える時期、おぼろげに揺れて消えてく。
赤道から少し離れただけでこんなに寒いなんて、地球って意地悪だな。
自然は不思議に廻っている
今年も花が咲くのを待つ時期が来た。
また会えるのだから、ゆっくり待つことにするよ。
題名『かぐや』
静かな夜だった、本当に。
揺れたカーテンから差す、月明かりが漏れ埃が舞うのが見えた。時計の針も小刻みのリズムで静寂に溶け込み何も意味をなさない空間を生んでいる。
冷たい月だ。
深夜一時半、青い、黒い、グレーの色が混色し部屋を満たしている。
月の光なのか夜の色なのか、
どうでもいいはずのことなのに、考える。
何も知りたくない、
どうしてこうなった、
どうしてあげればよかったのか、
これからどうすればいいのか、
もう何も考えたくない、
理解したくない、
流れてしまったものにずっと奥を抉られたような心を侵されている。
子守唄の練習も意味が亡くなったのに、
頭に響いてる、もう疲れて諦めたくて目を逸らすのに床に落ちている絵本は消えない。
無意識に手は腹部に移るが、その指こそ恨めしくてすぐに離した。
もう何も理解したくない。
夫が悲しそうに私の手を握った。
あぁ、もう本当にどうすれば良かったのか。
ぐしゃぐしゃになってしまいたかった、
壊れてしまいたかったのに
私は夜の冷たい空気で荒く呼吸をしている。
夫も辛いはずなのに目を潤ませながら私を抱きしめるから、余計にどうすればいいか分からず涙が出た。
今はただ辛いのに悲しくてならないのに、もう何も感じれないはずだったのに、涙が出た。
嗚咽を吐きながら涙を流して夫に縋った、理解したくないと泣くのに理解してくれと心が痛みに叫んでいる、ただ悲しかった痛かった辛かった、単純でいい、その痛みを理解して欲しかった。
夫は優しかった、涙でぐちゃぐちゃな私を離そうとせず、抱き締めてくれた。
彼が空気を入れ替えようって窓を開けると冷たく見えた月がやけに鮮明に見えた。
涙で目のゴミでも洗い流されたからなのだろうが、少し月が優しく見えた。
夫の手は暖かく私を抱き締めてくれていた。
悲しみは消えない痛みは消えない、目の前が辛いと悲しいと泣くばかりだったのに生きようとする私は、母親になる資格は無かったのか、
許してほしかった。
月が今夜もやけに鮮明に映り、私たちを照らした。どう思えばいいのか今は分からない、
ただ今は抱きしめてほしい、ただ鼓動を感じたかった。
題名『一瞬の話であって』
とある夏の暑い日、体育の授業で見学をする時にたまたま隣同士になったのが君だった。
自分はあまり話したことない相手だった君に、気まずさを覚えて意味わかんない所に目線を泳がせて、時間が過ぎるのを木陰に座り待つ。
それなのに君は嬉しそうに話しかけてくるわけ、もうなんなの?って言いたくなるくらいだった。あまり話したことないんだから普通もっと気まずそうにするはず、そんな事を思いながら君の詰め寄られる質問に答えた。
夏の風が妙に湿り気で、夏であることを実感しつつ、いつの間にか目の前の楽しげな元気なクラスメイト達の声を聞き流している。
そのくらい、君の質問はどこか面白くて気まずさを忘れるのは意外と早かった。
普段からもっと話しておけば良かった、こんな事を思う程に君は嬉しそうな表情で話しかけてくる。夏の暑さをどうとも言わない君の笑顔に自分は一瞬戸惑ったあと自然とふと笑ってしまった。
人の笑顔を可愛いなんて思うことないと思っていたのに、呆気なく初めてを奪われた気分で少し自分が人間らしいと思ったんだ。
これが夏の木漏れ日を見ると思い出す、今でも茂っている記憶だ。
冬の木漏れ日とは違う、
花火の光なんかとは違う、
あの夏の湿った残り香が漂っている。
思い出と言うには少し短すぎる時間だったのか、
どうも嫌なくらいに思い出と言うには納得出来ない気持ちがあった。
一瞬の気持ちを思い出すのが怖いのかも知れない。木漏れ日が揺れる度に自分の何処かの感情も揺れている、その事を夏の暑さのせいにする時点で僕は
君の事が一瞬でも好きだったのかも知れない。
忘れたいなんて言ったら、僕は君にとって卑怯な人間になるのか、でもね忘れたいって思う程に君って魅力的だったんだよ。
手に入れたいなんて思わないはずだけど、それでも君が遠くに行くとどこか苦しい気がするのは、
そうだよな…きっと暑さのせいだ
早く春が来るといいな。