佐原369

Open App

題名『かぐや』


静かな夜だった、本当に。
揺れたカーテンから差す、月明かりが漏れ埃が舞うのが見えた。時計の針も小刻みのリズムで静寂に溶け込み何も意味をなさない空間を生んでいる。
 
冷たい月だ。

深夜一時半、青い、黒い、グレーの色が混色し部屋を満たしている。
月の光なのか夜の色なのか、
どうでもいいはずのことなのに、考える。

何も知りたくない、

どうしてこうなった、

どうしてあげればよかったのか、

これからどうすればいいのか、

もう何も考えたくない、

理解したくない、

流れてしまったものにずっと奥を抉られたような心を侵されている。
子守唄の練習も意味が亡くなったのに、
頭に響いてる、もう疲れて諦めたくて目を逸らすのに床に落ちている絵本は消えない。
無意識に手は腹部に移るが、その指こそ恨めしくてすぐに離した。

もう何も理解したくない。

夫が悲しそうに私の手を握った。

あぁ、もう本当にどうすれば良かったのか。
ぐしゃぐしゃになってしまいたかった、
壊れてしまいたかったのに

私は夜の冷たい空気で荒く呼吸をしている。

夫も辛いはずなのに目を潤ませながら私を抱きしめるから、余計にどうすればいいか分からず涙が出た。

今はただ辛いのに悲しくてならないのに、もう何も感じれないはずだったのに、涙が出た。
嗚咽を吐きながら涙を流して夫に縋った、理解したくないと泣くのに理解してくれと心が痛みに叫んでいる、ただ悲しかった痛かった辛かった、単純でいい、その痛みを理解して欲しかった。

夫は優しかった、涙でぐちゃぐちゃな私を離そうとせず、抱き締めてくれた。
彼が空気を入れ替えようって窓を開けると冷たく見えた月がやけに鮮明に見えた。

涙で目のゴミでも洗い流されたからなのだろうが、少し月が優しく見えた。

夫の手は暖かく私を抱き締めてくれていた。
悲しみは消えない痛みは消えない、目の前が辛いと悲しいと泣くばかりだったのに生きようとする私は、母親になる資格は無かったのか、

許してほしかった。

月が今夜もやけに鮮明に映り、私たちを照らした。どう思えばいいのか今は分からない、
ただ今は抱きしめてほしい、ただ鼓動を感じたかった。

11/16/2025, 11:24:20 AM