22時17分

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10/29/2024, 9:46:03 AM

暗がりのなかで、本を読む。
本のなかに込められた文字は、封じられたもう一つの世界を覗き見ているようである。
ファンタジーほど壮大で綺麗である。

静けさの伴った夜の夜。
きっと自分以外は寝ているはずだ。
何台か、微かに走行するエンジン音。唸り声が深夜の道路を滑走路とする。
よく聞こえるなって。こんなものでも、夜になれば、寝静まれば、音はみな綺麗になって、聴きやすくしてくれる

眠れない夜には眠れない人を見つけたほうがいい。
話し相手と話す方が、時間の進みが早いもの。
本を開けば、眠れない人なんてたくさんいる。
別に寝れないからって後ろめたい気持ちになることはない。だって、少なくとも私は寝ていない。

10/28/2024, 9:37:55 AM

紅茶の香り。

お題から反れるが、仕方ない。
僕の人生は、紅茶という飲み物に対してなるべく避けてきたと思う。
よくある大学生の日常では、リプトンの紙パックにストローを差して、オレはこれを飲めるのだ、と主張の激しかったボサボサ頭の院生を知っているが、それに辟易した訳では無い。

飲む機会がなかった、ということだ。

そういうわけで、子供の舌のまま大人になってしまったので、ある日コンビニにて、大人の雰囲気醸し出す紅茶というものを買ってみることにした。

ストレートティーと書いてあったので買った。
一口飲んで、「甘い!」と思った。
事実甘いのである。
だから、とうとう自分も紅茶を飲めるようになったか、と一人感慨深い気持ちになって、その日から連続3日購入した。
しかし、ふとしたネット記事にて、「いや、紅茶のストレートティーって、ストレートじゃないっすよ」という趣旨を拾い読みした途端、僕は空ペットボトルのラベルを見た。

砂糖入っとるやんけ!

なーにが、ストレートだこのやろう!
砂糖入っててストレートとか、景品表示法違反だろこのやろう!
という気持ちでペットボトルに八つ当たり。
ベクトルは真下。床に目がけてぶんと一球闘魂したためたので、豪快な音が。跳躍するペット。
熱が冷めた時にハッとなって、しゃがんで床が凹んでないか確認したほどだ。
大丈夫なようだ。危ない危ない。
ここ賃貸だったの忘れてた。

……こほん。
ということで、無糖のやつを買いたいところなのだが、あいにく買う元気が無い。
紅茶のティーパックというのも買おうと思ったことはないこともないが、似たような色のパッケージである「ほうじ茶」を見て、ほうじ茶でいっか、飲み慣れてるし。
という感じで、すり替えが生じてしまう。
紅茶の香り……、匂いだけとか売ってませんかね〜。

10/27/2024, 6:06:01 AM

愛言葉。
最初お題を見た時は「〜言葉」とあったから、
「ああ、花言葉かあ」と早合点してしまって、ラベンダー、ベゴニア、ヒガンバナ、などと花の名前を羅列していくこと早30分。
もう一度お題をみたら、「愛言葉かいっ」となった。

愛言葉となると、おやっと思う。
花の名前のように、羅列できないのだ。
恋愛経験のなさがでてきてしまった。
多数の異性を誑かすほどの魅力はないので、それはそう。仕方ないのである。

合言葉というものがある。
玄関ドアの内と外。
どっちがどっちかは知らないが、ドアを隔てて2人がいる。
そこに合言葉を投げかけてみよ、と言葉が鍵になっちゃって、かこんとキーの解錠音が鳴るかどうかの瀬戸際外交。

当然鳴らない場合も、あり得るんだなこれが。

10/26/2024, 2:12:37 AM

友達といったら、修学旅行のバスである。
後部座席に陣取って、何やらガヤガヤと叫び散らかすことがなんといっても良い。
青春の1ページを作っているのだ、という意識はその時には何も知らなかったが、今を振り返ると、1ページになっている。

バスのなかの席順は、今の時代は知らないが、当時は自由席だった。友達グループの一角がバスに乗り込み、後部座席を陣取り、その次のグループが後部座席前の左右に散らばり、なんかゲームをするという喋りをしていた。
前とか中間とかは、勉強ができる風の小規模なものがあって、ボッチは前の方しか座れない。
それを後部座席から見ることができるのだ。

修学旅行は、行きのバスと帰りのバスで雰囲気が異なっている。帰りはあとは帰るのみということで、前の連中、中ほどの連中はだいたい寝ていた。
しかし、後部座席の僕たちは、寝ようと思っても寝れない間柄。ひそひそ話をして、寝かせてくれない。
それで修学旅行が終わった学校。
放課後の空気を吸って、ようやく日常に戻れた気分になる。

10/25/2024, 9:03:18 AM

「行かないで……」

呪縛霊の少女が、名残惜しい手を虚空へ伸ばした。
先祖代々の墓、と書かれている。この墓場の前で、何十年も離れられないでいる。

彼女は、自分が何で死んだかすらわからない。
自分の容姿もわからない。
髪は、長かったような気がする。
三つ編みが好きだった気がする。
髪質を気にしていた時もあった。
背が小さいことがコンプレックスだった。
しかし、霊となった今、背が低いのは、本当は老婆の様相をしているかもしれないと予想した。
すでに背骨が曲がっていることがわからない年寄り。
身体は人間であるか。それもわからない。

人に聞こうにも、霊だから視えるはずもなく、視えたら視えたで怖がられるだけ。
不可視の存在に怯えるのが、人間の個性である。見えない空気を吸って、見えないものを吐き出している。
だから、少女は何時までも孤独。
会話はおろか、自分の声色を忘れているくらいだった。
つい先程言った声も、自分の声とは思えない。
とても、とても澄んだ色だった。

少女を捕らえる墓石も、時間に苔むしたようになっている。緑が多く、文字は文字化けしている。
周りの自然も、誰かに声を焼かれたように静かに見守っている。だから澄んでいるのだ。

それなのに……、目の前から通り過ぎようとしている男の人だけは違う。
彼は違った。
彼を除けば真の孤独だった。
彼は、理由は明かさないが、年に一回のペースでこの墓に来てくれる。汗の量を見るに、この墓は山頂にあるらしい。

いつも一人で来てくれる。
季節は秋。夏ではない
可能な限りだが、苔むした墓を洗ってくれている。
頑固な苔はさすがに無理だが、それでも半分以上は綺麗にしてくれる。

どうして、どうして?
と疑問を呈するが、それでも声は届かず、そして、また今度、と山を降りていく。

「行かないで……!」

と少女は、坂道を降りていく男に声を掛ける。
すると、彼は、ふいっと顔が動き、こちらを見た。
それで終わりだ。
秋風が彼の背中を撫で、それで歩いていく。
それだけで、少女は泣いてしまった。
来年は、ちゃんと来るのだろうか。心配になった。

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