太陽みたいな君の笑顔が、心を侵す暗い感情を消し去っていく。
早く早く!と勢いよく手を引いて、走り出した。
高鳴る鼓動、じんわりと溢れる幸福感。
もっと、もっと早く走って。
誰も追いつけないくらい、誰も見つけられないとこまで。
全てがこわれてしまう前に、憎いほど美しい太陽が登る前に、この街から逃げ出そう。
『街』
もう街のシステム全てが止まって、建物がどんどん風化していく。
あ、ほんとに世界が終わってしまうんだ、と実感する。
そんな僕の手を強く握る君の指先はとても冷えていて、だけどその感触が僕を安心させた。
ガラクタだらけの街を2人進んでゆく。
ぽろりとこぼした「好き」って言葉は君に届いているかな。
世界の終わり、灰色の街でアイビーの緑が嫌なほど脳裏に焼き付いた。
『世界の終わりに君と』
こんな雨の日は、君を思い出す。
純粋な笑顔で、甘い匂いを振りまいて。
長いまつ毛が揺れて、大きな瞳がこっちを覗く。その瞬間が、大好きだったのに。
君だけ時間が止まってしまった。
奪われてしまった。
ああ、嫌な事を思い出した。
「最悪」そう呟いた声は雨に掻き消されて。
こんな雨の日は、君を思い出す。
『最悪』
真冬の海辺、くすんだ空の下であの子が私にそっと教えてくれた秘密。
皆誰にも言えない秘密の1つや2つくらいあるでしょう?とニヒルに笑うあの顔を私は一生忘れられない。
『誰にも言えない秘密』
広い部屋、聞こえるのは私の呼吸と無機質な時計の音だけ。
君と一緒の頃は「2人分の荷物が入るとさすがに狭いね」なんて笑いあっていたのに。
お互い、合っていなかった。すれ違っていた。
気付かないふりしたけど、やっぱり耐えられなくって。
増える喧嘩、部屋の隅でうずくまって泣いたのは何回あっただろう。好きだったんだけどなぁ。
やっぱそれだけじゃやっていけなかったのかな。
空っぽの部屋、聞こえるのは私の泣き声。
あんなに窮屈だった狭い部屋が今は愛おしくてしょ
うがない。
『狭い部屋』