閉じた目蓋越しにすら感じる、穏やかな光。
髪を揺らす軽やかな風にのって、鼻腔をくすぐる春の匂いすらも通り抜けていく。
深呼吸して、ゆっくりと目を慣らしていけば、眼前に広がるのは見たことの無い景色だ。
そろり、と足を踏み出せば、これが地面を踏み締める感触なのだと教えてくれる。
慣れない感覚に始めは恐る恐る、段々と早く、速く、疾く、駆けていく。
何時までも、何処までも、行けるのだ。
「転ばない!痛くない!」
思わずそう叫んで、ハッとした。
もう、自由なんだ、と。
自分を縛る管も針も大人も先生も家族も友達も、何も無いのだと。
『遠くの街へ』
ねぇ、見て。
聞いて。
感じて。
僕のことを、わたしだけのことを。
彼と、あの子と、あいつと、あの人と、そして他人と比べて、俺を選んで。
誰よりも、私がいいのだと。
音で、言葉で、空気で、顔で、仕草で、行動で、結果で、伝えて。
慎ましやかに、大人しく、控えめに、なんて、意味が無いのだから。
誰よりも、何よりも、君自身よりも。あなたの言葉で。
---のことを愛してくれ。
『欲望』
4つもまとめてすみません。
継続することには憧れがあるのです。
ぐるぐる、ぐるぐる。
ただ回り続けるだけの皿。何度目かわからない彼らを横目にパネルをつつく。
欲しいものだけ、すっ飛んでくるシステム。
醤油を垂らして、零さないようにひとくち。
ぷち、ぷちぷちぷち。とろり。
これが一番すきな味。
『小さな命』
たぷたぷ、すっ。
たぷたぷ、すっ。
毎日、毎晩、この時間。
寝てしまえばその分、朝が楽になることもわかっているけれど《やらなければいけない》という強迫観念がこびりついて、離さない。
#今の気分
顔のない円が、一言だけつけてどこかの窓を投稿していた。
たぷたぷ、すっ。
『物憂げな空』
偶然だろうか。
それとも意図して?
白か黒か。
外か中か。
午前か午後か。
僕には何も分からないけれど、
読んでくれて、ありがとう。
『君は今』
なにもない。
体を横たえ、ただ宙を見つめる。乾けばふと閉じてみて、飽きればまた蓋を開く。
暗闇に目を凝らすでもなく、ただ。
窓を風が揺らす音、付けっぱなしの換気扇や冷蔵庫の駆動音。他人の家から聞こえる生活音。自分の呼吸、鼓動、耳鳴りのような、何かが流れていく音。
何も無いそこには、沢山ある。
普段は感じない全てが、考えないものたちが、音に乗って、じんわりと這うように近づいてくる。
やりたいこと、やるべきこと、考えるべきこと、やっておいた方がいいこと、やらざるを得ないこと。遠ざけていた物共が、全て。
あれらは、自分を呑み込んでいくものたちだ。
一欠片でも、爪の先に触れるよりはやく。
勝手に動く身体は、それらに微塵も関係のない情報の渦に自分で飛び込んでいくのだ。
『現実逃避』
じわり、じわりと。
画面を見つめる両目がふと熱を持つ。
眼精疲労、なんて嘯いて効くらしいツボを押してみるが、効果は無い。
諦めてまた、不必要な文字、映像、音を追っていく。
ふと、
とろり。頬を伝って、こもる熱を下げるべくして液体が垂れていった。
…ああ。どこへ行こうか。
どこへだったら、行けるのだろうか。
まとめて投稿が、癖になりつつございます。
「ここがマジで分かんねぇんだよな…」
「あーそれはそもそも最初の1行目からミスってる」
「えっなんで?」
「いや真上の例題みて解きなっていつもいってんじゃん」
「あぁ…え?これが…」
「はい、よく出来ましたー!最近のお気に入りのペンで採点してあげよう。」
「いや何様だよ」
「臨時の家庭教師サマだ」
「……まぁ、この程度の飯代で済むんだからいいもんだ」
「あ、すみませーん。追加で注文おねがいしまーす」
『0からの』
小麦色の肌、背の割に勝手に伸びていったスラリした手足。小ぶりな鼻と対照的に何故か大きな瞳。
「部活とか、運動とか熱心にやってるタイプ?」
「あーいや、趣味が忙しくてですね。アハハ」
「とかいって〜わかった!めっちゃ陽キャっぽいし、アウトドアとかやってんだ?」
「おにーさんこそ、よくやってるんですか?」
「わかる〜?実はねぇ」
知るか。
早く帰らせてくれ。
ブルーライトと私の太陽が家で待ってんだから。
『太陽のような』
愛する貴方へ。
なぜ、居なくなってしまったのですか。
なぜ、知らぬ他人がそこにいるのですか。
私はいつまでも探しています。
いつまでも。
あたしは、あの人のこと絶対好きだと思ったのにさ、あの人はあたしのこと別にそうでもなかったらしくって、めっちゃむかつく!!むかつかない?ねぇ聞いてる?!
愛してるって、なんなんですかねぇ。
愛とは、博愛、家族愛、友愛、無償の愛、様々ございますから。私は、全てを愛しておりますよ。
ぼくは、まだそれがなんなのか、わかんないや。知りたくは、あるかもしれないね。
俺が今1番愛してるのは、この子達だから。えっ話聞いてってくれる?今日はねぇ綺麗に咲いたんだよ。
お、おれは…推しはいますけど…ね?ら、らぶ……らぶ?!ちょっと勘弁してもらってもいいですか…?
纏まらなかったので徒然なるままに、ということで。
『Love you』
間が空いてしまったので、全て短くはなってしまいましたが。
あのね、こんなに大変だったの。
「可哀想に」「お疲れ様」「大変だったね」「頑張ったね」「応援してるから」「君ならできるよ」
うん、そうなの。
ありがとう、ありがとう。
ぼくは、たっぷり甘えて、生きていく。
『同情』
ミシシファミミシミミファミー
自分が片手でしか弾けないそれをいとも容易く弾きこなす。
鍵盤の上を滑る指。
根元でざっくりと落として、刺身にして。
お醤油か、お塩を少々。
ぱっくりと食べてしまおうか。
『お気に入り』
誰か。
世界か、世間か、アイツらか。
親、先輩、上司、後輩、クラスメイト、エトセトラ。もしかして、自分自身?
いつまでも告げられず、いつまでも満足しない。
何時までも、目的もなく、ただ瞼は閉じずに起き続ける。
これは、報復だ。
『今日にさよなら』
「おじいちゃん!お誕生日おめでとう!」
可愛い可愛い孫が、少し危なっかしい足取りで、両手に包みを抱えたまま走ってくる。
「ありがとうねぇ」
零れる笑みで、余すことなく感謝を伝える。
「今開けてよ!」
急かされながら解いていくと、クレヨンでいっぱいに満たされた画用紙、暖かそうな帽子、つたない文字の手紙。あとは、と。
「なんだい、これは」
「それは、オマケ」
後ろから遅れて入ってきた子どもたちがメガネを真っ白にしながら付け加えた。
「ぼくがね、貼ってあげるんだ!!」
『枯葉』
他人と比べていいことなんて何も無い。
誰よりも綺麗だとか、誰よりも好きだとか。誰よりも頑張ってるとか、誰よりも愛してるだとか。
みんな誰かからそう思われたくて、誰かの唯一に、No.1になりたくて、でもなれなくて、苦しんで、もがいている。
人と比べずに生きていける人間なんて居ない、とも思う。
長所短所は、表裏一体、貴方だけのもの。
とはいえそれもやっぱり、どこかで何かと、どこかで誰かと比較して生まれた言葉なんじゃなかろうか。
ならばその、誰よりも、って言葉を他人から欲しがる前に、自分でその言葉を自分に贈った方がいい。
ほんとうに?
それはそいつにとって、誰よりも頑張れてない、誰よりも優れてない己への、
あまりに尖ったナイフだってことを気づいていない、それが分からない君だから言えるんじゃない?
『誰よりも』