uni。

Open App

閉じた目蓋越しにすら感じる、穏やかな光。
髪を揺らす軽やかな風にのって、鼻腔をくすぐる春の匂いすらも通り抜けていく。

深呼吸して、ゆっくりと目を慣らしていけば、眼前に広がるのは見たことの無い景色だ。

そろり、と足を踏み出せば、これが地面を踏み締める感触なのだと教えてくれる。

慣れない感覚に始めは恐る恐る、段々と早く、速く、疾く、駆けていく。

何時までも、何処までも、行けるのだ。

「転ばない!痛くない!」

思わずそう叫んで、ハッとした。

もう、自由なんだ、と。
自分を縛る管も針も大人も先生も家族も友達も、何も無いのだと。


『遠くの街へ』




ねぇ、見て。
聞いて。
感じて。

僕のことを、わたしだけのことを。
彼と、あの子と、あいつと、あの人と、そして他人と比べて、俺を選んで。
誰よりも、私がいいのだと。

音で、言葉で、空気で、顔で、仕草で、行動で、結果で、伝えて。
慎ましやかに、大人しく、控えめに、なんて、意味が無いのだから。
誰よりも、何よりも、君自身よりも。あなたの言葉で。

---のことを愛してくれ。


『欲望』

3/1/2023, 5:02:12 PM