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2/14/2025, 4:34:56 PM

ありがとう


いつだって君の隣に相応しいように、努力してきたつもりだ。でも、君には通じない。

私ばっかり助けられてるね。ありがとう──⋯

かつて君が僕に言ってくれた言葉。
違うんだ。
本当は…本当は、僕の方が救われていたんだ、君に。
だから、そのセリフは僕が言うべきなんだ。

でも言葉にしたら…安っぽくなりそうで。
臆病だから僕は君に言えずにいるんだ。
感謝を伝えられるべき人間じゃないんだ。
''有難う''なんて、軽々しく言えない。言わない。
そう思っていたんだ。
君が消えるまでは。

どうして言わなかったんだろう。たった一言を。

2/14/2025, 8:15:03 AM

そっと伝えたい


11時。いつもの時間。この時間にあの人はやってくる。
果たして、その時はきた。うぃーんと図書館のドアが開く音がする。
(きた...!て、ハァァァン?!福原ぁぁ!?おま、なに富山先輩の隣歩いてんだ!!変われ!!)
憧れの人、富山先輩はあろうことか自分の嫌いな福原と図書館にやってきた。絶対に嫌がらせ目的である。わかりきっている。福原と目が合った。
(お前がいていい場所じゃねえ。か、え、れ、!)
アイコンタクトで話しかけてみる
福原は一瞬目をぱちくりさせたあと、ニヤッと笑って目を逸らした。
「あ、あっちの席空いてますよぉ〜」
なんて猫なで声出しやがって!どうにか追い出したい。
しかし、富山先輩の前では猫かぶっているため、あいつ単体に言わなければ自分のイメージダウンになりかねない。どうしたものかと悩みながら席に座る二人を目で追う。
(あいつぅ───!隣に座りやがった──!)
しかもなかなか席を離れないようだ。耐えられないのでもういっその事話しかけに行くことにする。
「あれぇ─?富山先輩じゃないですか!」
福原が舌打ちするのが聞こえる。同じ気持ちだよ。怒りを抑えながらあいつの方を向いた。
「あ、福原もいたんだ」
不意打ちで話しかけると予想外だったのかぽかんとアホ面を晒していた。ふはは。写真撮りたいわ。そのまま福原の隣に座る。状況が掴めない福原にほくそ笑みながら、そっと耳打ちした。

「─────⋯鼻毛でてるよ」

ばっと福原が口元を手で隠した。そのままトイレの方向を指差すと、悔しそうな顔をしながら走っていった。
嘘なんだけどね。ははは。
席が空いたので富山先輩のほうに詰めて座る。邪魔者はいなくなった。これで安寧の地は保たれた…と謎の達成感が生まれていたところ、富山先輩は急に走り去ったあいつを心配しているようだ。
「大丈夫ですよ。鼻血でも出たんじゃないですか。それより、先輩、この前言ってたおすすめの本なんですけど⋯⋯」

悪く思うなよ。最小限の働きで最大の利益を得る。それが自分のやり方なのだ───

2/13/2025, 9:07:11 AM

未来の記憶


手を伸ばした。なぜかそうしなきゃならない気がして─

ふと目が覚めるとベッドの中だった。なんだか夢を見ていたような気がするが、思い出せない。

頭はふわふわとしていたが、はっきりとした自分の意思があった。あの子のもとへ行こう。そうしなければならない。

あの子はきっと私を待ってる。私が手をさし伸ばすのを。どうして今まで躊躇していたんだろう。理由なんかいらないのに。ただ、私はあの子に笑って欲しいだけなのに。

いま、会いに行くよ。私はもう''知っている''から。

2/10/2025, 12:57:20 PM

『星に願って』


───それをもらった時、星だと思った。

(どうしよう…どうしよう…どうしよう…!)
小学一年生の立川そらは、近所でやっていた小さなお祭りに母親と来ていた。しかし、人混みの中で繋いでいた手は離れ、そらは言いようのない不安に襲われていた。
まわりは人で何も見えない。このままずっと母に会えないかもしれないという恐怖で、今にも泣き出しそうだった。そんな時だった。そらはふっと小さな手に引っ張られ、人混みを抜けた。
「だいじょうぶ?」
手を引っ張っていたのは、そらと同じくらいの女の子だった。ひらりとしたワンピースを着ており、肩で切りそろえられた髪は夜空に溶け込みそうな深い色をしていた。
驚きのあまり、何も言えなくなったそらを見て女の子はなにかを取り出し、そらの手のひらにもたせた。

「だれかが助けてくれるのを待つだけじゃだめだよ。勇気をだして」

そらは手のひらの上にあるものに視線を落とした。
初めて見るものだ。ころんとしているのに無数のとげがあって…きらきらしているように見える。
「星みたい……」

顔を上げた時にはもう女の子はいなかった。

───勇気をだして

女の子の言った言葉が反芻される。そらはぎゅっと手を結び、大きな声で母を呼んだ。

声を聞きつけた母ともう一度手を繋ぎながら、女の子にもらったものを見せた。金平糖というらしい。
そらには勇気をくれ、願いを叶えさせてくれた星のように思えていた。
その星は、眩しいぐらいに甘い味がした。

願っているだけではだめ。そうわかっていたが、そらはもう一度、あの流れ星のようなあの子に会いたいと願わずにはいられなかった。もう会えないような気がしていたけれど……。

手のひらの星はただきらきらと光っているようだった。

2/9/2025, 12:56:57 PM

『君の背中』

「ね、ちょっとあいつを困らせてみない?」
放課後、ノートを忘れて教室に取りに行ったところ、中から声がした。クラスメイトがまだ数人残っていたらしい。話しかけられているのは、畑中ゆずだった。彼女は前回のテストで2位をとっており、今回のテストこそ1位を取ってやると私に宣言しにきた。

忘れたノートは試験範囲をまとめたものだった。
十中八九、ノートをどうにかされるんだろうなと思いつつ、話しかけられていた畑中ゆずはなんと答えるか気になって廊下で聞き耳をたてていた。

私は勉強が好きだ。でも、人付き合いは苦手で、今回のように嫌がらせされるのも珍しくない。そんな中、畑中ゆずは、私に話しかけてくれた稀有な人だった。周りが私と距離を置く中で、あの人だけは…。

変に心臓がドクドク波打つのを感じながら待っていた。
不意に畑中ゆずの声が聞こえて神経が集中する。
「……私はあの人の後ろにいたいわけじゃない。今回のテストこそ1位をとるつもり。」
「なら…」
「かといって、あの人を引きずり下ろしたいわけでもない。
私はね、あの人と向き合っていたいの。あの人と対等の場所に行きたい。正々堂々戦って、そこで勝ってようやく私は自分を誇れる。そうでしょ?
私は、気持ちだけはいつも誇り高くありたい。だから、卑怯な真似はしたくないかな」
カタンと椅子から立ち上がる音がして、こっちに向かってくる。見つかってしまう……!隠れなきゃ……。

・・・

(はぁ、最悪。せっかく残って勉強してたのに、やな気分になった!!)
不機嫌さを隠しきれないまま、つかつかと歩き廊下へのドアを開けた。
「……っ!」
驚いたことにそこには学年1位の冴木あすみがいた。いつから話を聞いていたのだろうか。
「ああ、お疲れ」
何事も無かったかのように一言だけ言ってその場を去ろうとした。
「まって…!」
不意に冴木あすみが呼び止める。
「え?」
「あの、さっきの言葉…う、嬉しかったです!
私も、正々堂々、あなたと向き合っていたい…。次のテストも1位をとりますから…!」
顔を赤くしながら一生懸命伝えようとしているのが伝わる。追いかけてるのは私だけかと、見えているのは背中だけかと思っていた。違ったのだと今ならわかる。
「言ってくれるね。今回は私だよ。⋯ふふ、私たち良いライバルになれそうだね」

・・・

言った…!言えた!こんな機会でもなければ、私は勇気を出せなかったかもしれない。そう思うと、あのクラスメイトにも感謝しなきゃかな。
ずっと憧れていた。誰とでも仲の良いあなたに。
あなたは私を評価してくれていたけれど、私の方こそあなたには及ばないちっぽけな存在だった。追いつけないと思っていた。
でも、あなたは私をライバルと認めてくれた。だから…

もうその背中を追いかけたりはしない。
背中を向けられるような存在にはならない。
向き合っていたいから。ただひとりのライバルと。

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