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『星に願って』


───それをもらった時、星だと思った。

(どうしよう…どうしよう…どうしよう…!)
小学一年生の立川そらは、近所でやっていた小さなお祭りに母親と来ていた。しかし、人混みの中で繋いでいた手は離れ、そらは言いようのない不安に襲われていた。
まわりは人で何も見えない。このままずっと母に会えないかもしれないという恐怖で、今にも泣き出しそうだった。そんな時だった。そらはふっと小さな手に引っ張られ、人混みを抜けた。
「だいじょうぶ?」
手を引っ張っていたのは、そらと同じくらいの女の子だった。ひらりとしたワンピースを着ており、肩で切りそろえられた髪は夜空に溶け込みそうな深い色をしていた。
驚きのあまり、何も言えなくなったそらを見て女の子はなにかを取り出し、そらの手のひらにもたせた。

「だれかが助けてくれるのを待つだけじゃだめだよ。勇気をだして」

そらは手のひらの上にあるものに視線を落とした。
初めて見るものだ。ころんとしているのに無数のとげがあって…きらきらしているように見える。
「星みたい……」

顔を上げた時にはもう女の子はいなかった。

───勇気をだして

女の子の言った言葉が反芻される。そらはぎゅっと手を結び、大きな声で母を呼んだ。

声を聞きつけた母ともう一度手を繋ぎながら、女の子にもらったものを見せた。金平糖というらしい。
そらには勇気をくれ、願いを叶えさせてくれた星のように思えていた。
その星は、眩しいぐらいに甘い味がした。

願っているだけではだめ。そうわかっていたが、そらはもう一度、あの流れ星のようなあの子に会いたいと願わずにはいられなかった。もう会えないような気がしていたけれど……。

手のひらの星はただきらきらと光っているようだった。

2/10/2025, 12:57:20 PM