ひらり
ひらり、から何が連想されるだろうか。
私は、花びらが落ちてくる様子や扇子なんかを持って舞っている人を思い起こす。
しかし、ひらりというのは空気の動き、もしくは速度を表していると考えることもできる。
なのになぜ、空気が連想されてこないのだろうか。
それは、空気とは目に見えないものであり、空気に合わせて動いてくれる何かがないと可視化できないものであるからだと私は考える。
つまり、空気よりも空気を感じさせる何かが重要視されてしまうということ。
空気とは、それがなければ生きていけないものばかりであるのにも関わらず、存在が意識されていないものだ。
ひらり、という言葉でさえ空気がなければ生まれていないかもしれないのに。
誰が空気を思い起こすだろうか。
ひらりという言葉から哀しさが伝わってくるようだ。
こちらを見て、と。
君と見た虹
「...眩しいな」
隣に立つ君は、そうだね、と空を見ながら言った。
何に対して言ったのかは自分でもよく分からなかった。
ただ、目の前にひろがる虹は綺麗に輝いていた──
あなたは誰
「あんた、誰だっけ?」
一世一代の告白は、不発に終わった。
誰、だって?
おいおい、クラスも委員会も同じだろーがよ。
なんてわざとぶっきらぼうな言い方で頭の中で文句を言うが、実際は涙をこらえるので精一杯。
「じゃあ、俺行くから」
仲良くなれたと思ってたのは、自分だけだったみたい。
私は、あの人のまわりのその他大勢にすぎず、あの人の視界に入ってなかったんだ。
ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう。
─────
「あんなやつ、いたっけ?」
クラスのざわざわする声が聞こえる。
いいや、聞こえない。気にしない。私は私だ。
1人の男子生徒が私に近づいてきた。
「あれぇ、イメチェン?可愛くなってんじゃん。今なら俺のグループきていいよ?」
かかったな。今更ながらなんでこんなやつに私は引っかかったんだろうか...。私の好きだったあの人は、もういない。私は、こんな人知らない。私はできるだけ嫌味ったらしく、言ってやった。
「───あなた、誰?」
輝き
その人は、画面越しでもわかるくらい輝いていた。
はじめは目立つなあとか才能あるんだなあとしか思っていなかった。自分とは違う世界で生きている人だと。
でも、いつしかその人を追うようになっていた。その人を知ってしまった。努力を、挫折を、勇気を。
憧れるってこういうことなんだな、と初めてわかった。
遠くにいるとわかっているのに、手を伸ばさずにはいられない。少しでも近づきたいと思ってやまない。
あの人なら……
自然と善い行いをするようになった。嫌いな勉強もやるようになった。何でも一生懸命取り組もうと思うようになった。あの人のファンとして、恥ずかしくない人になりたいと思うようになった。
「最近、なんだか生き生きしてるね?」
そうだね。いつの間にか、あの人の輝きにあてられて光りはじめたみたい。
私の中にも...生まれたんだ。輝きが。
時間よ止まれ
時間が止まればいいなんて、本当にそうかな?
でも、もし──止まってほしいと切実に願っている過去の自分がいたら、迎えに行ってあげたい。
こんなに楽しい未来が待ってるのに止まってていいの?
時間が止まれば、その先の未来が捨てられるのと同じ。
時間が進んでしまうのを恐れなくていいよ。
私達には進んでいく時間を、未来を楽しむ才能がある。
限られた時間の中で生きていると、取り戻せない失敗をすることもある。迎えたくない未来を知ってしまうこともある。怖くて立ちすくむこともある。それを許して貰えない理不尽にも会う。
でも、最高の瞬間が更新されていくこともある。
止まるなんて、もったいないよ。
今この瞬間だって変わっていく自分をもっと楽しもう。
時間よ、止まってくれるな。
私達をさらなる未来へ連れて行ってくれ───