バスクララ

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2/3/2025, 12:59:13 PM

あんな悲しい思いはもうしたくないから、大切な人を作らないと決めた。
だから人に厳しくして、わたしという存在を怖いものだと、近寄らない方がいいとアピールしてきた。
その甲斐あって、誰もがわたしを遠巻きにしていた。
『あの魔法使いの女の子はおっかない』と、その噂はいろんなところに轟いていた。
なのに今のパーティはわたしのことを気にかけてきて、あまつさえわたしのことを知ろうとしてくる。
最初はもちろん突っぱねた。そんなこと知っても何もならないから。
でも彼らはめげずにしつこくわたしを知ろうと、わたしの心を覗こうとしてきた。
『あなたのことをよく知りたいの』『君って本当は優しい子だよね』『旅慣れてるし戦い慣れてるけど、いつから旅をしているの?』
……うるさい。うるさいうるさいうるさい!!
ある日我慢できなくなったわたしは彼らに怒った。
杖だって振り回したし、魔法だって放った。
これでやっとみんなわたしに興味がなくなる。そう思っていたのに、一人が悲しい目をしてこう言った。
『君は……とても悲しい体験をしてきたんだね。
だから誰とも仲良くしないんだね……』
それを聞いたみんなは同じように悲しい目をしてわたしを見た。
そして最初に悲しい目をした人がわたしの頭を撫でた。
いつもならやさしくしないでと突っぱねられるのに、なぜかその時だけは涙が溢れて止まらなかった。
だけど、いつまでも甘えているわけにはいかないからその人を突き飛ばしてわたしはその場から去った。
だってわたしは一人ぼっちがお似合い。
そうよ、一人ぼっちでいいの……

2/2/2025, 12:03:20 PM

『親愛だったあなたへ

あなたのことだからたぶん私からの手紙なんて読まないとは思うけど、それでいいわ。
私があなたに手紙を送った理由、それはあなたが救世主になるチャンスをあげるため。
あなたは私を殺して、これで世界が救われた。これで人類の敵はいなくなったと思い込んでいるはず。
でもねえ、実はそうでもないの。
あなたが溺愛している妹……。確かあなたは拾った子だって言ってけど、あの子本当は私の娘なの。
私の血を引いているから、そう遠くない未来には私と同じように異形の怪物に変身し、本能のまま、欲望のままに世界を蹂躙するでしょう。
でも今ならまだ間に合う。
あなたの妹を殺しなさい。そうすれば本当の意味で
この世界は救われる。
治療も特効薬も無いことなんてあなたはとっくにわかりきっているでしょう?
私が人類の敵だとわかった途端、態度を変えて私を殺そうとしたんだもの。妹を殺すことぐらい簡単よね。
あの世から娘に会えるのを楽しみにしているわ』

残された手紙にはそう書いてあった。
差出人はかつて兄と仲良くしていた人。
……ああ、兄がこの手紙を読んでいたなら。
それか私がもう少し早くこの手紙を見つけていたならこんな結末にはならなかったのに。




2/3 追記
テーマ、「残された手紙」だと思ってたら
「隠された手紙」だったのですね……
……うひー、やっちゃった!

2/1/2025, 11:35:33 AM

「バイバーイ! 元気でねーー!!」
 お迎えの車の窓から顔を出して手を振っている元気な子どもの声に負けないくらいの声量で私もまたねー! と返す。
「ちゃんと歯磨きするんだよーー!!」
 言われた言葉に思わず吹き出しつつ、わかったー!
と返して手を振る。
 やがて車は道を曲がって見えなくなり、私は手を振るのをやめて息を吐く。
「今生の別れかよ」
 私の呟きに隣で戸締まりの用意をしていた先輩が吹き出し、笑いながら言った。
「また明日も会えるのにねえ」
 私は保育士、あの子は年長さん。
 ちなみに今日は火曜日。
 もうじき卒園だけど、まだ2月だ。それまでは病気とかにならない限り会える。
 でもあっという間なんだよな〜、こういうのって。
 まあそれは置いといて。今日の保育業務おしまい!
 お掃除して戸締まりちゃんとして帰りましょ。

1/31/2025, 2:04:17 PM

 小高い丘にある遺跡を歩いていたら急な雨に降られ、屋根のあるところに身を寄せる。
 しばらくその場で時間を潰し、雨がやんだのを見計らって外に出ると思わず息を飲んだ。
 そこには大きな虹が架かっていて、こんなにすごいのを見たのはいつぶりだろうとつい思ってしまうほどだった。
 すると後ろからすごいすごい! と子どものはしゃぐ声が聞こえた。
 振り返ると顔のよく似た男の子と女の子が目をキラキラと輝かせて虹を食い入るように見ていた。
 双子だろうか? しかし男女とは少し珍しいな。
 この辺りの村の子だろうか。
 そんなにしっかり彼らを見ていたわけではなかったが、俺の視線に気づいたのか二人が同時に俺の方を向いた。
 そして不思議そうに首を傾げ、二人で何かこそこそ会話した後、女の子が俺に声をかけた。
「あ、あの……旅人さん、ですか?」
「ああ。そうだよ」
「わぁ……! あの、どうして旅をしているの?」
 旅の目的か……と思案する。
 いろんな人と出会うのは楽しい。だがそれ以上に好きなのはやはり……
「まだ見ぬ景色を見たいから、だな」
 そう言うと男の子が虹を指差して、あれもそうなの!? と興奮気味に話す。
 俺が頷くと男の子も女の子も虹を見た時と同じくらい、いやそれ以上に目を輝かせ俺にあれこれ質問してきた。
 そして別れ際に自分たちも旅人になると宣言して、村へと帰っていった。
 もしかしたら数年後に旅の途中で二人と出会うこともあるだろうか。
 その時が楽しみだな。

1/30/2025, 12:08:53 PM

笑っている君。
泣いている君。
喜んでいる君。
怒っている君。
君と共に過ごす時間が増えるほど、まだ知らない君が僕の前に現れる。
今日の君はどんな君だろうと、いつも楽しみにしているんだ。
どんな君でも僕は君のことが大好きだし、君を深く知ることでより君の虜になっていく。
いつか君と家族になりたい。
それくらい僕は君を愛している。

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