秋の訪れ
モノクロの世界を生きている。
心が弾む音楽やおもしろい小説、美しい絵画や身を焦がすような恋に出会うとき、世界は色付いて見える。
色付いた景色も、モノクロの世界も、永遠なんてないけれど、終わりが来るまで旅は続く。
モノクロの世界の中で、出来れば色付いた景色の連続の中を生きていたい。
近頃は肌をかすめる風が心地よく、こんなセンチメンタルなことを考えるなんてもう夏ではない証拠。
季節は巡り、大好きな秋が来たようだ。
涙の理由
私が落ち着くまで理由を聞くことはなく、
あなたは温かいコーヒーを淹れてくれた。
カップとあなたの気づかいが温かくて、
本当はコーヒーが苦手なことは黙っておいた。
今日の涙も、紅茶が好きなことも、
いつか言えるくらいの間柄に、なれるといいな。
パラレルワールド
毎日同じことの繰り返しに、
何の疑いもなく暮らしていた。
ところがここ数日、隣にいる親友に
どこか違和感を拭えない自分がいる。
あの子に何かが起きていて、
私だけが気づいているのだとしたら...
私は思い切って親友を問い詰めた。
「気づいちゃったんだね」
覚悟していた返事に戸惑いはなかったが、
またしても違和感を感じた。
あ...そうか。
そういうことだったのか。
この世界の違和感は、私自身だった。
時計の針が重なって
「ねえどこ?どこにいるの!」
君の声が聞こえた。
決められた時刻を刻んだ瞬間、
震える君の手を取って重ねる。
「会いたかった。がんばったね。」
めいっぱい抱きしめると、
さっきまで氷のように冷たく
青白かった君の頬に赤味が差してゆく。
「さ、僕と一緒に」
僕らは虹色の架け橋を渡り始めた。
これからはもう、何にも怯えることはないんだよ。
cloudy
曇りの日は苦手だ。
どんよりした空を見ると
気分までどんよりしてくる。
体もなんだか重だるい。
ただ一つ救いなのは、
教室で友人達と談笑している彼女の笑顔が
僕には一筋の光のように思えることだ。