既読がつかないメッセージ
君とのトークルームを
開いては閉じ
開いては閉じ
この2時間で何度繰り返しただろう。
永遠のように長く感じるこの時間...
様々な妄想が頭をよぎる。
ま、きっと残業だろう。
飲みに誘われて断れなかったとか。
具合、悪くなったとかじゃない、よな。
まさかどこかで事...
あ〜〜〜、いかんいかん
どんどん悪い方へ考えてる。
つい先月まで一人最高!と思っていたのに
一体俺はどうしちまったんだろう。
“ピロン”
「返事遅くなってごめんなさい!
バッテリー忘れて充電切れてました!」
「お疲れ様!
謝らなくていいよ、全然大丈夫^^」
どうかしちまった自分に
思わず自分で笑ってしまった。
秋色
「先生、葉っぱのおまじない知ってる?」
僕が開く絵画教室に来てくれる君を、
ずっと妹のように思っていた。
僕の知らないおまじないを叶えようと、
肌寒い風に舞ういちょうの葉を
一緒にダンスするように追いかける君が
なぜだか今日はスローモーションに見えた。
紅葉が深くなるように、
その残像は日に日に鮮やかになって
僕の記憶に焼きついてゆく。
いつものいちょう並木が
もはやまるで晩年のモネが描いた
バラの小道のようなオレンジや赤に変わり、
その中で舞い踊る秋色の天使のような君へ
僕はゆっくりと恋に落ちていったのだった。
もしも世界が終わるなら
「聞いて聞いて!あの小説のタイトルなんだっけ、えーっとセカオワじゃなてくて...」
「あぁ、もし終わ?」
「あーそれそれ!あれ映画化するらしくてさ、推しが主演なんだ〜」
「あそうなん?私小説持ってるから貸そっか?」
「マジで!?神!あーでも先入観ない方がいいのかなぁ、悩むー!」
友人との会話は、今日も平和だ。
靴紐
───インターハイ決勝
スニーカーにはアイツの靴紐。
夢はオリンピック出場だと、口癖のように言っていた俺の親友。
今はアイツの夢が俺の夢になった。
必ず優勝するから、見とけよ...!
結んだ靴紐に目配せして、
俺は走り出した。
答えは、まだ
幸せへと向かうためには
正解がわからない選択を
いくつも迫られるけれど
君の手さえ離さなければ
きっと答えは、まだ
この手の中にある。