予感
僕は昔から勘が鋭かった。
雨や地震がなんとなくわかってしまったり、
学校の担任や職場の配属先、
妻との出会いや友人の別れ話など、
いいことも悪いことも、
僕がなんとなく予感したことは
外したことがなかった。
あの瞬間までは──
テーブルに置かれた離婚届を見て、
僕は最初、何が起こっているのかわからなかった。
なんの予感もなかった。
額と手のひらにはじんわり冷たい汗が滲み、
体は鉛のように重く、床に沈み込んでいきそうだった。
この時の僕は、それが現実なのか夢なのかの判別さえつかないほどに狼狽えていた。
これが、これから始まる予想のつかない物語の序章にすぎないとも知らずに──
消えた星図
図書館で整列した背表紙を眺めながら、
ふと気になったタイトルの本を手に取った。
消えた星図...ミステリー小説かな。
表紙をめくると、何か白いものが床に落ちた。
「わたしをさがして」
5センチ四方ほどの折り畳まれた小さな紙に、
青いペンで書かれたか細い意味深な言葉。
僕は寒気がして、すぐにその紙を挟み直し棚に戻した。
その夜から、
世界中の星が夜空から消えた──
どこにでもいる大学生の僕が、
失われた星図を探し出し、
夜空に星を取り戻す壮大な冒険が、今始まる。
梨
連絡しても梨の礫だった幼馴染が、
大量の梨を持って突然私の前に現れた。
「連絡くれてたのに梨の礫でごめん」
...だから梨なの?
「うん。結婚しよ」
なんなの昔からほんと...
こんな勝手なやつ、ついていけるのは
私ぐらいしかいないっての!
LaLaLa Goodbye
「昨日あのドラマ見た?」
「見た見た!もー嘘だって気づいて〜!」
「ほんとだよぉ、このまま別れちゃうのかなあ」
「次最終回でしょ?まだどんでん返しがあるかも」
「えーだといいな〜!」
昔、親友とそんな会話したっけ。
まさか私が、あのドラマみたいな展開を迎えるなんてな。
私の人生には、どんでん返しはあるんだろうか。
LaLaLa Goodbye...
頭の中で、あのドラマの主題歌が流れた。
どこまでも
どこまでも広い心の君に甘えて
どこまでも愚かな僕は君を傷つけた
どこまでも続く空白は虚しく
どこまでも青い空の下で一人
どこまでも君の幸せが続くことを願った