霜川菜月

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秋色


「先生、葉っぱのおまじない知ってる?」

僕が開く絵画教室に来てくれる君を、
ずっと妹のように思っていた。

僕の知らないおまじないを叶えようと、
肌寒い風に舞ういちょうの葉を
一緒にダンスするように追いかける君が
なぜだか今日はスローモーションに見えた。

紅葉が深くなるように、
その残像は日に日に鮮やかになって
僕の記憶に焼きついてゆく。

いつものいちょう並木が
もはやまるで晩年のモネが描いた
バラの小道のようなオレンジや赤に変わり、

その中で舞い踊る秋色の天使のような君へ
僕はゆっくりと恋に落ちていったのだった。

9/20/2025, 9:35:57 AM