駄作製造機

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11/18/2023, 7:17:28 AM

【冬になったら】

冬になったら、必ず思い出すことがある。

自分でもバカな別れ方をしたと思う。

12月23日。

クリスマスイブの前日。
私は彼氏を振った。

理由は、、ない。

ただ、好きと言われて何となく付き合っただけ。
気持ちが舞い上がってOKしてしまっただけ。

クズな私なりに考えた、別れの仕方。
LINEで告白されたから、LINEで別れよう。

みんなも悪いんだよ。
わーわー茶化して、私にストレスを与えて。

だから、、嫌なんだよ。友達なんて。

そのうち、付き合うのが何かわからなくなった。

目の前の彼が、気持ち悪くて、吐き気がして、視界に入れたくなくて。

でも、別れてみて気づいたこともある。

ストレスからは解放されたけれど、別れをLINEで告げた時、涙が出た。

何でだろう。
考えてもこればかりはわからない。

私には難しいかったんだ。
誰かと付き合うことが。

もう一つ、気づいたことがある。

こんな私を好きでいてくれる人は、あの人しかいなかったんじゃないかなぁって、時々思うこと。

まだまだ人生は長いけれど、私は早めに逝きたい。
世間が怖い。老いる体を見るのが怖い。

だからこそ、

私を好きになってくれた人は、あの人しかいないのでは?

頭の中がそればっかりになって、ちょっとだけ、後悔してる。

冬になると、カカオ80%ほどのビターチョコレートの様な苦い思い出が、蘇る。

※私の実話です

11/16/2023, 2:19:13 PM

【はなればなれ】

『患者は10代少年と20代男性!互いに頭部損傷意識あり!男性は上腕部粉砕骨折、少年は肋骨折!』

的確な症状を伝えながらストレッチャーを2つ転がしながら救急治療室へと運ぶ。

『元はと言えば兄貴がドライブ行こうって言ったからじゃんか!』

『はあ?!お前もその誘いに乗ったのがいけなかったんだろ!』

救急治療室では、医師が治療に専念している反面、まるでコメディの様な喧嘩が繰り広げられていた。

『あの、落ち着いて、、動くと骨が刺さっちゃう。』

医師や看護師らが彼らを宥めるが、彼らの喧嘩はますますヒートアップしていくばかり。

『兄貴のせいでこんなになったんだ!』

『ふざけんなお前!運転中に話しかけてきたお前も悪いだろ!』

『2人ともいい加減にしなさい!』

とうとう堪忍袋の尾が切れた医師が2人を怒鳴る。

『、、、貴方たちは2人とも重症です。治療をするので静かにしてください。』

2人は少し落ち着き、それでも2人は睨み合いながら治療をされている。

ピーピーピーピーピーピーピーピーピー

突然、心電図の規則正しい波長が水平線になり、看護師たちが慌ただしく動く。

『ぇ、??兄貴?兄貴!!おい!起きろよ!』

心電図がゼロになっていたのは彼の兄。
やがて弟の方も重症ながらに喧嘩をしたのが原因か、突然意識を失い倒れた。

ーー

目を開けると、そこは薄暗く嫌な空気が漂う場所だった。

『ここは、、?俺、、』

状況が理解できず、しばらくフリーズする。

『あ、、そうだ兄貴を!!』

ガサガサ

何処からか音がして慌てて我に帰り、此処を抜け出すために歩き出す。

兄貴を、、此処が地獄なら、抜け出して兄貴の無事を、、。

地面は何故か薔薇の棘で出来ており、歩くたびに尋常じゃない痛みが足を襲う。
それでも、歩き続けた。

しばらく歩けば、後ろから誰かが近づいている事に気づいた。

ザッザッザッザッ
ザッザッザッザッ

俺が歩くたび、何処までもついてくる。
俺は怖くて恐ろしくてスピードを早める。

後ろにはただならぬ気配があり、振り向けなかった。

ズデッ

足がもつれ転び、棘の中に飛び込む。

『ぃぃっ、、』

早く、、早く立たないと、、。

足音の主はすぐそこまで来ており、俺は流石に死を覚悟した。

でも、中々来ない。
痛む足に鞭を打ち、何とか立ち上がり猛スピードで走る。

少し後ろを振り返る。
黒いサタンの様なデカいナニカが、俺の走っていく様を見つめていた。

そいつは、手に銀の指輪をしていた。

ーー

ピッピッピッピッ

規則正しい電子音。
俺は目を覚ました。

そして先ほどの出来事に恐怖する。

逃げられてなかったら、、どうなっていたんだろうか。
頭には包帯が巻かれており、事故に遭い兄貴と一緒に連れて来られたんだと理解する。

『兄貴は?!』

病室に1人。
兄貴は、、いなかった。

ーーー

霊安室。

そこには、安らかに眠る兄貴の顔が。

『兄貴、、兄貴、俺、、ごめんなさい、、ごめんなさい、、俺、、、謝ってない。俺が悪いんだ。俺が、、運転中に腹痛いなんか言ったから、、心配して、、、ごめんなさい、、ごめん、ごめん兄貴、、目開けろよ、、なあ、、、なあ!兄貴!!』

どれほど呼びかけても、うんともすんとも言わない兄貴の亡骸。

生きてるうちに、あの笑顔があるうちに、伝えたいことたくさんあったのに、、。

『兄貴、、あにきぃ、、うぅっ、、』

冷たく、まるで雪の様な兄貴の手に頬を擦り寄らせる。
ふと、違和感を感じた。

手に指輪をはめていた。
いや、これ自体がおかしいわけじゃない。

あの時、おそらく俺が三途の川らしきところにいた時、あのデカいサタンがつけていた指輪が兄貴の手にはめられていた。

俺は咄嗟に自分の左手の薬指に目を向ける。

兄貴とお揃いで買った銀の指輪。
指輪は途中から滲み出てきた涙で霞み、見えなくなった。

『兄貴、、俺を戻そうとしてくれたんだな。最後まで、、嫌われ者でいてくれたんだ、、。ありがとう、、ありがとう、、兄貴、、。』

力強く、冷たい兄貴の手を温めるかの様に、安心させるかの様に、俺は自分の手を重ねた。

2人の手には、指輪がキラリと光っていた。

11/12/2023, 10:50:12 AM

【スリル】

ザッザッ、、パキッ

暗闇の森の中。
俺は1人歩いてウワサの出るところに向かっている。

この地域のたまたま道に迷っていたお婆ちゃんから聞いた話。

ネットで検索しても何も出て来ない。
だからこそ、マジのやつだと思った。

場所を教えてもらい、森の中を今進んでいるのだ。

しばらく歩いたら、開けた場所についた。
ここか。此処が、、

中々趣のある廃墟。

『、、よしっ』

両頬をバシバシと叩き、俺は廃墟の中に足を踏み入れた。

スプレー缶や缶コーヒーなどの落書きや廃棄などもなく、いよいよ本格味が増す。

真っ暗な廃墟に俺の足音だけが響く。
時々、冬風が吹いて耳が冷える。

オオオオオォオオォ

突然怪物の雄叫びが聞こえ、俺は体を強張らせ立ち止まる。

『え、、何、?』

周りを懐中電灯で照らすも、あるのは闇夜と静寂だけ。

『、、、怖いなぁ、、』

独り言をわざと呟き歩を進める。

ようやく全てを見終わり、意外にも何もなくて安心していた。

『お〜い、、坊や〜』

またまたしゃがれた声が聞こえて小さく声が漏れる。

懐中電灯で前方を照らせば、前にはあの時助けたお婆ちゃんが。

『坊や、此処にやっぱりいたんだね。』
『ああ、お婆ちゃん。うん。俺スリル好きだから。』

人が増えて安心した。
俺は優しい雰囲気を纏うお婆ちゃんを信頼していた。

『そうかいそうかい。私も、、スリル大好きだよ。』

瞬間、俺の胸に鋭い激痛が走った。

次の時には俺の視界には俺を冷たく見下ろすお婆ちゃんが。

『な、、な"んで、、』

息も絶え絶えにそう呟けば、お婆ちゃんは持っていた出刃包丁をポイと投げ、俺に言った。

『私はね、スリル大好きな、カニバリズムなんだよ。ヒャハハハハハハハハハハハハ』

最後に聞いたのは、俺の肉を食べるリアルな水音だった。

『さあ、次は誰を狙おうか、、?』

11/11/2023, 11:35:44 AM

【飛べない翼】

その国では、腕の代わりに翼が生えているのが普通だった。
運送の手伝いのための翼、人を乗せるための翼。

彼らの翼は、いろいろな人のためになっていた。

『せんせー、何でユマーラ君は翼が片っぽないんですかー?』

ここは、バートペル国立学校。
ある教室の授業中、茶化す様な子供の声で授業は止められた。

『彼は、人間とバート族のハーフだからです。』

そう生真面目に答える先生も、少し小馬鹿にした様にフフフと笑う。

教室の中心席。
周りはみんな色とりどりの翼だらけ。
片方ない彼はより一層目立っていた。

『なーなー、あの人間のハーフなんだって?不完全な生き物の血が半分も入ってる!!キッショ!』

バート族は昨年、皇位が変わってから人間を貶める様な国になってしまった。

今まで多種多様で良いじゃないと認め合って過ごす事で安心して暮らせていたハーフのバート族や移住人間族は、すざましいほどの差別を受けている。

半分翼のユマーラも、それの被害に遭っていた。

主に翼がないことを笑われたり、気持ち悪いと言われたり。

『、、、僕も好きでこの体に生まれたわけじゃない。』

帰り道。ぶつぶつ呟いても聞いてくれる友達なんていない。

僕はこの国が憎らしい。
前までは差別なんてなかった。

僕はこの国が許せない。国族も、何もかも。

片っぽだけの拳を千切れるくらいに、血が出るくらいに握る。

僕は、こんな弱い自分にも腹が立つ。

こんな僕を産んだお母さんにも、腹が立つ。

『ただいま。』
『おかえり〜ユマーラ。スコーンあるわよ。』

ゆるふわな頭の母にも、腹が立つ。

『、、、いらない。』

不機嫌に答え、僕はカバンを置いて家から出た。

路地裏をひっそり歩いていると、、

ニャーン

たくさんの猫に囲まれる男がいた。

儚い印象が似合う綺麗な男。
白い髪とまつ毛。伏せられた青い目。

『、、、綺麗。』

咄嗟にそう呟くと、男はゆっくり僕に振り向く。

『君は、、バート族と僕らのハーフ、、だね。』

僕ら。

そう呟く彼の腕には、翼がなかった。

ーーーーー

『この国は、、随分と生きにくくなったなぁ。』

森の小高い丘の上で、何故か僕とお兄さんは座って話していた。

『、、、うん。僕、此処が嫌いだ。差別して、蔑んで。翼は綺麗でも、心が汚い奴らばっかりだ。』

お兄さんは黙って僕の話を聞く。

『僕は、、僕を産んだ母親も嫌いと思っている自分が大嫌いだ。』

丘には心地よく、涼しい風が吹く。

僕の茶髪と、お兄さんの白髪をユラユラと揺らしながら。

『そうだね。豊かでみんなが潤っている綺麗な国だけど、此処に住んでるバート族の心は汚い。』

薄く微笑みながら紅い唇を動かすお兄さん。
何だか絵になっている様で、僕はゴクリと唾を飲む。

『、、ぅ、、ぐぅ、、』

と、突然お兄さんは肩を抑えて蹲った。

『だ、大丈夫?!何処か痛いの?』
『か、、、肩が、、ぐ、、さすってくれないか。』

そんな姿も魅力的だ。
そんなことを頭の片隅に思いながら僕はお兄さんの後ろに周り肩をさする。

『何で肩が痛むの?』
『、、、肩の上、、が。』

上?肩の上は何もないけれど。

『上には何も、、』

その時、さすっていた肩に違和感を感じた。
肩甲骨っていうのかな。その辺りが凄く盛り上がっている。

『これは、、』

僕は咄嗟に自分の翼が生えているあたりを触る。
ボコリと盛り上がった骨。

『、、、何で、、?翼を、、』

僕は恐る恐る痛みを堪えるお兄さんを見る。
お兄さんは息も絶え絶えに言った。

『この、、腐った国には、、自由に飛ぶ翼なんて、、、いらないだろう?、、、俺には、翼なんて、、いらなかったんだ。自由になれない、ただの飾り物なんて。』

そう言って話すお兄さんの顔は、、憂いを帯びた表情だった。

11/10/2023, 1:42:27 PM

【ススキ】

風が吹く秋の夕方。
私はいつものススキの野原へ行く。

手にはスケッチブックと色鉛筆。

いつもの場所に行くと、野原に寝転がる彼。

寝転がっているからか、遠くから見ているからか、彼の姿は幾分か小さく見える。
でも彼は私よりとても大きな体躯をしている。

若いからか筋肉質な体と逞しい腕。

寝転がる彼と、夕方特有の青と紫に染まった色がとても綺麗で、思わず息を呑む。

『お!百合香〜!』

私に気づいたのか、遠くから大声で私を呼ぶ。
私は嬉しくなり、そこにかけて行く。

『優希さん!』

途中でローファーが突っかかって転びそうになるが、慌てて体制を立て直して優希さんの元へ行く。

『大丈夫か?!』

心配してくれる優希さんに頬が緩む。

『今日もスケッチ、よろしくお願いします!』
『おう!』

夕日の中、佇む彼をスケッチするのが私の放課後の楽しみだ。

毎日違う彼を見ることもできるけど、何より魅力的な彼をスケッチブックに納めるのが好きだ。

今日は彼を斜めアングルから見た姿。

まずはアタリから。
鉛筆で大体の情景を描き、そこから鉛筆線を薄く練り消しで消して本描きをする。

『なあなあ、、俺なんか描いて楽し?』
『ん〜?楽しいですよ?ほら動いちゃダメですよ。』

私が注意すると慌てて横を向く彼。

『できました!』
『おー!やっぱりいつ見ても上手いなぁ。』

私と彼が出会ったのは、放課後の教室だった。

いつも片隅で絵を描いている目立たないタイプの私と、忘れ物をしたと教室に戻った彼。

私達はそこで出会い、スケッチを頼んだのだ。

彼の体がとても魅力的だったから。

『よし、これで完成です!』

最後に色鉛筆で色をつけてから絵を渡す。

『どうぞ。』
『おう!ありがとな!』

笑顔でお礼を言う彼にまた胸が締めつけられる。

『じゃあ、私はこれで、、、』

これ以上彼の姿を見てドキドキしていたら心臓が持たないので帰ることにする。

『待って!』

パシリと手を掴まれ、後ろに倒れそうになる。

『え、な、何ですか?!』
『あっ、、ごめん、、』

いつになく顔も赤く、とてもモジモジとしている様子の彼。

『?』

不思議そうに首を傾げると、彼はキリッとした顔になり、私にまっすぐ向き合った。

『あの、、す、好きだ!!百合香のことが!』
『はぇっ?!』

突然の告白。

『返事、聴かせてくれないか?』

シュン、、とした子犬のよう。

『、、私も、、好きです。』

パァッと途端に明るくなった彼の顔。
私達は茜色の空の中、笑い合い、抱きしめ合った。

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