駄作製造機

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【飛べない翼】

その国では、腕の代わりに翼が生えているのが普通だった。
運送の手伝いのための翼、人を乗せるための翼。

彼らの翼は、いろいろな人のためになっていた。

『せんせー、何でユマーラ君は翼が片っぽないんですかー?』

ここは、バートペル国立学校。
ある教室の授業中、茶化す様な子供の声で授業は止められた。

『彼は、人間とバート族のハーフだからです。』

そう生真面目に答える先生も、少し小馬鹿にした様にフフフと笑う。

教室の中心席。
周りはみんな色とりどりの翼だらけ。
片方ない彼はより一層目立っていた。

『なーなー、あの人間のハーフなんだって?不完全な生き物の血が半分も入ってる!!キッショ!』

バート族は昨年、皇位が変わってから人間を貶める様な国になってしまった。

今まで多種多様で良いじゃないと認め合って過ごす事で安心して暮らせていたハーフのバート族や移住人間族は、すざましいほどの差別を受けている。

半分翼のユマーラも、それの被害に遭っていた。

主に翼がないことを笑われたり、気持ち悪いと言われたり。

『、、、僕も好きでこの体に生まれたわけじゃない。』

帰り道。ぶつぶつ呟いても聞いてくれる友達なんていない。

僕はこの国が憎らしい。
前までは差別なんてなかった。

僕はこの国が許せない。国族も、何もかも。

片っぽだけの拳を千切れるくらいに、血が出るくらいに握る。

僕は、こんな弱い自分にも腹が立つ。

こんな僕を産んだお母さんにも、腹が立つ。

『ただいま。』
『おかえり〜ユマーラ。スコーンあるわよ。』

ゆるふわな頭の母にも、腹が立つ。

『、、、いらない。』

不機嫌に答え、僕はカバンを置いて家から出た。

路地裏をひっそり歩いていると、、

ニャーン

たくさんの猫に囲まれる男がいた。

儚い印象が似合う綺麗な男。
白い髪とまつ毛。伏せられた青い目。

『、、、綺麗。』

咄嗟にそう呟くと、男はゆっくり僕に振り向く。

『君は、、バート族と僕らのハーフ、、だね。』

僕ら。

そう呟く彼の腕には、翼がなかった。

ーーーーー

『この国は、、随分と生きにくくなったなぁ。』

森の小高い丘の上で、何故か僕とお兄さんは座って話していた。

『、、、うん。僕、此処が嫌いだ。差別して、蔑んで。翼は綺麗でも、心が汚い奴らばっかりだ。』

お兄さんは黙って僕の話を聞く。

『僕は、、僕を産んだ母親も嫌いと思っている自分が大嫌いだ。』

丘には心地よく、涼しい風が吹く。

僕の茶髪と、お兄さんの白髪をユラユラと揺らしながら。

『そうだね。豊かでみんなが潤っている綺麗な国だけど、此処に住んでるバート族の心は汚い。』

薄く微笑みながら紅い唇を動かすお兄さん。
何だか絵になっている様で、僕はゴクリと唾を飲む。

『、、ぅ、、ぐぅ、、』

と、突然お兄さんは肩を抑えて蹲った。

『だ、大丈夫?!何処か痛いの?』
『か、、、肩が、、ぐ、、さすってくれないか。』

そんな姿も魅力的だ。
そんなことを頭の片隅に思いながら僕はお兄さんの後ろに周り肩をさする。

『何で肩が痛むの?』
『、、、肩の上、、が。』

上?肩の上は何もないけれど。

『上には何も、、』

その時、さすっていた肩に違和感を感じた。
肩甲骨っていうのかな。その辺りが凄く盛り上がっている。

『これは、、』

僕は咄嗟に自分の翼が生えているあたりを触る。
ボコリと盛り上がった骨。

『、、、何で、、?翼を、、』

僕は恐る恐る痛みを堪えるお兄さんを見る。
お兄さんは息も絶え絶えに言った。

『この、、腐った国には、、自由に飛ぶ翼なんて、、、いらないだろう?、、、俺には、翼なんて、、いらなかったんだ。自由になれない、ただの飾り物なんて。』

そう言って話すお兄さんの顔は、、憂いを帯びた表情だった。

11/11/2023, 11:35:44 AM