駄作製造機

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【ススキ】

風が吹く秋の夕方。
私はいつものススキの野原へ行く。

手にはスケッチブックと色鉛筆。

いつもの場所に行くと、野原に寝転がる彼。

寝転がっているからか、遠くから見ているからか、彼の姿は幾分か小さく見える。
でも彼は私よりとても大きな体躯をしている。

若いからか筋肉質な体と逞しい腕。

寝転がる彼と、夕方特有の青と紫に染まった色がとても綺麗で、思わず息を呑む。

『お!百合香〜!』

私に気づいたのか、遠くから大声で私を呼ぶ。
私は嬉しくなり、そこにかけて行く。

『優希さん!』

途中でローファーが突っかかって転びそうになるが、慌てて体制を立て直して優希さんの元へ行く。

『大丈夫か?!』

心配してくれる優希さんに頬が緩む。

『今日もスケッチ、よろしくお願いします!』
『おう!』

夕日の中、佇む彼をスケッチするのが私の放課後の楽しみだ。

毎日違う彼を見ることもできるけど、何より魅力的な彼をスケッチブックに納めるのが好きだ。

今日は彼を斜めアングルから見た姿。

まずはアタリから。
鉛筆で大体の情景を描き、そこから鉛筆線を薄く練り消しで消して本描きをする。

『なあなあ、、俺なんか描いて楽し?』
『ん〜?楽しいですよ?ほら動いちゃダメですよ。』

私が注意すると慌てて横を向く彼。

『できました!』
『おー!やっぱりいつ見ても上手いなぁ。』

私と彼が出会ったのは、放課後の教室だった。

いつも片隅で絵を描いている目立たないタイプの私と、忘れ物をしたと教室に戻った彼。

私達はそこで出会い、スケッチを頼んだのだ。

彼の体がとても魅力的だったから。

『よし、これで完成です!』

最後に色鉛筆で色をつけてから絵を渡す。

『どうぞ。』
『おう!ありがとな!』

笑顔でお礼を言う彼にまた胸が締めつけられる。

『じゃあ、私はこれで、、、』

これ以上彼の姿を見てドキドキしていたら心臓が持たないので帰ることにする。

『待って!』

パシリと手を掴まれ、後ろに倒れそうになる。

『え、な、何ですか?!』
『あっ、、ごめん、、』

いつになく顔も赤く、とてもモジモジとしている様子の彼。

『?』

不思議そうに首を傾げると、彼はキリッとした顔になり、私にまっすぐ向き合った。

『あの、、す、好きだ!!百合香のことが!』
『はぇっ?!』

突然の告白。

『返事、聴かせてくれないか?』

シュン、、とした子犬のよう。

『、、私も、、好きです。』

パァッと途端に明るくなった彼の顔。
私達は茜色の空の中、笑い合い、抱きしめ合った。

11/10/2023, 1:42:27 PM