塵芥 椎歌

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2/11/2024, 12:54:13 AM

あの子は裸のお仕事で
アイツは毎日シャンパンで吐いていて
何故かドヤ顔で
あの人は「仕方がない」と悲しそうに呟いて
でも強くて
奴は人生の大半イライラしていて
正義だと褒め称えられていて
あいつはギャンブル負けても笑ってて
勝ったとまたギャンブルにお金を使ってて
あの子は痣が絶えないまんま怯えて千円を隠してて
1週間後クビになって
そいつは満喫で泣いていて
そのウチ居心地が良くなって
あの人はドレスの女の子の元へ毎日通って
家庭の事は放ったらかし
その奥さんはお薬に夢中で
子どもが泣いているからと怒っていて
青年は髪が薄くなるが財布と預金は増え続けて
子どもを食い物にしていて
あのお医者さんはポルシェに乗って笑ってて
あの子の裸の病気を見る為に高いお金を取っていて
何万人か何億人かの知らない人が
SNSで沢山文字と写真を投稿してて
何万人か何億人かの知らない人が
自ら命を辞めていて
電車の中ではみんなスマホを見ていて
私はウンザリだと下を向く

ふと、顔を上げると
極稀に
本を読んでいる知らない人が居る
妊婦さんに席を譲ってる人が居る

いつか良く見た当たり前の
光景が珍しくなっていて
私の時間軸がおかしいのかと錯誤する

然し極稀なそんな当たり前を
続けている人を見ると安心感と共に
やはり私の時間軸は正しいんだと引き戻される


誰もがみんな馬鹿馬鹿しい事に夢中で
誰もがみんな何かに酔っ払って生きてるんだ

その美酒が無いときっと生きれないんだ
皆も私も


「性」と言う毒にも薬にもなるお酒らしい


そうじゃなきゃ可笑しすぎる
笑劇でもあるまい 世の中と
冬の痛さに嘲笑です

自分が一番可笑しいと
私が一番酔っ払ってると
布団の中大笑いする


サイレンがまた鳴っている


美酒瓶の破片で怪我でもしたのかなと
眠りにつく






題 誰もがみんな
著 塵芥 椎名

2/2/2024, 8:43:30 PM

青が綺麗で
儚くて
今にも手折られそうなその姿に

「私を忘れないで」

なんて言われたら
どんな生き物も愛さずには要られないのです。

「誠の愛」

なんて振りまいて

我慢出来ない生き物に襲われ
貪られたら

毒が回る仕組みも

全部が狡い。

美しい物は汚しちゃいけないんです。

女として貴方を尊敬します。

私の身体にも毒性が欲しいな。

容易く貪られ
しめしめと
苦しむ顔を見て尚、凛としていたい。

ただ、本当に愛する人に出逢ったら
それはそれで哀しいのかもしれない。





題 忘れな草
著 塵芥 椎名

1/26/2024, 8:30:13 PM

0時が
1時になったら

ミッドナイトでは無くなって

嫉妬night.だとか
みっともnight,だとか

布団の上薄着で足を開きながら

応答がnight!と、貴方に恥晒し

恋とか愛は綺麗だなんて
幻想だ、嘘だ

墓を掘り起こすのが好きな
死神の様な、そんな事象だ

0時キッカリに落としたヒールを
拾ってくれないから
何秒後
代わりに死神が私という恥の墓を掘り起こす

私は掘り起こされまいように
何も見つからない様に
焦って土や紙切れや色々を上から被せてしまう

醜悪night.
皮肉night.
寂しくnight.



「大嫌night!」

なんて、うっかり吐いてしまわないように


貴方じゃない誰かの隣で
静かに息を吸って吐く

その「誰か」は、紛れもなく
私の隣に居る私の抜け殻だ

息を吸って吸って吐く

何も無い
今日も何も無い
ミッドナイト
何もnight.


愛してたい。

だけど

きっと最後。





題 ミッドナイト
著 塵芥椎名

1/20/2024, 12:40:34 AM

夜中と早朝の狭間に
君の声が聴こえてからだ

ずっと同じ時間帯に
私は外へ出て君を探す事が日課になった

「寒い」と震えながら探す



最初は大きいカリカリの袋を買った

当たり前に「カリッ」と音を立てながら
沢山食べた


次はコンビニの帰りには缶詰めを買った

当たり前に嬉しそうに盗られまいと
「シャーッ!」と威嚇しながら
ペロリと一缶食べた

ふと、君の体付きをマジマジと見る

「妊婦さんだ…。」

猫の出産に何度も立ち会った事がある私は
すぐ分かった

栄養を摂って欲しいと思った

生命は生命
人間か猫かの違いだけで

尊い生命には変わりなんて無い


「飼ってあげられなくてごめんね」とバイバイする

毎日、深夜と早朝の狭間に
君の元へ通う
時には君を探す
時には君が私を見つけて
嬉しそうに「餌!」と、寄ってくる

警戒しながらも
欲しい物は頂くその野生の心と
決して触らせてくれない
そのぺったりとした毛並み
見透かす様なまん丸い目に、見事に掴まれた

いや、自ら掴まりに行ったのか

毎日君が餌を食べてる時
決まった距離感で
私は君に話しかけた

「待たせてごめんね!」から始まって

日常の事
仕事の事
お母さんだ、という事

「ママ友だね。笑」

涙を流しても
笑っても
君は私をじっと見るか
餌に夢中だった

君に会いに来る人間は私だけではなかった

早朝におばあちゃんが君に会いに来ていた
夜には違うおばさんが君に会いに来ていた

「愛されてるんだなぁ」と安心した


「モテモテですねー。笑」と笑って話しても
知らん顔で凛と餌を食べる君に憧れた


何ヶ月経った頃だろうか
いつしか、いつしかさ、
君の方から私を探してくれる様になったんだ

君は私の事を捉えるのが上手で困ったや

君のテリトリーの近くを自転車で通れば
「にゃー!」と何度か出てきて呼び止められた

いつ私の家を覚えたのか
マンションの外の非常階段の下で
待っててくれた時もあった

いつもの様に自転車で呼び止められた時
いつもの様に私は少しブレーキをかけつつ
「ちょっと待っててね!」と君に言ったのに
駐輪場まで走って
付いてきてくれた日もあった


3LDKのマンションに
1人で住む私の空白を
君が沢山埋めてくれた


それから、彼女はお子さんを二人紹介してくれた

お子さんの分の餌も用意した

そのお子さんが大きくなって…

子どもをまた私に紹介してくれた
もう恒例の儀式となっていた

「もうこれはチュールかな。笑」

と、大袋をスーパーで選びながら
嬉しかった
家族が増えた気がして
1人では無い気がして


あれから5年弱
彼女の子どもも孫もひ孫も夜叉孫も…
いつもの距離感で相変わらず私から会いに行く

猫を飼っても良いと
許可は大家さんから出たけれど
なかなか掴まってくれない
自由気ままな柄違いの君達の胴を
何とか掴もうとするが引っ掻かれる


「ですよねー。苦笑」


野良猫は野良猫の生活やルールが
あるんだろうなと思った

私がこの子達の自由を奪うのは違うんじゃないか。
とも思った

同時に前から自分のこの行為が無責任な事も
私はよく知っていた


それでも
生き延びる術だけは毎日言い聞かせた

「車に気を付けなよ!」
「変な人間が来たら逃げるんだよ」

分かってるのか分かってないのか…
毎日無事を見て安堵する

そして笑う

そんな日々があの日から続いている


カメラロールには彼女の写真から始まって
沢山の子達の写真だらけになった

彼女は姿を消しちゃったけど
彼女の血はまだ続いてるから


寂しくないよ。
でも、でもね、


またママ友話がしたくて
私が鳴く様になった。





題 君に会いたくて
著 塵芥椎名

1/18/2024, 2:59:00 AM

それは穏やかに始まった


25秒、私の鼓動が早くなる

「生」を感じる

鼓動が躍動する

そこに思考も思想も無く

意識は脈打つ心臓へ
そこだけ
ただただ
そこだけを
一刺し釘付け硬直で

私の心臓が何か言いたげに
何かを
何かを
求めて欲して縋ってシタクテ
絡まって解けて
いよいよドキドキする

止まらないでと叫ぶ
平常より赤くなっている
見なくても分かる

私の大切な命と言う臓器が一つ

翻弄される
脳がついていけない
弄ばれている
それを望んでいる

脳もそれを知っている

―苦しい、欲しい、抉られたい―

ピシャリと音が止まった時

やっと頭が働く

ただただ
「綺麗だった」の一言しかなく
それ以上の感想など必要なく


人の心に働きかける唯一の存在

それが芸術なんだと改めて心のドキドキが
教えてくれる

身体が教えてくれる事は多い
それが自身の素直な事実である事も
間違いない


ショパンのピアノに反応する私の身体は
純粋にマゾヒズム

木枯らしは一種の性的倒錯である気がした




Winter Wind-Chopin.




題 木枯らし
著 塵芥椎名

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