いしか

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11/27/2023, 5:55:28 AM

微熱のような感覚って、あると思う?

まぁ、それが実際の微熱だったらそれが微熱の感覚なのかもしれないけれど、私には、微熱の感覚というのはいまいち掴めずにいた。

微熱になったことはあるけれど、その時の自分の感覚は、もうなくなってしまっていて、記憶にもないのだ。


「……恋って、微熱みたいな感覚になるみたいですよね?」

私に話しかけてきたのは、同じ部署の後輩、相良 康史(さがら やすし)

目立つ存在ではないけれど、卒なく仕事をこなし、女子にモテる存在ではある。

「……どうしてそんな事を私に聞くの?」

「佐伯先輩なら、知ってるかな?って思っただけです」

「あんたにとって、私ってどんな女に見えてるの?」

「う〜ん。大人な恋愛をしてそうです」

彼と私は、こうして何気ない会話をほぼ毎日する仲でもある。

そして、後輩だけれど、私の片思いの相手でもある。

もちろん、一方通行だ。

「あのね、言っとくけど、大人な恋愛って呼べるもの、私…してないと思う」

「えっ?!そうなんですか!!

………良かった」

は?良かっただと……?

「ちょっと、何が良かったなのよ?」

「えっ!!あ、口に出てました」

「思いっきり、何なのよもう……!」

その時、私はひらめいた。
そして、すぐに実行した。

「……ねえ、相良……」

「はい、何ですか?」

そういった相良の目の前へ、
私はデスクの椅子から移動する。

もう時刻は夜の8時。
私達以外は退勤している。

「その大人な恋と、微熱みたいな感覚…
あなたが私に教えてくれても良いんだよ?」

私はほんの悪戯のつもりだった。
相良を困らせたかっただけだ。

なのに…………

「………良いですよ」

そういうと、相良は私の両手を優しく持って、自分の腰に回し、その手を離すことなけもった。

私の顔は相良の胸の当たりでぴったりと貼り付き、顔をあげれば、相良の顔が目の前だ。

「………俺が教えてあげましょうか?先輩」

今まで見たことのなかった私の好きな人の少し色っぽい悪戯な表情。

この一気に熱を帯びた感覚が微熱とにているなら、私は今、体感したことになる。

…………やられた………。

私はこの時、完全に落ちた。

相良康史という、一人の男に。

11/25/2023, 9:44:22 PM

太陽の下でといっても、今は夏ほど照りつける痛さの太陽ではない。

丁度よく、心地よく、窓に刺さる日は太陽が低くなってるから眩しくてそれはそれで痛いけれど、そこから伝わる温かさが丁度いい。


「太陽まぶしくないの?」
淹れてくれた珈琲を手に持ちながら、彼氏で今遊びに来ている瀬那(せな)が言った。

「うん?眩しいけど………この心地よさが一番なの……」

私はぬくぬくして少し瞼が重くなってきている。けれど珈琲のいい香りで私は覚醒しつつある。

「はい。珈琲。少しココアも入ってるよ」

「ありがとう。瀬那、珈琲入れるの上手だから瀬那の珈琲飲むの好きなんだ〜」

「あははは、おだてても何も出ないけどね」

「でるよ?」

「うん?何が出る?」

「珈琲〜。美味しい珈琲〜」

「あっ!………まったく」

何気ない二人だけの午前中。

静かで、でも穏やかでぬくぬくして、私は今とっても満たされている。

「……瀬那、」

「うん?なに?」

「……好きっ……」

瀬那はふいを付かれた様に目を少し真ん丸にしながらも、とても可愛い笑顔で笑ったあと俺も…といってキスをした。

太陽の光に照らされて、窓が少し開いていた部屋に風が吹き、カーテンを揺らした。

まるで、白いヴェールの様に………

11/21/2023, 10:02:52 PM

どうすればいいの?

彼女はそういった。

俺は答えた。

何もしなくていい。



だから…俺とさよならして…と。

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浮気や不倫。

ネットやテレビを騒がせる、世間の関心事を集め、叩かれ、粉々にされてしまう。

今は、そんな時代。


俺にとってはどうでも良かった。


俺の身近に降りかかるまでは…。

俺と彼女は3年付き合っていた。自分でいうのも何だけど、仲も良かったと思っている。

そんな彼女だと思っていたけれど、俺の勘違いだったみたいだ。
そして俺は、彼女のことを満たしてあげてはいなかったようだ。

彼女は、他の男性と関係を持っていた。
それは一度ではなく、もう一年も続いていたということも知った。

たった一年?

……俺にはそう思えない。

石を心にぶつけられたように重く、ドシンッとした。


もう、無理だ。


そう思って、俺は別れを切り出した。
寒い、少し雪が降ってきた。そんな日に。

彼女は泣いて謝ってきたけれど、俺は何も感じない。

早くこの時間が終われと思っている。

雪がふり、地面や空気が冷たくなるのと比例するように、俺の心も氷の様に固くなっていく。

冷たく。強固になっていく………。

11/21/2023, 4:45:36 AM

宝物は、大切にしなさい。
そうしないと、壊れてしまうから…。

小さい頃、そう言われたけれど私にはピンと来なかった。

何故か?

……私には、宝物と呼べるものがその時は無かったから。

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「紗雪〜、朝ごはん出来た」

「は〜い。今行く〜!」

「………今日もバタバタしてるね」

「そう思うのなら、起こしてよっ!」

「ごめん。寝顔が可愛かったから」

「思ってもないこと言わないで!どうせ面倒くさいとおもったんでしょ?!」

「…………本音なのにな〜」

私には今、付き合っている人がいる。
彼は在宅の仕事をしている為、家事は殆どを任せてしまっている。
そんな、彼は家事がとっても上手。
……それに比べ、私は今日も起きるが遅かった。

「………昔ね。お母さんが言ったの」

私は朝ご飯を食べながら彼に昔母にされた話をする。

「宝物は、大切にしなさいって」
「うん。よく言うよね」

「……でもね、私、その当時はよく分からなくて。宝物と呼べるものなんてなかったからさ」

「ぬいぐるみとか、お人形とか、そういうおもちゃなかったの?」

「あったけど、それが宝物かって言われたら、違ったの」

「ふ〜ん。」

「………でもね。今は出来たんだよ。宝物」

「……どんな宝物ですか?」

「それは、目の前にいらっしゃいますよっ」

「……………。俺?」

「そう。俺っ!俺の事宝物だから、大事にしないとな〜」

「………(笑)その割には当たりが強くないですか?」

「あたりの強さは、甘えの裏返しです」

そういうと、彼は笑顔で困ったな〜と言った

大人になった私には、宝物がある。
彼が大切で、大事な宝物。

小さい頃の私、その時に分からなくても大丈夫。

今ならちゃんと、お母さんの言ってた事がわかってるから…。

11/20/2023, 5:43:23 AM

キャンドルの火は、どこか頼りない。

そんな頼りなさだから、見る人を癒やすのだろうと思う。
ただ揺らめいて火をだしているだけで、癒やすことが出来るなんて、なんて羨ましいのだろう……。

私は、彼の事を支えることが出来なかった。
出来なかったから、彼は、彼を支えることが、出来る人のところに行ってしまった。

………ずるい。

私だって、ホントは誰かに支えられたかった。彼の事を一生懸命支えていた私を、誰かに肯定してほしかった。
でも、誰も居なかったから私は一人で踏ん張っていたというのに……。

……本当に狡い。
……本当に馬鹿みたい。


もう、私と彼は終わっていた。

関係なんて、崩れてた……。
しがみついても、雪崩みたいに、掴んでは崩れて、掴んでは崩れていく。

私も、もう終わりにしよう。

これで、おしまい。


私はこれから、友達に誘われた合コンに人数合わせで参加する。
素敵な出会い、………なんてまったく気にしていないけれど異性の友達ができたら良いなと思っている。

さよなら、狡い人。
さよなら、最低な人。

さよなら、………愛していた人。

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