冬になったら寒くなる。
冬になったら夜長に拍車がかかる。
冬になったらホットココアが飲みたくなる。
冬になったら……………
貴方のゆくもりがいつも以上に恋しくなる。
カチャッ。
貴方が帰宅した音が聞こえた。
「おかえりなさーい」
「うん。ただいま」
私と彼は、同棲をしている。けれど共同スペース以外は個人の空間で、二人共程よく、干渉せず、お互いがお互いの時間を持てる様にしている。
家事は、まだ色々模索中だ。
けれど、料理が好きな私は、料理だけは絶対に譲らない。
「はい。今日は簡単にハヤシライスでーす。もちろん、ルーにお世話になりました。
…、んで、こっちは手作りのコンソメスープ………といっても、具材を切っただけ〜」
「……こうして作って貰えることが、とても有難いです。いただきます」
「いただきます」
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晩ごはんを食べ終え、洗い物を二人で済ませた後、私と彼はソファーに座り、二人の好きなバライティー番組を見る。
一日のゆっくりできる時間だ。
「……ねぇ?」
「うん?なに?」
「最近、また一段と寒いね。私、寒いの嫌い。……それに、夜が長いから、それもイヤ。心が暗くなりそうで」
「……心が暗くなりそうだったら言って。
抱きしめてあげるから…」
そういう彼と笑いあい、軽いキスをする。
……こういうのを、幸せというのだと思う。
彼の腕に手を回し、彼にピトッとくっつく。
温かい、ゆくもりだ。
「……でもね、」
「…うん?」
「嫌いな冬でも、良いことがあるの」
「何?良いことって……」
「んふふ、こうしてギュッって出来ることっ!」
「えっ?それだけ(笑)」
「それだけじゃないよ。……とっても温かくて、心地いいもの…。これは、冬だからこその特権だよ」
「……そっか、」
「うん!」
「じゃあ、俺も引っ付くかな〜!!」
「わ〜〜!!」
こうして、冬はどんどん深まっていく。
寒さとともに、寒い時しかわからない、ゆくもりを乗せて。
子猫を拾ったら、そいつはとても可愛かった。メスの三毛猫で、名前は「小夏」
真夏に拾った子猫だから、小夏だ。
そして、俺が拾ったのは小夏だけではなかった。
「彰(あきら)君。お弁当作ってきた!」
「💢いらない」
「あっ!ねえ、彰君っ!」
小夏を拾った時は、真夏だったからと言ったけれど、その時は雨が降っていた。
よく聞く、不良が雨の中、捨てられた猫を拾う姿にトキメクとかいうやつ。
俺はそれに当てはまってしまい、同じクラスの林(女子)にみられてしまっていたのだ。
それから今日まで。ず〜っとああやって付き纏われて当たる。
うざったい……。
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「小夏。お前は美人でかわいいし、あんまりにゃーにゃー言わないな……
見せてやりたいやつがいるよ。小夏のこの姿……静かで、大人しくて、かわいい。」
小夏のこの静かさが、俺には心地良かった。
林も、小夏を見習ってくれないだろうか……
「……小夏。あいつ、何であんなに騒がしいんだろう。ほんと、うるさいんだよ。」
「にゃ〜?」
俺は横になった。横になった俺の顔の所に小夏は近付いてきて、可愛い鳴き声を出す。
俺はそんな小夏の頭を、優しく撫でる。
「………うざいし、しつこいし、目障りだなって、思うときもあるけどさ……
……林が俺に話しかける様になってから、クラスの人も、俺に話しかけてくれる様にやったんだよな…」
俺は強面の見た目で、先生にも時たま反抗す。そんな姿を見て、同級生達は距離を取っていたが、明るい林が俺に話しかけているのを最近よく目にする為、無害扱いをされたらしく、少しずつではあるが、クラスの同級生達は、俺に話しかけてくれる。
俺は、それが何だかとても嬉しく思った。
「……ほんとうは、林にも、感謝しなきゃだよな……」
小声でそういったあと、メールがなった。
林からで「こんにちは。晩ごはんなに?」
というくだらないメールを寄越してきたので、さっきのことは撤回しようかと思う俺だった。
また会いましょう。
そういった貴方は、他の人と付き合っている。
狡いと思う。
僕の気持ちを全部さらっといて他の男性と付き合うだなんて…。
女々しいとか、そんな事思ってほしくないから自分の気持ちを抑えてるけど、どうしようもない気持ちなら、まだ僕の心の中で燻ってる。いい加減捨てなければ。諦めなければ。
自分が前に進めない。
狡い貴方は嫌いです。
残酷な貴方は嫌いです。
人の気持ちをもて遊ぶ貴方は嫌いです。
〜♪~♪
聞き慣れた音が久し振りに響いた。
消したくても消せずにいた 貴方の音。
メールを開くと、言葉はなく、ただ音楽のデータが貼り付けてあるだけだった。
著作権、大丈夫だろうか……。
その音楽データを開くと、とても有名で話題になっていた曲が流れてきた。
その曲は、貴方の本音のような歌詞で溢れていて、どうしようも無かった。
「…………ずるい…………。
本当にずるい…………」
僕はスマホを握りしめたまま、自分の気持ちがグラグラになっているのが分かる。
嫌だ。
もう、沢山だ……。
くそったれ…………。
スリルな恋って実際にあると思う?
私はそんなカタカナの軽い恋ではなく、
日本語の様に重い恋をした。
情熱的に。刺激的。
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私には、ずっと好きだった人がいる。
ちかくて、遠くて、でも恋い慕っていた人。
「千佳子(ちかこ)ドライブするか?」
「うん!する!」
私は大学4年生。もう内定を貰っているため、割と時間に余裕がある。そんな私を誘ってくれたのは、私の従兄弟、みえ姉さんの恋人、桂馬(けいま)さん。
私とみえ姉さんは姉妹のように仲がいい。
けれど、みえ姉さんが桂馬さんを連れてきた日から、私の中の何かが音を立てて崩れて、変わったのを感じた。
私は、桂馬さんの事が好きだ。
「大学は?もう単位とか平気なのか?」
「うん。もう大丈夫。」
「そっか、偉いな〜」
私とみえ姉さんは、3つ年が離れている。
桂馬さんも、みや姉さんと同い年だから、
桂馬さんとも3つ年が離れている。
「ねえ、桂馬さん。みや姉さんとは上手くいってる?」
「うん。いってるよ。」
私は、刺激的で情熱的な恋をしていると言ったものの、そんなもの微塵もしてない。
私は桂馬さんの事が好き。
でも、桂馬さんは私の事なんて見てない。
いつか、この寂しさが爆発して思いっきりぶち撒けてしまう時が来るのだろうか?
これから私は、どうなるのだろう。
車の振動に身を任せながら、私はまだみえもない先のことに思いを巡らせる。
好き、好きなのに。
好きです。愛しては、恋い慕ってはいけない人。
飛べない翼になった俺に、お前は何で一緒に居る?
「翼〜!!カツサンドセット買ってきた〜」
「カツサンドセットなんて頼んでねーよ」
「こっちのほうがお得だったんだよ〜!」
そういうと、涼(りょう)は向かい合わせにしている自分の席に腰を掛けた。
「は〜〜!!美味しそうさぁ、食べようっ」
『いただきます!!』
「う〜ん。美味しいね。カツサンドセット」
「……そうだな」
「うん!今日もサッカー部は昼練か〜。大会近いから大変だな〜」
「……そうだな」
俺は、元々サッカー部に所属していた。
高校も、スポーツ推薦で入学をした。中学生の頃、俺にライバルなんて居なかった。
どんな相手もドリブルで突破出来るし、ボールは自分の足に吸い付くみたいだった。
けれど、そんな俺は高校2年生の冬。
これに勝てば年末から始まる全国高校サッカー選手権に出られると言う時に、俺は感じていた足の違和感をおして出場したものの、試合の最後まで持たず、俺は倒れ結局試合は負けた。
医者の診断では俺の足は、もうサッカーの出来ない足になった。
絶望が無かったかと言われれば深く絶望もした。スポーツ推薦で入学したものの、怪我での退部という事で学校まで退学になる事は無かったものの、俺はふつうの生徒になったから授業料は払わなければならなくなった。
けれど、両親は俺に今までありがとうね。と言ってくれた。
「なぁ、涼……」
「うん?何?」
「何で涼は、俺に普通に接してくれる?」
涼はバレーボール部に所属していてもう引退をしている。けれど廻は何だか腫れ物に触るような感じに俺は感じた。特に同じサッカー部の部員には特に感じた。
けれど、涼は今までと変わらない。
ラフに
普通に
接してくれる。
「普通もなにもないよ。何で変わる必要あんの?俺は翼の友達だろ?」
「……そうだ」
「そうだよ。あっ!そうだ、今度さ、軽くで良いからフットサルの助っ人してくれない?少し位なら平気なんでしょ?父さんの入ってる草野球ならぬ、草サッカーなんだけど」
「………いいよ。少しだけなら、平気だから」
「ほんとっ!!やった〜。父さんのに伝えとく」
涼、ありがとう。
俺は恥ずかしくて言葉に出来ない言葉を心で何度も繰り返す。
恥ずかしがらず、涼に伝えなければ。
『ありがとう』って。