些細なことでもときめく。
恋をしたから。
私は貴方に恋をした。自分でも嫌になるほど。けれど、貴方は気づいていない。
私もアピールしていないし、する方じゃなくて、いつも私は受け身だから。
だから、この恋はいつか終わる。自分の中で完結する。
傷付くけど、自分で終わりにする。
こんなことで、いいのか?
良くないけど、今も、ずっと、変われない。
駄目な私。
「はあー、重い……、」
ダンボール一杯に入った資料とかの紙類。
持てなくはないけど、ずっと持っていくのは辛い重さ……。
「でも、あともう少しだから、」
そうもう一度持ち上げようとした時
「持つよ。会議室で良いんでしょ?」
後ろから声をかけて、軽々重いダンボールを持ったのは、私の片思いの相手だった。
ほんと、かっこいい。
「ありがとう、持ってくれて」
「ふっ、良いよ。力持ちは、男に生まれた奴の特権だからさ、」
「ははは、女の子だって力持ちな子は居るし、男の子だって、力が弱い子はいるよ?」
「ま、そうだけど。俺はその特権を持って生まれたから、使わないと。自分だけじゃなくて、誰かにも」
……優しい、素敵な人。私、見る目あるなー
と、自画自賛。
「あのさー、」
「何?」
あともう少しで会議室だ。
「もし良かったら、今日、予定なかったら、」
「あはは、何なの回りくどいっ」
私は何となく、彼の言うことが予想できたような気がした。
だから、私から、勇気を持って、
「今晩、一緒にご飯食べに行かない?」
「、………?…、……えっ!、?」
彼の図星、という顔を見ながら、やっぱり好き、という気持ちと私、偉い!という気持ちが心いっぱいになった。
「返事は?」
「え、あ、あの、も、もちろん…、」
始まりの音がした。
心の灯火は、瞬く間に消えた。
最後の瞬間、消えた。
ピピーッ!!試合終了!
聞きたくなかった音が、体育館に響き渡った。その後に続くのは、大きな歓声。
けれど…その歓声は俺達に向けられたものではない。
「さあ、整列」
涙を流している仲間の背中をゆっくり押しながらコートの端へと集まり、挨拶をする。
いつもと同じ事。いつもの行動。
ただ違うのは、俺達3年生の大会が、ここで終わったということ。
心に燃えていた灯火は、この時、消えた。
俺の高校のバレー部はインターハイ予選決勝で負けた。準優勝はした。だけど、目標には、届かなかった。
「和樹………」
ぐすっと、涙をすすりながら声をかけてきたのは、副キャプテンの名良橋 星(ならはし せい)だ。
「お疲れ、星。今までありがとな。星が副キャプテンで良かったよ。俺だけじゃ、出来なかった」
「……、嬉しいけど、辞めろよ。また泣いちゃうだろ?〜〜っ……、」
「あはは、ごめんごめん。でも、言いたかったから…」
「和樹……。」
「うん?何?」
「これ、皆から、」
そういうと、星が手渡さしてきたのは、折り鶴の形をしていて青いキーホルダーだった。
「こんな小さいもんだけど、今は、これだけ…、3年生皆からのプレゼント。言っとくけど小さいけどなかなか立派な値段のやつだから…、」
「ありがとう。とっても嬉しい」
そう伝えると、星は照れくさそうに顔を赤くしていった。
「それじゃあ、俺、先に皆のところに行ってるから、和樹も速く来いよっ!」
「うん。分かった」
大会が終わり、少し騒がしいロビー。
その中で皆からの、折り鶴のキーホルダーを見つめていた…………。
ポタッ、ポタッ、…
「……えっ?」
俺の頬を、一粒、また一粒と涙が流れて伝った行く。
「……っバカ、辞めろ、家に帰るまでは、泣かないって、そう、思って………っ」
駄目だ、芽がどんどん潤んでいく、涙がとまらない。
色々な思いが、気持ちが、涙と共に溢れて落ちていく。
キャプテンになってからの日々は、本当につらくて大変なことばかりだった。
立派なキャプテンだったかと言われればそんな事ない。
だから、その代わりではないけれど、皆の前では嬉しい時も悲しい時も泣かないと決めていた。
それなのに……。
「はは、壁、壊れちゃった………っ」
心の灯火は、試合に敗れた時に静かに消えた。けれど、俺の心の中では、また何か違う灯火がそっと灯ったような、そんな間隔があった。
開けないLINEを、今日も君は見ている。
その開けないLINEは、最近別れてしまった彼女とのLINE。
開けようか、開けまいかスマホを持つたびに考えているけれど、私は、開いた方が良いと思うよ。
だって、毎日ほとんど気にしているから。
お風呂のときも、寝る前も、ゆっくりグダグダしてるいるときもずっときにしているから。
そんな君を見ていると、何だが私が悲しくなってなってくる。小さい頃からずっと見てきたから。だから悲しくなるのだろうか。
彼女のLINEは、決して悪い事を綴ってあるわけじゃなくて、どちらかといえば、君に感謝している。
だから早く、彼女の気持ちを受け取ってあげて…。
……こんなことを私が思っているなんて、君は気づいていない。
小さい頃に出逢って、それ以来大切にしてくれている君。
私は言葉は喋れないし、伝えることは出来ないけれど、こうして君と別れが来るまでは見守り続けているよ。
私、私こと、「新幹線のおもちゃ」がね。
不完全な僕は、今日もまた、皆より多く練習をする。練習をするために僕は昼ご飯を早く切り上げ一目散に校庭へと向かっていく。
「よし、今日はティーバッティングだ」
大きなネットを目の前に置き、ボールを置く用のポールを立てる。野球部に所属している僕は、誰よりも練習しなければならない。
僕は、一日でも早く、それなりにならなければ…。
僕の所属している野球部は毎年県大会ではベスト8に残る力を持っているチームだ。
僕は小学生の頃から野球をしているが、才能がないのか、センスが無いのか、周りの様に上手になるのに時間がかかる。
いつまでも不完全。だからベンチ外。そんな僕の目標は、ベンチ入りメンバーに入ることだ。
「直親(なおちか)!今日もやるのか?」
「うん。やるよ。護(まもる)君」
彼は林葉 護(はやしば まもる)同級生で、一年生のときからキャッチャーのレギュラーでバッティングも上手だ。
でも、決してそれを鼻にかけないし、努力もする。何だが、キラキラしている。そんな護君に、僕は少し嫉妬している。
「…、護君…良いの?ここに居て?」
「?うん。別に大丈夫。昼休みに予定なんてないし。俺は直親の練習に勝手に付き合いたいから付き合わせてもらってるだけ」
「……護君は、嫌じゃないの?下手な僕の相手して…。」
「…なんで?嫌じゃないよ。それに、直親はちゃんと練習した分、上手くなってるよ!
ほんと、すげーよ、」
護君は、どうしてこんなことを言ってくれるのだろう。自分だって努力してるのに。上手いのに。何で僕の事を褒めるの?
「……よくさ、直親言ってるだろ?僕は野球の実力は不完全で、誰よりも練習しなきゃいけないんだって、でも、それは違うよ。」
「誰だって不完全だ。皆、俺も、不完全だ
もしかしたら、一生不完全なままかもな、」
「だから、直親はもう少し自信を持ったらいいよ。そうしたら、今の直親の力を、もっと押し上げてくれるはず。俺は、誰よりも直親が練習してたの見てるから…、」
「……自信?僕が、自信をもう少し持つ?」
「…そう。もう少し自信を持つの。そうしたら、きっと大丈夫。不完全だって、いいじゃん。直親は、野球、上手くなってるよ。ちゃんと。」
この時、護君が言った言葉を僕は半信半疑で受け取った。
けれど、そんな僕が少し自信を僕は持ってプレーし始めたら、その次の夏にはミラクルが起こることを、この時の僕は、まだ知らないのだった。
香水の香りがした。
よく、香水の香りで元カノの事を思い出す、なんていうが、俺にそれは当てはまらない。
何故か?
俺の元カノ、元恋人は、香水をつける人ではなかったから。
「…わたし、香水の匂い苦手なんだ。だからもし別れたりしたら、光輝(こうき)は町で香水の匂いを嗅いでも、私を思い出したりできないねっ!」
「何いってんだよ。別れたりなんかしねーよ」
そんな事言ってたくせに、結局はお互いの価値観が合わずに別れを選択した。よくある話だ。
けれど、俺はそれっきり、未練はないけれど何となくまた次の恋をする気にはなれず、一人での暮らしを満喫している。
「……あっ、そういえば柔軟剤切れてたんだっけ?買ってかえらねーと」
俺は帰り道にあったドラッグストアにより、柔軟剤を探した。けれど、いつも使っていた柔軟剤は品切れていて入荷未定となっている。
「まじかー、じゃあ代わりの、違う柔軟剤……、」
そういうとどの柔軟剤が良いか選び出す。
中には香りの見本品が置いてあり、香りを嗅ぐことが出来るようになっていて、俺は一つずつ自分の好みに合う香りを探していく。
「………………あっ…………」
この香り、覚えがある。
「やばっ、柔軟剤で思い出したよ……」
この柔軟剤の香りは、元カノ、香織が使っていて柔軟剤の香りだった。
香りがふんわり優しく、匂いもきつくないからと、香織が愛用していた柔軟剤だった。
「流石に、これはない。」
香りの見本品から手を離し、俺はその近くにあった柔軟剤を手に取った。
「これでいいや。なんだって、」
そういうと、俺は柔軟剤を持ってレジへと持っていくのだった。