いしか

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心の灯火は、瞬く間に消えた。

最後の瞬間、消えた。

ピピーッ!!試合終了!

聞きたくなかった音が、体育館に響き渡った。その後に続くのは、大きな歓声。
けれど…その歓声は俺達に向けられたものではない。

「さあ、整列」
涙を流している仲間の背中をゆっくり押しながらコートの端へと集まり、挨拶をする。
いつもと同じ事。いつもの行動。
ただ違うのは、俺達3年生の大会が、ここで終わったということ。

心に燃えていた灯火は、この時、消えた。

俺の高校のバレー部はインターハイ予選決勝で負けた。準優勝はした。だけど、目標には、届かなかった。

「和樹………」
ぐすっと、涙をすすりながら声をかけてきたのは、副キャプテンの名良橋 星(ならはし せい)だ。
「お疲れ、星。今までありがとな。星が副キャプテンで良かったよ。俺だけじゃ、出来なかった」

「……、嬉しいけど、辞めろよ。また泣いちゃうだろ?〜〜っ……、」
「あはは、ごめんごめん。でも、言いたかったから…」

「和樹……。」
「うん?何?」
「これ、皆から、」
そういうと、星が手渡さしてきたのは、折り鶴の形をしていて青いキーホルダーだった。

「こんな小さいもんだけど、今は、これだけ…、3年生皆からのプレゼント。言っとくけど小さいけどなかなか立派な値段のやつだから…、」
「ありがとう。とっても嬉しい」

そう伝えると、星は照れくさそうに顔を赤くしていった。
「それじゃあ、俺、先に皆のところに行ってるから、和樹も速く来いよっ!」

「うん。分かった」

大会が終わり、少し騒がしいロビー。
その中で皆からの、折り鶴のキーホルダーを見つめていた…………。

ポタッ、ポタッ、…

「……えっ?」
俺の頬を、一粒、また一粒と涙が流れて伝った行く。

「……っバカ、辞めろ、家に帰るまでは、泣かないって、そう、思って………っ」

駄目だ、芽がどんどん潤んでいく、涙がとまらない。

色々な思いが、気持ちが、涙と共に溢れて落ちていく。

キャプテンになってからの日々は、本当につらくて大変なことばかりだった。
立派なキャプテンだったかと言われればそんな事ない。
だから、その代わりではないけれど、皆の前では嬉しい時も悲しい時も泣かないと決めていた。

それなのに……。

「はは、壁、壊れちゃった………っ」

心の灯火は、試合に敗れた時に静かに消えた。けれど、俺の心の中では、また何か違う灯火がそっと灯ったような、そんな間隔があった。

9/2/2023, 10:25:22 AM