星ってのは
いくつか集めると願いが叶う。
食べることもできて
どの星も味が違う。
私が好きなのは
あの紫と青と黄色が混ざったような星。
甘酸っぱくて
ちょっと辛くて
でも安心する味。
甘党だけど安心するためなら
この星を何個でも食べる。
味にこだわらなくても
感覚にこだわればそれだけで。
そんな味より感覚派の私は
まだ一度も星に願いを叶えてもらったことがない。
叶うはずがないから。
私の願いは無いから。
じゃあ食べるしかないよねって話。
星の味は誰よりも詳しくなった。
色で大体の味はわかるようになった。
それでも少し寂しいのは
周りの人たちが次々と
願いを叶えてもらっているのに、
私だけ置いてけぼりで
暗い洞窟の中に閉じ込められてるみたいだから。
ある時旅人に会った。
自由で広い世界を見てきた少女だった。
星を沢山集めているが
願いを叶えてもらわず、
食べもせずに
ただ貯めていた。
私の話を聞くと
紫と青と黄色が混ざったような星を渡して
耳元でこう囁いた。
願いがないなら、それを叶えてもらえばいい、と。
夜、試して見た。
願いが欲しいです。と
星に願って
星に酔って
澄んだ夜空の星は
どれも紫と青と黄色が混ざったような色をしていた。
"Good Midnight!"
私はよく優しいと言われる。
だから優しいフリをする。
本当は冷たくて嫌な人間なのに、
優しい人を無意識に傷つけてしまうのに。
自分の中のなにかは
ずっと隠してることを言ってくる。
あんなやつ、どうでもいいだろ。
悩みとか聞いてんなよ、こいつの事嫌いだろ。
笑ってんなよ気持ち悪い。
耳を塞いでも鳴り止まない。
ヘッドホンをつけて
現実を遮断、遮断、遮断。
流れてくる音は
飽きない4月みたいで
心が少し温かくなる気がした。
この冷たさをどうにか温めたくて
たどり着いたヘッドホン。
命の次に大事なもの。
そのヘッドホンを無くしたことがあった。
普段優しいフリをしてるからか、
探してくれる人は沢山居た。
でもその中に
優しさは入ってなかったと思う。
本気で探してくれたのは、
見つけてくれたのは、
君だった。
にゃあと少し鳴いてから
私にヘッドホンを渡してくれて。
ある日
大雨で川が氾濫して
家が流されちゃって
どこに行けばいいかわからなかったんだ。
でも君は私の服を噛んで引っ張って
安全そうな草原まで連れてきてくれた。
君も怖かったはずなのに
本当の優しいを持ってる君の背中は
頼もしくて、ついつい持たれちゃって
星屑が散りばめられた夜空を見て
こう言ったんだ。
"Good Midnight!"
1番誰かに傍にいて欲しかった時に
そんな人いないって気づいて
遠く…遠くに
落ちていったよね。
あの時の誰かになってくれる人がいたら
多分私は登ってこれる。
でもどうしてもいないんだ。
いつしか自分がちょろ過ぎて
反吐が出るようになった。
早く登りたいが故に
誰でもいい誰かが
手を差し伸べかけてくれたのを
中途半端にハシゴとして使おうとしてた。
意識してやってない、
無意識、無自覚だったからこそ
気持ちが悪くなってくる。
上でちゃんと生きてる人を
傷つけてしまったかもしれない。
頑張って必死に登ってる人の
足を掴んでしまったのかもしれない。
私は万死に値するのかもしれない。
そんなことが
私の頭の中を支配して
他のことを考えさせなくして
さらに落ちていって。
もうダメだと思った時に
ロープで何人かに
ちょっと引き上げてもらったんだ。
みんながみんな、
あの誰かじゃないかもだけど
誰かが誰かなのは確かだと思って、
必死にロープを伝って登ろうとした。
でも突然何人かの1人に
ロープをハサミで切られて
すぐに底まで落ちた。
もうここから登って出ようとするの
諦めようかなって
空を見ながら思った。
"Good Midnight!"
でもね、
どん底にいたら
何をしてもこれ以上下がないから
なんでも出来る気がして
こんな夜ですら
愛そうと目を瞑ったんだ。
仲のいい友達も
家族も
自分さえも
誰も知らない秘密。
言わなくていいことは口に出さずに
わからなくなって、
誰かを傷つけることは口に出さずに
わからなくなって、
だんだん私のことがわからなくなってきて
耳が曇って
消えてみたくなって。
貰った言葉は自分の中でねじ曲げちゃって
自己嫌悪の海に溺れて
言葉すら発せなくなって。
思いを伝えようと口を開くけど
喉に詰まって
これまで押えてたものが
咳と一緒に出てきちゃって
止められなくて
涙が溢れ出た。
そんな時に
湖に船を出してる人が見えた。
あの湖に人がいるのが珍しくて
涙を風で吹き飛ばすくらい
走って湖に向かった。
船の上には本を読んでる人と
黒猫がいた。
どちらも気づいてなさそうに見えた。
こんな時何を言えばいいか、
またわからなくなった。
それでも2人ともこっちを見てない。
どれだけ悩んでも
わからなくなって泣いても
大丈夫なんだと思うと
気が楽になって自然と声が出た。
"Good Midnight!"
死んだ方がマシなくらい寒い中、
膝下まである雪をかき分けて
私はここにいると言うように
スキーをする少女がいた。
少女に憧れ
スキーの訓練を申し込んだ者は最後、
少女の速さに
技術に
教え方についていけず、
雪に頭を突っ込んで終わり。
右に出る者はいないと思われたが
実は昔はスキーチームに所属していて
少女が1番落ちこぼれで
雪に突っ込んでばかりだった。
ある日リフトの事故で
6人中5人が意識不明の重体、
1人は軽傷だった。
リフトから落ちた時、
5人全員が少女の元へと滑り
急な斜面から引き離したのだ。
引き離した反動で
5人は少女と離れ
直後に雪崩が5人を襲ったのだった。
少女が起きた時
いつも溜まっていた宿舎が
静かな夜明けに飲み込まれているのを見て、
もし
少女が人並みに滑れていれば
6人で急いで斜面を滑り降りたら
助かったかもしれなかった。
そんな考えが少女の頭の中を駆け巡り
鬼のような特訓を積み
ようやく得た技術だった。
努力の天才は
きっとこの先人を助けるだろう。
そしてきっと
5人に縛られて生きていく。
その事は少女もわかっていた。
"Good Midnight!"
夜、いつも思う。
いつか少女を止めてくれる人が
現れてくれると信じることを。