パラパラと
また雨が降ってくる。
薄着なのに寒くなくて
どこか寂しい真夜中。
本に手を伸ばしてみるけど
読む気にはなれなくて。
今、月が落ちてきたら
夜を照らしてくれるのは
太陽になっちゃうのかなとか、
私が苦手なあの人も
どうでもいい人も
みんないつかいなくなるなら
私からいなくなりたいなとか、
よく分からないことを考えては
すぐにやめる。
儚さを求めてるわけではないけど
どこかの誰かさんと同じで
明日が怖くて
とにかく今日に閉じこもっていたいって
毎日思うただの人間。
ネガティブが飛び交う真夜中は
今が幸せかって言われたら沈黙するけど
世界と比べて今は幸せかって言われたら
幸せですって言えるここに
ずっといたいと感じる。
やっぱり本は読んだ方がいい。
次第に雨は強く細かくなって、
冷たい風が吹き込んでくるから。
その冷たさの中で
暖かさを見つけられるように
補助線を本で引くのはいいこと。
2、30分読んで
ようやく今夜のお供の登場。
そう、いちご大福。
おはぎと迷ったけど
甘々よりかは
甘みの中に酸味が欲しかったから
いちご大福。
最近はひと口で食べるのにハマってる。
今日もひと口。
口についた粉を拭き取り
ベランダに出る。
思ったより寒くて鳥肌が立つ。
真夜中の信号は明るくて
1つ、また1つと
赤になる光は
綺麗で何故か泣きそうになる。
"Good Midnight!"
孤独の夜。
信号の赤。
未来への鍵は輝くばかりで
無くしたまま。
夜、
静かな夜。
よく寝てるウグイスを見かけるけど、
今日は星座に仲間外れにされた
星のかけらを見つけた。
星のかけらは小さくて
空にあっても肉眼では見えない。
それに空から落ちやすいから
真夜中に目を凝らして地面を見ると
色んな星のかけらがある。
私はどれも
金平糖に似ていて
美味しそうだなぁとしか思わなかったけど
月に透かして見ると
思ったより綺麗。
なんだかみんなの夢を集めてる感じがして、
つい星のかけらを拾ってしまう。
明日は夜明けが早い。
私もそろそろ戻らなきゃいけない。
戻ったところで
待ってくれている人なんていないけど
自分の居場所は
最低限作って守るつもり。
"Good Midnight!"
いい真夜中、
そしていい目覚めにしましょ。
ある国から声が聞こえてくる。
女だって屁くらいすんのよ。
暑かったら脇汗も出るし。
そういうのは
みんなから汚姫様と呼ばれる女の子。
マナーはちゃんとしているのだが、
まるでクソガキみたいに
生理現象を我慢するという概念がないようで、
汚い、気持ち悪いという人もいれば、
元々我慢するものじゃない、
人間らしさがいいという人もいる。
姫と言っているが
いつも少しヒラヒラなスカートを
履いているからってだけ。
そこら辺の人と何ら変わり無いはずなのに
なんだか気を引く人。
しかし
流石に人間性としてあれだったのか、
王様が見逃しておけなくなり
1ヶ月以内にその性格が直らないのなら
追放すると。
その事を手紙で知らされた汚姫様は
追放されるくらいなら
自分で出ていった方がマシ。と、
すぐに出ていこうとした。
すると、
何故かみんな引き止めた。
人に流されない、
自分の意志を固めているあなたは汚くない。
むしろ綺麗だと
口を揃えて言った。
何人かが
王様に撤回して欲しいと
頼みに行くほどだった。
想定外のことに驚いたが、
王様は取り消すつもりはないと
突き放した。
3日後、
汚姫様はピンクの1番ドレスらしい服を着て
黒色の服しか持たずに
門へ歩いていった。
"Good Midnight!"
服に着いた鈴を鳴らし
Ring Ring...と
汚姫様にしては洒落た言葉と去り方で。
頭もお腹も痛くて
連休明けってほんと憂鬱。
そんなことを思いながら家に帰っていると
花柄のワンピースを着た女の人を見た。
存在が不安定というか、
なんだか足が透けて見えた。
放っておいて帰ればよかったのに
気になって声をかけてしまった。
どうやら幽体離脱的なことになっているらしい。
本体は親友と一緒にいるから
心配しなくてもいいと言う。
私はあなたのこと心配してるんだよ。
少し励ましのような言葉をかけた。
それからは毎日、
行きと帰りだけ一緒に歩いた。
幽体離脱の原因は
多分毒親からだと教えてくれた。
朝昼晩のご飯の写真を迫られ
3時間に1回は電話をかけ、
仕送りは月2回、
暇な日はバイトを掛け持ちしろと
親と言うより上司みたいな人だったようで。
何度も嫌だと言おうとしたが声が出ず、
家族の愚痴なんて言ったら嫌われそうで
親友にも相談できなかったんだそう。
まさか一緒に歩くだけの私に言うとは。
私相談しやすそうに見えんのかな?
ある日
知り合いのお見舞いに行った帰りに
車椅子を押して歩く女の人と
すれ違った。
もしかしてと
早足でワンピースの子の所に向かった。
喜んで安心した様子で
後を追いかけると
私に礼を言ってくれた。
車椅子を押してた子、
"Good Midnight!"
と言っていたように聞こえた。
友情って素晴らしいんだなぁ。
そこら辺の穴場にある芝生に寝転んだ。
向かい風も追い風も
今はただのそよ風で
気持ちよかった。
少しの時間と
少しの荷物で
君と一緒に笑い合った日々。
この声はもう届かなくなるのでしょうか。
ほら見て、
あのパン屋さんでロールパンを買ったよね。
そうそう!
ロールパン専門のパン屋さん!
塩パンロールが美味しかったなぁ。
この木、
まだあったんだね。
一緒にどんぐり拾い競走したよね。
私は量より質にこだわって
綺麗なのばっかり集めてたけど
ぱって横見たら
君が両手いっぱいにどんぐり持ってて
面白かったなぁ。
君はここで初めて雪を見たんだよね。
何この白いの!
触っても死なない!?とか言いながら
既に触ってたんだよなぁ。
ね、次はどこに行こうか。
今にも冷たくなりそうな君の手を握る。
私の親友は
数年前から車椅子。
意識がほぼ無くて
原因が不明。
毎日のように笑いあった親友は
人形みたいになってしまった。
それでも私は声をかけ続ける。
ずっと
思い出の場所に一緒に行ったりして
意識がほぼ無くても
楽しんでもらえるようにしていた。
でも、
明日から病棟が移るらしく、
そこでは面会禁止だそう。
いつか
また元気に笑顔を見せてくれますように。
私は親友に
この言葉を贈った。
"Good Midnight!"
またロールパン専門のパン屋さん行こうね。