令和7年4月28日
お題 「夜が明けた」
「ちょっと、待て🌕🥷」
泥棒猫は絹の靴下に左脚を通しながら囁いた。窓の外夜明け前の静寂が支配している。元野良猫は上流気取った毎日が我慢できずに情熱を無理に閉じ込めることを止めたの。この夜明けとともに、砂の上をつま先立ててキャットウォークで歩く夜明け前夜が明けたら一緒に駆け出す朝日に向かって
獣のように…。
作 春野 若葉
「まだ見ぬ、波濤」 作 碧海 曽良
さよならと心で呟いた。
傘を揺らして駆け出してゆく。
大粒の雨だれが、激しく傘を叩いてその音だけが耳に入る。11月の雨は体の芯から寒さを伝え心臓が凍てつきそうだ。煙る街中が銀色に染まり流される、之子は珍しくTAXIに手を上げて飛び乗った。クリスマスの化粧を始めた街並みが玩具箱をひっくり返したように、雨にうたれ輝いて見えた。
バスタオルで髪を拭き、冷えた体を包んだ愛らしい青春の日々を思い出し包んだ優しさは今は要らない。不安な波に拐われる怖くて誰かを求めたのか?きっと。海内の気持ちに思いを寄せた。きっと、私じゃあ彼の隙間を埋められない。そして、私自身の隙間も彼には埋められない。きっとそうだ、遠廻りしたけれどこれで良かったんだ。
明日の互いを救えるのも隣で笑うのも互いじゃないと気づけた、有り難う私の青春このままあなたのかけらが消えるまで見つめている。
好きや嫌いで片付けられないのが愛なら、いつかこの痛みも愛となるだろうか?愛のおもかげとなるだろうか?今はまだ湯気をあげジンジンしている行き場のない想い、濡れた傘を広げ廊下に転がした。
眠ってしまおう、明日考えよう。
今日が少しづつ遠退けば、心も熱を失くすだろう。
之子は、ハイボール350ml入りを3本続けて煽りベットに潜り込んだ。
つづく
令和7年4月27日
お題 「ふとした瞬間」
ふとした瞬間に 視線がぶつかる
幸せのときめき 覚えているでしょ
パステルカラーの季節に恋した
あの日のように 輝いてる あなたでいてね
負けないで もう少し
最後まで走り抜けて…
昭和平成歌謡メロディー 「負けないで」
作詞 坂井泉水
なに、昨日からこれしかないやん藁藁
はい、続けます
負けないでもう少し
ゴールデンウィークは近づいている〜♪
「まだ見ぬ、波濤」 作 碧海 曽良
その日は、朝から冷たい雨が降っていた。
11月半ばの雨は氷のように冷たかった。
海内の元彼女だと名乗る二十代後半の女性が、ふいに店に訪れた、黒いスーツにショートカットがよく似合う如何にも出版社勤めのキャリア風の彼女だった。こっちだって負けてないわと背筋を伸ばし腹に力を入れた之子、「お話出来ないかしら」と言う彼女に、「今、仕事中ですから」と退店願った、彼女は店が終わるのを待っていた。
二人で、喫茶店に入ったのは午後8時近かった深夜迄やっている夜はお酒も飲める喫茶店。
向かい合せて座ったが、会話はない、「ビールでも」と勧められたが、飲む気にはなれずコーヒーを注文した「同じものを」と彼女は言った。沈黙はどれくらい続いたか、Winkの「悲しい熱帯魚」一曲分くらいの沈黙の後に「別れてくれない彼と」と彼女からで、山口百恵だと「そんなことは出来ないわ」と返すところだろと一瞬頭を過ぎる之子ではあるが、この時は「そんなことは出来なくもない」と内心呟きさっきまで店内に流れていた「悲しい熱帯魚」がリフレインされた。
Stop 星屑で髪を飾り
No-Stop 優しい瞳を待つわ…
あなたは来ない
私のおもいをジョークにしないでぇ♪
いや、ジョークにしてるのは私か?とも思いながら、少し間を置き「彼はこのこと知ってますか?」そう言って、店の電話を取り海内に電話しようとした時、彼が来た…。示し合わせていたのかどうか、海内は慌てた風もなく項垂れるように席についた。その姿を目にした時之子の中で何かが弾けた。話し出そうとする海内を遮るように之子は言った
「今なら大丈夫、嫌いになりたくないから何もいらない、、バイバイ」
そう言って、之子は伝票を握り席を立とうとした、その伝票を海内は押さえた。之子は何も言わずにそのまま店を出た。
カランカランと店のドアが鳴ったが続く音は無かった。之子は深呼吸をひとつして振り返らずに店に背を向け雨の中を歩き始めた。
雨脚は強さを増していた。
つづく
令和7年4月26日
お題「どんなに離れていても」
何が起きたって へっちゃらな顔して
どうにかなるさと おどけて見せるの
今宵は私と一緒に踊りましょう
今も そんなあなたが好きよ 忘れないで
負けないで ほらそこに
ゴールデンウィークは近づいている
どんなに離れてても
心は そばにいるわ
追いかけて 遥かな夢を
負けないで ほらそこに
ゴールデンウィークは近づいている
どんなに離れてても
やって来る 生きてりゃ
明日はやって来る…うん?なんか違う
どんなに離れてても
心はそばにいるわ
追いかけて 遥かな夢を♪
昭和歌謡でなくこれ平成歌謡でした♪
「負けないで」 作詞 坂井泉水
1993年平成5年のヒット曲、まだ見ぬ、波濤の彼女たちは、この後に国民的応援ソングになる曲を、まだ知らない。
「まだ見ぬ、波濤」 作 碧海 曽良
どんなに離れてても心はそばに居たのだろうか?未来予想図か? あの日から何度か会った
1989年夏の終わり、桐子に話した気持ちに答えが出せず、早2ヶ月は過ぎ、季節は夏から秋へ、百貨店もAutumnCollection開催中、羽織ものが欲しくなる時期だ、なんとなくその後ズルズルと会いに来て会いに行、海内の年上の彼女が既婚者であったことを知り、それでも終わったことだと言われれば、それ以上責めることもせずか出来ずか知らぬ間に、時間ばかりが過ぎるような、日々。トレンディドラマみたいな恋なんて何処にも転がってなんかいやしない。
十代の情熱で熱せられた恋は熱いけど、持続するのは難しく、お互い恋だけじゃなく生きる年頃になればこんなものよ、22歳の恋なんてと自分に言い聞かせるように、海内と付き合っていた之子。
海内は出版社に勤めたけれど、その体育会系体質が性に合わないらしく、仕事に対して悩みを抱えているようだった、それもまた、社会人3年目の之子にはどこか頼りなく見えた。あんなに輝いていた、孤高のグランドのヒーローがやっぱり普通のちょっと頼りない男だった。それを許容できるキャパシティが22才の之子にはまだ生まれておらず、海内の23才を祝うパーティーも之子にはとても子供じみた騒ぎのように思えてしまうのであった。
平成元年も後2ヶ月、之子も23才になろうとしていた。
つづく
令和7年4月25日
お題 「こっちに恋」「愛にきて」
「愛にきて、アライチュー」
「なんだバカヤロー」
「お前が、こっちに恋」
二人は仲良し
ダジャレか?
解った人 同世代ですね✨️
「まだ見ぬ、波濤」 碧海 曽良
「それは、なごり雪やなくて木綿のハンカチーフのアンサー・ソングかいな?」
受話器の向こうで桐子が笑っていた。
之子は、東京に着くと直ぐ海内と別れそのままアパートへ戻り、明日からの仕事に備えた、夜半案の定おこまからの電話に起こされ気を回してくれたらしい、おこまを適当に有り難くあしらい、仕事を口実に受話器を置いたのが午前零時だった。
翌日から仕事に戻り、バタバタと1週間は過ぎ、8月も終わろうとする頃、桐子と電話で話した。やっぱりこういう話は桐子との方がシックリ来る、別に好き嫌いを論う訳ではなく、友人にもそれぞれ、立ち位置が存在するということだ、何時も全て一緒と、いう訳にはならないのである、それが長く続く友情の秘訣だ。
桐子は言った。
「口紅もつけないって去った男に、やっぱり口紅もつけない君が好きやでとか言われてもなぁ」
「うーん、なんかな、あたしが見てたのは自分が作った初恋よ、なんか妙なんやけどな、あんた、あたしの海内を壊さんといてって思ったかなぁ、でもな、変わてないんやで海内、変わったのは、あたしのほうかも知れん」
「そうさなぁ、海内がお気楽な大学生やってた頃、うちら社会人やし、違ごてくるさ、そらぁ」「そんで、会ってんのそれから」
「ううん、今度会う、来週」
「クリスマス迄は一緒におりやって、おこまなら言うやつ?」
「たぶんな笑」
そんな話を夜遅くまでした。
虫の声も、稲を乾かす乾燥機の音も、その匂いも届かない東京の初秋の夜空だった。
そういえば、あいつは、東京には帰るなんだよな・・・
東京の月を見上げて之子は呟いた。
会う約束は、8月の最終週だ、態々彼が休みを合わせてくれた、もっと嬉しい筈なのにな、大阪からの新幹線の中で色々恋の話もしたけれど、聞いたけれど、別に之子だって初恋のなごり雪を抱きしめていた訳ではない、もしかしたら抱きしめていたら、なごり雪は消えていたのかも知れないと思った。抱きしめずに、心の隅に置いていたから溶けずに綺麗な結晶になっちよったね、だったらそのまま閉まって置いた方が良いのかも知れない。別にこれから、また人間として向き合うことが怖い訳でも嫌な訳でもないけれど、、なごり雪の結晶を大事に閉まって置きたい気もする。
そんなことを思いながら、之子は二杯目の珈琲を入れた。
つづく
後書き
最近朝ドラに嵌ってXで呟くのに忙しくてこちらがお留守に、駄目だは200字程度の感想を呟くだけじゃあ長文読めなくなるし書けなくなるのも納得だわ。
ところで、構造文学者?ってなに藁藁
専門家はまさかこんなところに出ないと思うし、専門家気取りみたいな文章書かないと思うんだよな🤔
全然理解力追いつかない時、人は自分が知ってる難しい専門用語を引っ張り出して、論点ずらすって最近観たドラマの説教で言ってたがあれか🤭
令和7年4月24日
お題 「巡り逢い」
「まだ見ぬ、波濤」 作 碧海 空
1989年8月16日 午後
約束のフェリーのりば。
短大卒業してから、高校卒業してから、この場所で海内洋を見送ってから何度目の夏だろう。
平成元年の夏が静に暮れかけて、昨日まで隣にあったような十代の日々を少し遠くに感じた。
冬には23才を迎える之子。誰も口にはしないが、それぞれに十代の夏を遠くに感じ始める蒼い時、動き始める船に静な波濤が白く輝く。
桐子は人妻になり。
おたかは母校に帰り教師になり。
波乗り鮮やかな、おこまはバブル入行組のバリキャリ銀行員。
私って相変わらずだと、少し友が我より偉く見える日を迎える之子に。
「変わってなくて良かった、見た目はかなり変わったけど」と海内は言った。
「確かに、化粧少し上手くなったかも、昔はメンタムの薬用リップしか使わんかったけど笑 今じゃあ、これでもデパガやし」
「渋谷やろ?俺もたまに行くけど」
「一応なぁ、売上げトップなんよw」
「やっと、スクランブル交差点で迷子にならへんようになったけどなー」と、おこまが笑いながら会話に入ったが、おこまは何を変に気を回したか、大阪で一泊すると言い出し「用があるからー」とだけ言って笑っていた。おこまの悪戯好きは相変わらずだ。それでも明日からは仕事の之子と海内は、大阪から二人で新幹線で帰ることになった。
定刻通り 午後三時の新幹線に乗る、ホームまで、おこまは一緒でこれから大学時代の友人と会うのだと言う。
「まあ、ゆっくりねぇ」と、おこまに背中を押され、551の豚まんを買って新幹線に乗り込んだ。
「また、電話するわな〜」
笑う、おこまに手を振った。
新幹線が動き出し、席につくと海内が言った。
「相変わらず、人と別れる時は、サ・ヨ・ナ・ラは言わないぜ!なんやなw、バイバイも言わんのかぁ?」
「なんでよ、また会うんやからええやん」
「結構、センチメンタルやな、お前」と海内は笑った。
それから東京まで近況を話した。
海内が、なんとなくズルズルと大学時代から付き合っている年上の彼女のことを話し出した。之子の気安さのせいだろうか?之子は自分でも若干迷惑に感じるくらい、他人に気安さを感じさせるようで、聞いてもいない打ち明け話をよくされる、こいつもそんな感じか?と内心苦笑気味に海内の話を聞いていた、、ちょっと待て話しの流れから察すると、こいつその歳上の彼女と知り合ったのは私と被ってないか?と考えながら、まあ、バイト先の出版社のチーフだったというから嘸かし格好良く映ったのだろうと何故か直ぐ共感してしまう、共感力高めの之子なのであった。
「なんで、ワタシが?」と内心思いながらも海内の話を聞いていたが、高校時代と何ひとつ変わらないような、自分勝手な不真面目さといい加減な屈託のなさと素直さ寛容さ、凪の水面にキラキラ光る日差しを思わせる笑顔?
「うん?こいつ、単純なだけやん!」
最早、心の声はこいつ呼ばわりで、之子は過ごし、なごり雪も降る時を知ったのかも知れないなぁと、夏の日差しの中で遠い波濤のざわめきを聞いた。
つづく
葉桜に 呪い埋めたる 巡り逢い
独居房の浪人🌾🦜🌕️
巡り逢い 殺す夜桜 影ひとつ
月下不美人🌾🦜🌕️
ストーカー 夜桜の下 身を隠す
俳句甲子園より キッザニアクラブ宛🌾🦜🌕️
お題 「巡り逢い」