一年後
一年後のことなんて分からない…。
一年は短いようで長いと思う、歳を重ねるほどそう思う、大人になると一年はあっと言う間だとか聞くが実際もう夏か、もう年末かとは思うのだがそれでも見送ることの多い人生だったり事故や病気の多い人生だったりするものだから
大人になればなるほど一年後のことなんてどうなっているかなんて分からないのだと思うのだ。
去年は確かに父母と共に桜を見たのに一年後には一人だった。
去年は確かに階段を駆け下りていたのに一年後には走れなくなっていた。
あんなに好きだったのに一年後には前世からの敵同士みたいになっていた。
一年後のことなんて分からないから、今日が人生の最後の日なのかも知れないと思うことにする、そうすると満開の桜も散る桜も入道雲も風に揺れる稲穂も落ちる霜も降る雪もあなたの笑顔も奇跡みたいに美しく見える。
2024年5月8日
心幸
初恋の日
五月雨は緑色 悲しくさせたよ一人の午後は
恋をして淋しくて 届かぬ想いを暖めていた
好きだよと言えずに 初恋は
ふりこ細工の心
放課後の校庭を走る君がいた
遠くで僕はいつでも君を探してた
浅い夢だから 胸を離れない
夕映えはあんず色 帰り道一人口笛吹いて
名前さえ呼べなくて とらわれた心見つめていたよ
好きだよと言えずに 初恋は
ふりこ細工の心
風に舞った花びらが 水面を乱すように
愛という字書いてみては ふるえてた あのころ
浅い夢だから 胸を離れない…
胸を離れない…
ザァー
静かにレコードの回転は終わっていた。
机に突っ伏して その歌声を聴いているようないないような、そんな1983年の午後17歳は、この歌の世界にいた。
その頃は女子より男子の方が純な気がした。
ちょっと焦らすような
それでいて、イライラするような感じ
なんか、なんかボケてる彼は冗談しか言わなくて、変な悪戯を仕掛けて来て、しょうもなくて笑いながら自転車のペダルを踏んだ。
それでも、何故か突然
真顔になったり、腕を引っ張ったり
肝心なところで、男の子だったり女の子だったりな二人だった。
いつも、光と影の中でじゃれあって
悩みも相談して いつの間にか
なにかに傷ついていた、そんなとこよく似ていた二人だった。
そのうち、互いに世界が広がり
レストランのバイトのように
人も入れ替わり
人混みに押されて
傘の波は離れて行った。
次に誰か好きになっても
恋も2度目なら
少しは上手に 甘い囁きに応えたい
なんて 上手なこと言えなくて
いつも、あんなにピュアに恋することを教えてくれた貴方には叶わないわ。
1番綺麗な風に 貴方と吹かれていたから。
とかなんとか言って
セピア色の写真を見つめている。
短ランにボンタンの貴方の横には、三原順子になりたかった十七歳のわたし…
いつか何処かで会っても変わらないでねって変わらなきゃ駄目なんだから。
それが、生きるってこと、写真の中の貴方は変わらないけど、私は変わったわ。
もう、会える自信が無いかも知れない。
私だと気づいてくれるかしらね、優しい時が互いに流れて、30ウン年ぶりの再会に心躍る
週末は同窓会、同窓会は初恋の日🌷
2024年5月7日
心幸
明日世界が終わるなら
僕はひとりで
アスファルト蹴飛ばし投げ捨てられた空き缶のように地面を転がった。
互いの嘘を見破るまでが、愛だと言うのなら
いっそ、世界を終わらせようか。
世界が終わるまでは、終わることもない。
全て嘘だと知っても、それは、それほどまでに
僕を失いたくないと願ってくれた、君の心が流した泪だと知っているから。
世界が終わるまでは、終わることもない。
だから、安心して、それは、それほどまでに
僕は君を失いたくないと願っているから、僕の心は何時も君を呼んでいるから。
世界が終わるまでは離れることも終わることもない。
明日世界が終わるなら
聞かせておくれ、君の後悔を
僕なら、変わらない。
やつれ切った心まで壊されても
君の嘘も後悔も、君の心が流した泪だと知っているから。
人は弱く
いつも形を求めていて
かけがえのないものを見失う、欲望だらけのこの街で、忘れ去られたバーボンのように溶けた氷がテーブルを濡らしていた。
互いの嘘を見破るまでが愛だと言うのなら
いっそ、墓場に抱いて行こうか。
星屑の嘘も君の輝きは奪えない
それは、それほどまでに傷ついた
君の心の要塞だから…
僕は知っている。
明日世界が終わるなら
聞かせておくれよ
蕾の花が似合いの
君の心根を。
僕は待っている。
世界が終わるまでは離れることも終わることもない。
僕の信じるものは
君の精一杯の嘘だから。
2024年5月6日
心幸
君と出逢って
まだ、あげたばかりの君の前髪が
桃の花の下に見えた時
前髪にかかった桃の花が
髪飾りのように見えて
なんて美しいと思った。
楓のような手をのばし
桃の実をもぎ取って
頬張り僕に笑いかけた
桃をぺろりとたいらげて
屈託なく笑う君に
僕は初めて甘酸っぱい
香りに胸を踊らせた
思わずもらした
ため息が
君の髪にかかったとき
恋に踊る愉しさを知った
甘い香りの立つ
桃の樹の下に
自然と出来た
細い道
誰かが通って出来たのか
これから 君と僕も
通るのか
誰もがみな
この道を通るのか
初めて君と
手を繋ぐ
甘い桃の香りが
鼻をかすめた
君と僕は
出逢った
君の花は散らない
50年前の
あの日のまま
君の花は散らない
皺の刻まれた
手も あの日のままに
小さくて楓のようで
桃の実を
頬張り笑う
横顔もあの日のままに
快活で
愉しそうに
笑う君と
手を繋ぐ
「ありがとう」と言う変わりに
ぎゅっと
その手を握りしめる
君は
この細い道は
あなたとわたしの道のり
そう言って
また 笑う
「ありがとう 待っていてくれて」
「待っていたは 遅れないでね」
僕と君は
初めて出逢った場所から
また、その細い道を歩き始める
彼岸まで一緒に・・・
「いいや、来世でも君を見つける」
「待っていてくれ、君の好きな桃の樹の下で」
「見つけてくれて有難う」
微笑む君が愛おしい。
2024年5月5日
心幸
耳を澄ますと
カントリー・ロード♪
それは、耳をすませば
耳を澄ますと
虫の声
それは、秋の詩
耳を澄ますと
清い声ばかりが
聞こえるとよいが
耳を澄ますと
悪魔の囁き
それは、案外甘かった
耳を澄ますと
自分の弱さの声と
自分の強さの声が
耳を澄ますと
自分の寂しさと
自分のおおらかさが
耳を澄ますと
母の声と
父の声が
耳を澄ますと
あなたの声が
聞こえる
だから 私は
今夜も 耳を澄ます
2024年5月4日
心幸