二人だけの秘密
今更 好きだなんて言えない
ますます好きなのに…
逃げ出したいの?
あたし
雨の中スピードあげて
誰の声も無視した
燃えつきるまで
二人でいさせて
二人の秘密 築き上げようとしたけど
あなたの微笑みさえ嘘になる
信じたくない
信じさせて
昨日明日今
ただ あたしを責める
胸えぐるくらい
浮かぶ微笑み
後悔が引き寄せる
不幸な幸せ体で感じる
ただ あなたを責める
信じたくない
信じさせて
二人だけの秘密
2024年5月3日
心幸
「優しくしないで」
女は、意地を張ってそう言った。
「一人でも大丈夫だから」
女は、泣かないようにフッと息を吸った。
「どっか、行ってよ鬱陶しいなぁ」
女は、背中を向けてそう言った。
男と遊んでるふりしてみたり
女のつけぬ香水つけてみたり
夜明けを待って帰れば
背を向けて捨て台詞
可愛い悪女は
素直になれずに
独り泣く
「優しくありたーい」
女は、私は優しいと言わんばかりにそう言った。
「みんな違ってそれで良い」
そのくせ、顔の見えないところで
馬鹿だの下品だの下衆だの指を指す。
そのくせ、繊細さん
そのくせ、ヒステリック
そのくせ、他人のそれは許さない。
本当の悪女とは
こんな感じかと…。
「優しくしないで」って人ほど優しさを求めていて、優しさのなんたるかを知っている。
「優しくありたーい」って人ほど優しく出来ない、人に優しくするのはとても簡単ということを知らない。
自分の定規を心にあてて
真っ直ぐな線を引こうとしても
笑いや涙の絵具で描く人生は
誰もが主人公だから一直線には
線は引けない。
白くて大きな優しさは
笑いや涙で染められた
誰もが主人公の脱線だらけの
線を包むこと。
「優しくしないで」って人ほど、そのことを知っているもの。
2024年5月2日
心幸
カラフル
光のプリズムが君を背中から照らした。
君の笑顔が逆行で見えなくなったけど
笑顔の残影がしっかり残ったよ。
1986年冬、やって来た、謎の転校生。
本当は2024年の少年、私の会えなかった息子なのかも知れないと思った。
少年は17歳の私を見に来た、15の夜の姿で。私の青春で私と同じにその時代の学生服を着て一緒に暮らした。
暮らせなかったから、そうした。
砂漠みたいな世の中で、カラフルに光る虹の橋を渡って、謎の少年は会えなかった人に会いに来た。
年下だけど、ずっと前から知っていたような、守られているような、そんな気にさえなる、まだ何者でもない17歳の私だった。
やがて、光のプリズムは君を背中から照らし君は光の中に消えて行った、見えなくなったけど笑顔はしっかり私の心に残ったよ。
2024年冬…。
もう、私はおばあちゃんになった。
私には、会えなかった息子が一人います。
今時々その虹の橋に消えた少年のことを思い出すのは、あれは会えなかった息子が会いに来てくれていたのではなかったかそう思うのです。
もっと、抱きしめてあげれば良かった。
そんな昔話を語ってくれる認知症のおばあちゃんがいました。
随分と歳を召され
記憶は時々曖昧になり
忘れぽくなったよと仰っても、生き生きと鮮やかに蘇るように語られる昔話
おばあちゃんは、十七歳で
息子か初恋の人にもう一度会ったのか分からない、そんな昔話を聞いた。
おばあちゃんの頬は鮮やかに輝いて
カラフルな光のプリズムの向こうに消えた
初恋の彼なのか、会えなかった息子なのか分からない謎の少年の光る笑顔だけを鮮やかに記憶している様であった。
カラフルなぼんやりとしたけれど、最後まで覚えている笑顔。
おばあちゃんのカラフルな昔話を聞いた。
2024年5月1日
心幸
楽園
みどりなす自然の息吹
悲しい光を秘めた純金
芽吹く葉は花ひとつ
だが それもたまゆら
やがて葉は葉として落ち
その時エデンの園にも
悲しみは訪れたのだ
かくて 夜明けは
日に移る
輝くものは
輝きのままにとどまらず
S . E . ヒントン 「アウトサイダー」
わたしたちは、悲しみも苦労もない楽園に暮らしていました。
神の用意した住まいに兄弟姉妹と共に
弟は父に愛されていた
兄は父の愛に渇望し悲しみと嫉妬を知った
姉妹は美しさを競った
神は人は独りでいるのは寂しかろうと助け合うものを創ろうとしましたが、助け合いとともに争い合うものも人と人とは創ってしまわれたのでした。
独りの男の肋をとってつくられたもう一人の女彼と彼女は幾人もの兄弟姉妹を産み助け合いましたがまた争い合うことも覚えてしまったのです。
独りの男と女は最初エデンの園という神が用意した楽園に暮らしていました。
エデンの園には美しい木や、実のなる木が沢山あり、美しい水の流れる泉もありました。そしてエデンの園の中央には「善悪を知る木」がありました。
神様は二人に「園にある木から好きな実をとって食べなさい。ただし善悪を知る木の実は決して食べぬように」と言われていたのでした。何不自由なく美しい楽園の中純真無垢な男と女は生まれたままの姿で、神様との約束を守り暮らしていました。
ところが、ある時悪魔から知恵を授けられた白いヘビがやって来て、女に「神様はどの木から実をとって食べてはいけないと言ったのかい」と聞きました。女は答えました「いいえ、どの木からもとって食べなさいと仰いました。ただ善悪を知る木の実は決して食べてはならぬと仰いました」ヘビは女の耳元で囁きます「善悪を知る木の実を食べると神様のように善悪が分かるようになるんだよ!神様は君たちが神様にならないように善悪が分かる木の実は食べちゃいけないと仰っているのさ、分かるかいこの意味」
女はその真ん中にある木の実が、それはそれはとても光輝いて美味しそうに見えたのでした。そしてまた、食べると神様のようになれるという白いヘビの言葉をおもうのでした。
そうして、羨望という思いを知ってしまうのでした。
女はついにその善悪を知る木の実に手を伸ばして男と共に食べてしまうのでした。
善悪を知る木の実を食べた瞬間、男と女は互いに裸でいることを知り恥じらいを知って体を隠すようになりました。
神様は二人に「食べたのか?」と尋ねました。
男は女に勧められたと言い女は白いヘビに勧められたと言いました。
こうして二人は言い訳を知り神様は「女、汝これから先子供を産む苦しみを知るだろう」「男、汝 これから一生戦い凌ぎ合い続けるのだ」
こうして男と女はエデンの園を追放され、2度と楽園に戻ることは許されず、二人の子孫たちは、凌ぎ合い競い合い戦い続ける道に生きることになるのでした。
善悪とは悲しみを知ることなのかも知れません。楽園で生きていた頃は知ることもなかった善悪は楽園の外に溢れていました。
これが最初の罪と罰でした。
旧約聖書 「創世記」引用
2024年4月30日
心幸
風に乗って
風に乗って君はまた僕の肩に降り積もりにやって来た。数ヶ月前「あなたの肩に降り積もる雪になりたい」と囁いた君は深々と静かに降り積もり僕の肩を白くしてやがて消えた。
外套の肩先に君の涙の跡がいつまでも残っていた。
「今度は消えない姿で戻っておくれ」
僕は外套に残った君の涙の跡を撫でながら呟いた。
やがて、春が来て風に乗って君は戻った。
今度は薄紅色の羽衣を纏って
ハラハラと僕の肩に降り積もる
「今度は雪じゃないから消えないは」
彼女の子供のような声が僕の耳に届いた。
僕は肩に止まった薄紅色の彼女を掌に乗せて
「おかえり」
そう、呟いて
肩に舞い降りた桜の花弁をそっとハンカチに包んだ。
いつまでも一緒にいよう
君降る午後
2024年4月29日
心幸