カラフル
光のプリズムが君を背中から照らした。
君の笑顔が逆行で見えなくなったけど
笑顔の残影がしっかり残ったよ。
1986年冬、やって来た、謎の転校生。
本当は2024年の少年、私の会えなかった息子なのかも知れないと思った。
少年は17歳の私を見に来た、15の夜の姿で。私の青春で私と同じにその時代の学生服を着て一緒に暮らした。
暮らせなかったから、そうした。
砂漠みたいな世の中で、カラフルに光る虹の橋を渡って、謎の少年は会えなかった人に会いに来た。
年下だけど、ずっと前から知っていたような、守られているような、そんな気にさえなる、まだ何者でもない17歳の私だった。
やがて、光のプリズムは君を背中から照らし君は光の中に消えて行った、見えなくなったけど笑顔はしっかり私の心に残ったよ。
2024年冬…。
もう、私はおばあちゃんになった。
私には、会えなかった息子が一人います。
今時々その虹の橋に消えた少年のことを思い出すのは、あれは会えなかった息子が会いに来てくれていたのではなかったかそう思うのです。
もっと、抱きしめてあげれば良かった。
そんな昔話を語ってくれる認知症のおばあちゃんがいました。
随分と歳を召され
記憶は時々曖昧になり
忘れぽくなったよと仰っても、生き生きと鮮やかに蘇るように語られる昔話
おばあちゃんは、十七歳で
息子か初恋の人にもう一度会ったのか分からない、そんな昔話を聞いた。
おばあちゃんの頬は鮮やかに輝いて
カラフルな光のプリズムの向こうに消えた
初恋の彼なのか、会えなかった息子なのか分からない謎の少年の光る笑顔だけを鮮やかに記憶している様であった。
カラフルなぼんやりとしたけれど、最後まで覚えている笑顔。
おばあちゃんのカラフルな昔話を聞いた。
2024年5月1日
心幸
5/1/2024, 1:54:53 PM