「優しくしないで」
女は、意地を張ってそう言った。
「一人でも大丈夫だから」
女は、泣かないようにフッと息を吸った。
「どっか、行ってよ鬱陶しいなぁ」
女は、背中を向けてそう言った。
男と遊んでるふりしてみたり
女のつけぬ香水つけてみたり
夜明けを待って帰れば
背を向けて捨て台詞
可愛い悪女は
素直になれずに
独り泣く
「優しくありたーい」
女は、私は優しいと言わんばかりにそう言った。
「みんな違ってそれで良い」
そのくせ、顔の見えないところで
馬鹿だの下品だの下衆だの指を指す。
そのくせ、繊細さん
そのくせ、ヒステリック
そのくせ、他人のそれは許さない。
本当の悪女とは
こんな感じかと…。
「優しくしないで」って人ほど優しさを求めていて、優しさのなんたるかを知っている。
「優しくありたーい」って人ほど優しく出来ない、人に優しくするのはとても簡単ということを知らない。
自分の定規を心にあてて
真っ直ぐな線を引こうとしても
笑いや涙の絵具で描く人生は
誰もが主人公だから一直線には
線は引けない。
白くて大きな優しさは
笑いや涙で染められた
誰もが主人公の脱線だらけの
線を包むこと。
「優しくしないで」って人ほど、そのことを知っているもの。
2024年5月2日
心幸
5/2/2024, 3:08:32 PM