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君と出逢って

まだ、あげたばかりの君の前髪が
桃の花の下に見えた時
前髪にかかった桃の花が
髪飾りのように見えて
なんて美しいと思った。

楓のような手をのばし
桃の実をもぎ取って
頬張り僕に笑いかけた
桃をぺろりとたいらげて
屈託なく笑う君に

僕は初めて甘酸っぱい
香りに胸を踊らせた

思わずもらした
ため息が
君の髪にかかったとき
恋に踊る愉しさを知った

甘い香りの立つ
桃の樹の下に
自然と出来た
細い道

誰かが通って出来たのか
これから 君と僕も
通るのか

誰もがみな
この道を通るのか

初めて君と
手を繋ぐ
甘い桃の香りが
鼻をかすめた

君と僕は
出逢った
君の花は散らない

50年前の
あの日のまま
君の花は散らない

皺の刻まれた
手も あの日のままに
小さくて楓のようで

桃の実を
頬張り笑う
横顔もあの日のままに
快活で

愉しそうに
笑う君と
手を繋ぐ

「ありがとう」と言う変わりに

ぎゅっと
その手を握りしめる

君は
この細い道は
あなたとわたしの道のり
そう言って
また 笑う

「ありがとう 待っていてくれて」

「待っていたは 遅れないでね」

僕と君は
初めて出逢った場所から
また、その細い道を歩き始める
彼岸まで一緒に・・・

「いいや、来世でも君を見つける」

「待っていてくれ、君の好きな桃の樹の下で」

「見つけてくれて有難う」

微笑む君が愛おしい。


2024年5月5日

                 心幸  


5/5/2024, 1:22:47 PM