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4/13/2024, 1:46:38 PM

快晴

ひこうき雲
    
      荒井由実

白い坂道が空まで続いていた
ゆらゆらかげろうが あの子を包む
誰も気づかず ただひとり
あの子は昇っていく
何もおそれない そして舞い上がる

空に憧れて
空をかけてゆく
あの子の命はひこうき雲

高いあの窓で あの子は死ぬ前も
空を見ていたの 今はわからない
あまりにも若すぎたと ただ思うだけ
けれど しあわせ

空に憧れて
空をかけてゆく
あの子の命はひこうき雲…。


今日は、快晴で桜がひらひら舞い落ちて
桜の季節も通り過ぎようとしていました。

夫と二人あなた達のお墓参りにゆきました。
少し早い、白いカーネーションの花束を抱いて。

こうして、私がいることを、あなた達は見ていてくれていますか?

あまりにも早すぎて
あなた達に会わせられなかった、彼と彼が夫になって、私が夫と作った私の家族。

きっと、見ていてくれていると信じています。

快晴の空に掛かる、あのひこうき雲に乗って
あなた達は、私たちを桜の花びらで迎えてくれたでしょう。

知ってるよ、わたし。

あなた達の命を乗せたひこうきは、何時だって、わたしの空を旋回しやがてやがて迎えに来ると。

その日を、わたしは楽しみに待っています。

今じゃないね、いつかきっと。

それは、わたしが決めることじゃない。

わたしは、その日、夫とわたしが夫とつくった家族に「ありがとう」と言って あなた達の迎えのひこうきに乗って、きっときっとひこうき雲になるわ。

その日まで、もう少し頑張ります。

見ていてね、そして必ず迎えに来てね。

お父さん、お母さん。

そして、いつかは、わたしもひこうき雲になって、誰かを迎えにゆけますように。

そうなれる道を
本日快晴。

2024年4月13日

心幸



              


 

4/12/2024, 11:42:55 AM

遠くの空へ…

遠くの空へ向かって投げたつもりのボールに。

「暴投ばっかり投げてんじゃねぇよ!」

指差して笑う声が響いた。

海の見える教室で二人は同じ時を過ごした。

「とばすなって」「遠くへ行くなって」

彼の口癖だった。

何時だって、何故だか

「タンポポの綿毛みたいに、ふわふわと飛んでいくみてえだな」

そう言っていた。

私は、何時だって、何故だか

それが嬉しくて、わざとそんな掴めない感じを演出したかった。

それが、好意だったと互いに気づくのに三年かかった。

卒業証書を抱いてあなたの横を歩いた。
変らない自信なんてなかった、でも好きです
今が…今とても。

桜が青葉に変わる頃

新しい住所を握りしめて泣いた。

始めて、違う世界で生きてゆくことを実感した。

失う時はじめて知った、輝いた日々。

輝くものは輝きのままにとどまらず、緑の葉は芽吹く。

遠くの、遠い空へ…

「ありがとう、あなた。きっと幸せに」

言葉を投げた。



4/11/2024, 2:55:29 PM

一握の砂

石川啄木

この詩を君に捧ぐ。すでにすべてを君の前に示しつくしたるものの如し。
従って君はここに歌われたる歌の最も多く知る人なるを信じればなり。
また一本をとりて亡児真一に手向く。
この稿本を手に渡したるは汝の生まれたる朝なりき。
この稿料は汝の薬餌となりたり。
この稿本の見本刷を閲したるは汝の火葬の夜なりき。

                著者

ただ、ただ 愛しいと書いて「かなしい」 
という、心を教えてくれたあなた。

東海の小島の磯の白砂に
われ泣きぬれて
蟹とたはむる

頬につたふ
なみだのごはず
一握の砂を示しし人を忘れず

いのちなき砂のかなしさよ
さらさらと
握れば指のあひだより落つ

しっとりと
なみだを吸へる砂の玉
なみだは重きものにあるかな

たわむれに母を背負ひて
そのあまりに軽きに泣きて
三歩あゆまず

たわむれに母を背負ひて
そのあまりに軽きに泣きて
三歩あゆまず…

別れの朝 
小さな小さなあなたの手は冷たかった
幼き日
手を握りしめた
あの温もりを 探したけれど
あなたは逝ってしまって

冷たい身体が横たわっていた
それでも 我は赤子のように
あなたの小さな小さな冷たい
身体を抱き締めて
手を握りしめて

言葉にできない 
気持ちに声をつまらせていた。

青い青い
春の朝だった

言葉にできない
忘れることの出来ない

春の朝だった

言葉にできない思い

母よ… 


2024年4月11日 

               心幸



   

4/10/2024, 1:33:23 PM

春に🌸    

      谷川俊太郎

この気持ちはなんだろう
目に見えないエネルギーの流れが
大地からあしのうらを伝わって
ぼくの腹へ胸へそうしてのどへ
声にならないさけびとなってこみあげる
この気持ちはなんだろう
枝の先のふくらんだ新芽が心をつつく

よろこびだ しかしかなしみでもある
いらだちだ しかもやすらぎがある
あこがれだ そしていかりがかくれている

心のダムにせきとめられて
よどみ渦まきせめぎあい
いまあふれようとする

この気持ちはなんだろう
あの空の青に手をひたしたい
まだ会ったことのないすべての人と
会ってみたい話してみたい
そのくせこの草の上でじっとしていたい
大声でだれかを呼びたい
そのくせひとりで黙っていたい
この気持ちはなんだろう
 
弱さや狡さを隠さない強さ。
たおやかな生命の息吹き…谷川俊太郎92歳


「よろこびだ しかしかなしみでもある
 いらだちだ しかもやすらぎがある
 あこがれだ そしていかりがかくれている…」

ここが1番好き。

「まだ会ったことのないすべての人と会ってみ  
 たい話してみたい
 そのくせ草の上でじっとしていたい
 大声でだれかを呼びたい
 そのくせひとりで黙っていたい…」

ここが1番沁みる

この気持ちはなんだろう

冬は去り気づけば春爛漫なのだ

この気持ちはなんだろう


2024年4月10日


  心幸

4/9/2024, 2:46:44 PM

誰よりも、ずっと。

「3人の魔女へ」

いつまでも、ずっと。
誰よりも、ずっと。
そんな、ことを簡単に口にするのは嘘つきの始まりで、ずっと愛してる、ずっと友達、ずっと見つめてる、ずっと君だけ、あなただけ…。嘘を積み重ね、そんなつもりじゃなかった、ごめんなさいと許してもらう為に直ぐに口先だけ謝る狡賢さ。アナタは何も分かっていないなんて平気で言えて、自分の傷には敏感で他人の傷には鈍感で、優しく有りたいと素直ぶり、正しい正しくないと騒ぐ魔女。

そんな可哀想な3人の魔女が昔々におりました。

ひとりは、甘いチョコレートが大好きでした。
ひとりは、桜もちが大好きでした。
ひとりは、麦茶が大好きでした。

3人の魔女たちは、嘘をつき夜ごと姿を変える不実な月を見上げては呪文を唱えます。何故なら3人は3人ではなく1人きりの寂しい魔女の自慰行為だったからです。

寂しい1人の魔女は夜ごと姿を変える月に名前をつけてソウルメイトにしたのでした。

これで、1人も怖くない。
あいつに仕返しだ。

魔女は月明かりの下呟くのでした。

これからも、ずっと
誰よりも、ずっと

私だけ見つめてる。

嘘を隠し夜ごと姿を変える月に誓う。

私を見つめ、私を傷つけるものを私は決して許さない…。

いつまでも、誰よりもずっとずっと追いかけ続ける、悲しい欲望の本当は1人の3人の魔女の自慰行為を月は見ていた。

誰よりも、そっと、ずっと。

2024年4月9日 

                心幸


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