遠くの空へ…
遠くの空へ向かって投げたつもりのボールに。
「暴投ばっかり投げてんじゃねぇよ!」
指差して笑う声が響いた。
海の見える教室で二人は同じ時を過ごした。
「とばすなって」「遠くへ行くなって」
彼の口癖だった。
何時だって、何故だか
「タンポポの綿毛みたいに、ふわふわと飛んでいくみてえだな」
そう言っていた。
私は、何時だって、何故だか
それが嬉しくて、わざとそんな掴めない感じを演出したかった。
それが、好意だったと互いに気づくのに三年かかった。
卒業証書を抱いてあなたの横を歩いた。
変らない自信なんてなかった、でも好きです
今が…今とても。
桜が青葉に変わる頃
新しい住所を握りしめて泣いた。
始めて、違う世界で生きてゆくことを実感した。
失う時はじめて知った、輝いた日々。
輝くものは輝きのままにとどまらず、緑の葉は芽吹く。
遠くの、遠い空へ…
「ありがとう、あなた。きっと幸せに」
言葉を投げた。
4/12/2024, 11:42:55 AM