ずっと隣でケラケラ笑って楽しそうにしているその人の見せない悲しみを勝手に見つけた。自分に見せる気もないだろうそれを見てしまってから人生が狂うほどに執着している。向こうはきっと疾うの昔に次へと進んでその悲しみを拭う人を見つけているっていうのに自分は未だにその日の衝撃を忘れられない。ずっときっと思うことすら騒がしい。自分は騒がしい割には静けさを愛する人だったから。静かな愛をあの日の自分に渡すように伝えたかった。
もっと知りたい小さな頃はそんなことばかりだった。たくさんの不思議がいろいろなものの裏に隠れているようでそれは自分の頭の中の想像を刺激し続けていて楽しくて仕方ないその不思議を追いかけるように知りたがった。だんだんと知るたびにその不思議はすり減るようになっていくそれに気付くたびに知ることに二の足を踏んで段々と言い訳を重ねていく。世の中は誰かが差し出した時間の積み重ねで出来上がっていくそのことに気付くたび不思議はどんどん干からびていくその寂しさが苦しくて。頭の中のワクワクがそれまで無知だった自分を笑うように消えていく。
絆とか縁とか人とのつながり指す言葉を聞くたびなんとなく糸のようなものを想像する。誰かと誰かをつなぐ糸なんとなく運命の赤い糸とかを連想するのかもしれない。あいにくそれには縁が無いが。自分の糸はどこにもつながっていないような気がして自分の身体にばかりがんじがらめに巻き付いたそんな糸を想像する。前をゆくカップルだろう女性にデレデレとした男の姿を見ながらそんなことを考えていたら飲み屋のキャッチにつかまった。これも縁と思ってなどと言われ一瞬先ほどまでの思考に引きずられかける。その縁はお呼びじゃないです。
大好きな君に忘れ去られてしまうぐらいならとことん嫌われても記憶に残りたいなんて罪でもおかしそうな思考を理性という箱に入れて鍵を掛ける。そんな思考が一瞬でも浮かんだ自分が許せなくて、潔癖な振る舞いをしたがる偽善の仮面を被って素知らぬ顔ですれ違う。そんな思いを抱える自分ばかり見て相手を見ないくせに本当に好きだなんて自分でも信じられない。真っ当な思いだけで生きていきたかったと真っ当だなんて信じがたいような感情を抱えて生きていく。君を通して自分を眺めて君には知られないままこの自己愛で窒息する。
たった一つの希望のようで案外希望はそこら辺にいくらでもあるような気がするときがある。たんに気づいてないか見ていないかの違いなだけかも。大体においてはなんとでもなるのだけれどもそれでもなんだか不安で心配になる。どうにでもなるのではないかというなんとなくの希望を信じるにはずいぶんと不安と行動が心を曇らせすぎたのだろう。まあ仕方ないどうにでもなるそんなことを思いながらどうにかなるだろうと信じきれない希望を抱えてのんびり生きる。