『再開/出発』
「ここにいたんだね」
綺麗な花がたくさん咲き誇っている。そんな場所に彼はいた。
背に乗せて運んでくれた子にお礼を言う。その子は嬉しそうにくるると鳴いて小さくなった。
彼の隣まで歩き、腰を下ろす。
「久しぶりだね」
「…うん、久しぶり」
平静を装って話しかける。正直、聞きたいことはいっぱいあった。どうしていなくなったのか、どうしてあの時あんなことを言ったのか。どれから聞こうか考えていると、彼から質問が来た。
「どうしてここに?」
私は深く息を吸って口を開く。
「…貴方を探していたのよ。いくつもの地方を回ってようやく貴方に辿り着いた」
彼の表情は変わらない。
「ねぇ、覚えてる?前に貴方が私に言ったこと。"夢はあるのか"って聞いてきたよね。あの時は無いって答えたけど……私、夢が出来たの」
立ち上がり、彼の前に立つ。見上げてくる彼に向かって手を伸ばした。
「ねぇ、私と一緒に夢を叶えない?きっと楽しくなるよ!」
「…何故、ボクなんだい?君にはあの幼馴染や他の人たちがいるだろう?」
「ううん、貴方がいいの」
誰よりも平和を望む貴方だから。
彼はしばらく迷っていたけれど、引く様子のない私を見てため息をついた。
「…しょうがない。キミ1人じゃ危なっかしいからね」
眉を下げて笑う彼が私の手を掴んだ。嬉しくなった私は勢いよく手を引っ張る。よろけながら彼も笑った。
「もう"サヨナラ"なんて言わせないから!」
【君と一緒に】
『貴方がいない世界』
はぁと息を吐き出す。白い煙は直ぐ空気に溶けた。
空はこんな快晴なのに、私の心は曇りを見せていた。
「みんなに心配かけちゃったよなぁ…」
出かけてくると言った時のことを思い出す。みんな態度や口には出さないものの、心配だと目が物語っていた。主に彼のことを知っている3人。彼のことを知ってから、あからさまに私に向ける目が変わった。同情か、憂慮か……
私は右手に嵌めている指輪に触れる。
「また会おうって言ったのに……」
どんな形でもいいから会いたかった。例え、貴方と戦うことになったとしても。
「嘘つき……」
私の願いはもう叶わない
【冬晴れ】
『いつもの日常』
2人並んでリビングのソファに座る。ご飯もお風呂も終えたので、後は寝るだけだ。
隣にいる彼を見ると本を読んでいる。
「ねぇ」
「ん?どうした?」
本を閉じてこちらに向き直ってくれる彼。彼の顔をまっすぐ見ることができず、立てた両膝に顔を埋めながら口を開く。
「今日本当に何もしなくて良かったの?」
「え?…あぁ、気にしてるのか?」
「気にするよ!だって結婚記念日だよ!?」
そう、今日は私たちの結婚記念日。結婚している友達に聞くと、結婚記念日には豪華なディナーを食べたり、特別な場所に出かけたりしたらしい。なのに今日の私たちは普段と変わらない生活だった。
そのことを伝えると、彼はふっと笑い私の頬を撫でる。彼のまっすぐな目に見つめられ、ドキッと胸が高鳴った。
「俺はそれが良かったんだよ。いつもの時間に起きて、買い物に行って、ご飯を食べて、お風呂に入る。そんな、普段と変わらない生活が良かったんだ」
そう話す彼の顔は優しい。
「結婚記念日だからこそ、この過ごし方が良かったんだ。これからもこんな生活が出来ますようにって。一種の願掛けみたいはものかな」
そっか、と息が漏れた。こんな気を張る必要なかったんだ。安心したら体の力が抜けていく。そのまま彼の肩にもたれかかった。彼も笑って私の肩を抱き寄せる。
「俺と一生一緒に過ごしてくれますか?」
それはプロポーズと同じ言葉だった。今度は彼の瞳をしっかりと見て答える。
「はい、よろこんで」
彼はあの時と同じように嬉しそうに笑ったのを見て、私も同じように笑い返す。いつもより甘い顔をした彼の顔が近づいてくる。私はこの幸せがずっと続きますようにと願いながら、目を閉じた。
【幸せとは】
『新しい世界で』
「あーもう、なんなのよ。こんな朝早く起こして」
ふわぁと大きな欠伸をしながら、ブツブツと文句を言う男に「うるせぇ」と返す。寒そうに身震いする男は首に巻いているマフラーに顔を埋めた。
「何処に向かってるのよ」
「秘密」
男は「はぁ?」と眉をひそめた。
「良いとこ連れてってやるから。黙って着いてこいよ」
男はそれ以上言い返すことはせず、またマフラーに顔を埋めた。
「はぁ!?海!?」
20分ぐらいで着いた場所は海だった。まだ辺りも薄暗いため、誰もいない。波の音だけが響いていた。
「うぉ…!さみぃな…」
「そりゃあね!海だからね!こんな所に来るなんて馬鹿なの!?……あ、馬鹿だったか」
「はぁ!?馬鹿って言うなよ!」
言い返すと、べーっと舌を出される。「こんの…!」と拳を震わせたが、男は気にしてないように海へ目線を向けた。
「で?どうしていきなり海なんか?」
俺はスマホを取り出して時間を確認する。スマホには6時50分と表示されていた。
「もうすぐだ」
「もうすぐって何が…」
そう男が言いかけた時、眩しい程の光が目に入る。男はびっくりしたように手で目を隠したが、次の瞬間にはその光景に目を奪われていた。
日の出だ。水平線から太陽が上り、海と空をオレンジ色に染めている。赤い壁なんてない、それはとても神秘的な光景だった。
「どうだ、綺麗だろ」
「あぁ…」
男は小さな声を零し、白い息を吐き出した。俺は口角を上げ、海へ目線を向けた。隣で流れる雫を見てないフリをして。
【日の出】
推し活ばかりじゃなくて、自分磨きにも力を入れる!!
【今年の抱負】