『新しい世界で』
「あーもう、なんなのよ。こんな朝早く起こして」
ふわぁと大きな欠伸をしながら、ブツブツと文句を言う男に「うるせぇ」と返す。寒そうに身震いする男は首に巻いているマフラーに顔を埋めた。
「何処に向かってるのよ」
「秘密」
男は「はぁ?」と眉をひそめた。
「良いとこ連れてってやるから。黙って着いてこいよ」
男はそれ以上言い返すことはせず、またマフラーに顔を埋めた。
「はぁ!?海!?」
20分ぐらいで着いた場所は海だった。まだ辺りも薄暗いため、誰もいない。波の音だけが響いていた。
「うぉ…!さみぃな…」
「そりゃあね!海だからね!こんな所に来るなんて馬鹿なの!?……あ、馬鹿だったか」
「はぁ!?馬鹿って言うなよ!」
言い返すと、べーっと舌を出される。「こんの…!」と拳を震わせたが、男は気にしてないように海へ目線を向けた。
「で?どうしていきなり海なんか?」
俺はスマホを取り出して時間を確認する。スマホには6時50分と表示されていた。
「もうすぐだ」
「もうすぐって何が…」
そう男が言いかけた時、眩しい程の光が目に入る。男はびっくりしたように手で目を隠したが、次の瞬間にはその光景に目を奪われていた。
日の出だ。水平線から太陽が上り、海と空をオレンジ色に染めている。赤い壁なんてない、それはとても神秘的な光景だった。
「どうだ、綺麗だろ」
「あぁ…」
男は小さな声を零し、白い息を吐き出した。俺は口角を上げ、海へ目線を向けた。隣で流れる雫を見てないフリをして。
【日の出】
1/3/2026, 3:25:00 PM