恋をする時は、人が弱っているところに漬け込むのが1番上手くいく方法だとネットに書かれているのを見た。私は、そういうものなんだと思いながらも、一方で気持ち悪いと感じていた。
まさか、自分がその局面に立たされると思わなかった。私は誰ともトラブルにならないように人と接してきたつもりだった。
しかし、私の行動を好意から来るものだと勘違いした人間が数多くいた。私は、幼い頃から母親を言いつけを守って誰にでも平等であるように徹してきた。
それは、私にとっては当たり前のもので今更変えるべきことでは無かった。
それなのに、どうしてアイツは私に近づくことができると思っているのだろうか。君が好きな私は、私が外で生きるために作ったものだ。
本当の私の姿を見せるほど気を許した訳では無いのに、プライベートの過ごし方などをズケズケと聞いてくる、また明日と私に夢を見ているアイツが私にとってはストレスでしかない。
また明日なんて言葉、アイツから聞きたくない。
お終い
追記 君と出逢ってと繋がっています。
透明なものというのは、一時の流行りと共に去った印象が強い。いつ頃かは忘れてしまったが、透明なコカコーラとか何でも透明にしていたような気がする。
あなた達は、透明な飲み物というと何を真っ先に思い浮かべた?
私は、透明な飲み物というとヨーグリーナを思い出す。季節によって限定の味が出るのを少し楽しみにしているのだが、嫌な思い出も詰まっている分、昔ほど純粋に美味しいと喜べなくなってしまった。
やっぱり、不純物が混じると味って変わるのだろうか。
飲み物は透明、記憶は濁っている。
お終い
画面の向こうにいるあの人はどんな姿をしているのだろう。きっとこのイラストのように、イケメンで高身長で勿論声も性格もいい素敵な人に違いないわ。
だが、現実というものは残酷であり私が溺れていた夢にはヒビが入った。画面の向こう側のあの人は、私の理想とはかけはなれたものだった。
「嘘つき、嘘つき嘘つき!」
理想のあなたじゃない、あなたなんて私いらない。
そんな偽物いらない、私は画面の向こうのあなたを信じてる。ねえ、目の前のあなたは嘘よね。
ちゃんと、確かめてあげる。あなたが本当のあなたになれるように私が助けてあげる。
決意を固めて、部屋のチャイムを鳴らした。
「はーい。」
ガチャリと金属音をたてて開いた扉の先は、やはりあの人ではなかった。
「裏切り者が!」
私は手に持っていたナイフをそいつに突き刺しってやった。
理想のあなた以外は、いらない。
お終い
「ごめん、やっぱりお前のこと好きじゃない。」
そう告げられて俺の6ヶ月の恋は終わりを迎えた。
相手は別に男が好きな訳じゃなかった。ただ、俺が告白した時、俺ならいいと答えてくれて本当に嬉しかったんだ。
でも、その人は俺を捨てて新しい人を隣に置いた。
捨てられた俺は、負け組と呼ばれる人達の仲間入りを果たしてしまった。
だから、俺はもう誰も好きになりたくない。傷つくって学んだから。
「なら、どうして私にその事を話したんだ?」
「それは…分かりません。」
本当は分かってる。担任が昨日、女子生徒の恋話に耳を傾けているのを知って、俺とあの子の何が違うのか知りたくて担任のところに足を運んだんだ。
「何を期待して私に独白したのか知らんが、
ひとつ言えるのは君は別に傷ついちゃいないよ。
ただ、自分を慰めてくれる人間を求めているだけ。
でもね、結局自分を救えるのはいつだって他人
ではなく己自身なんだ。
他人はあくまでその補助をすることしか出来ない。
私は君が、新しい自分への選択ができることを提示
することくらいしか出来んよ。」
「新しい自分ですか…」
「君が傷ついていると感じたのは、相手の求めていた
理想像の自分が傷つけられた事であって本当の自分
のことじゃない。」
その言葉で脳のモヤが霧のように晴れていく気がした。
自分が沈めていた事実を担任の言葉は、急浮上させた。そうだ、俺は俺が傷ついた事実に依存していたのだ、そうすれば俺を助けてくれる人物が優しくしてくれると思い上がって、本当の理由からは逃げ続けていた。でも、担任は隣に立ってくれた。俺を前からではなく、横から助けてくれた。憐れみなんかじゃない、あの人とは違う優しさが確かにそこにはあった。
担任の言葉は俺には必要なもので、俺自身が皮を被り
続けていたという事実に再び気づかせてくれた。
俺は、担任に礼を言い家への道を辿って行った。
もう、振り返る必要はない。だって、俺はもう新しい
自分だから。
突然の別れ、されど寂しさは必要なし。
お終い
追記 恋物語と繋がってます。
教師も同一人物です。
恋物語の生徒は、自分が傷つくことを恐れてはおらず新しい自分への道を迷わず選択するタイプの子でした。
突然の別れの生徒は、傷ついた事実に怯え一生今の自分でいるという選択をしようとしたところを教師がまだ変わるチャンスがあるということに気づかせ決心がついて選択をした子でした。
「先生、私女の子が好きなの。」
そう言いきった彼女は、私の表情を伺っていた。
たぶん、私がそういったデリケートな問題に嫌悪感があるか確かめているのだろう。
「いいんじゃない?」
私は、別にそういった類に興味がある訳では無い。
だが、理解はある。このご時世なんでも常識が移り変わる世界では常に情報をアップデートしなければ会話を脳に受け付けてもらえなくなる。
女子生徒はこの返事にホッとしたのか、次々と恋物語を喋りだした。
私は、女子生徒の話す内容に時々疑問を投げかけながら自問自答をさせた。
「先生、私どうすればいいかな?」
「さあ、私はそういうの経験したことないから知らん。」
この返事に女子生徒は顔を白くさせた。
そりゃあ先程まで親身になって答えてくれた人間が、急にぶっきらぼうな返事をしたら顔も血の気が引く。
そして、私はこうも続けた。
「でも、たとえ貴方がOKでも相手がNOなら駄目なの。
人は、YESかYESじゃないかで物事を決める。
失敗するのもその選択が間違っていたからだ。
だけど、恋の失敗は間違っていても悪いことには
ならない。
恋の失敗は新しい自分への可能性を提示してくれる。
それに乗っかるかは、自分次第だよ。」
言い切った後に、らしくもないことをしたと少し後悔した。私は、恋愛に関しては専門外なんだ。
だが、女子生徒は私の無理やり出した返事に背中を押されたのか明日告白すると宣言して帰ってしまった。
いや、なんで教師の私が生徒の恋に一喜一憂させられなきゃいけないんだ。
次の日、あの子達は-----
恋物語を始めたとさ。めでたしめでたし。
お終い