黄桜

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「ごめん、やっぱりお前のこと好きじゃない。」

そう告げられて俺の6ヶ月の恋は終わりを迎えた。
相手は別に男が好きな訳じゃなかった。ただ、俺が告白した時、俺ならいいと答えてくれて本当に嬉しかったんだ。
でも、その人は俺を捨てて新しい人を隣に置いた。
捨てられた俺は、負け組と呼ばれる人達の仲間入りを果たしてしまった。
だから、俺はもう誰も好きになりたくない。傷つくって学んだから。

「なら、どうして私にその事を話したんだ?」

「それは…分かりません。」

本当は分かってる。担任が昨日、女子生徒の恋話に耳を傾けているのを知って、俺とあの子の何が違うのか知りたくて担任のところに足を運んだんだ。

「何を期待して私に独白したのか知らんが、
ひとつ言えるのは君は別に傷ついちゃいないよ。
ただ、自分を慰めてくれる人間を求めているだけ。
でもね、結局自分を救えるのはいつだって他人
ではなく己自身なんだ。
他人はあくまでその補助をすることしか出来ない。
私は君が、新しい自分への選択ができることを提示
することくらいしか出来んよ。」

「新しい自分ですか…」

「君が傷ついていると感じたのは、相手の求めていた
理想像の自分が傷つけられた事であって本当の自分
のことじゃない。」

その言葉で脳のモヤが霧のように晴れていく気がした。
自分が沈めていた事実を担任の言葉は、急浮上させた。そうだ、俺は俺が傷ついた事実に依存していたのだ、そうすれば俺を助けてくれる人物が優しくしてくれると思い上がって、本当の理由からは逃げ続けていた。でも、担任は隣に立ってくれた。俺を前からではなく、横から助けてくれた。憐れみなんかじゃない、あの人とは違う優しさが確かにそこにはあった。
担任の言葉は俺には必要なもので、俺自身が皮を被り
続けていたという事実に再び気づかせてくれた。
俺は、担任に礼を言い家への道を辿って行った。
もう、振り返る必要はない。だって、俺はもう新しい
自分だから。

突然の別れ、されど寂しさは必要なし。

お終い

追記 恋物語と繋がってます。
教師も同一人物です。

恋物語の生徒は、自分が傷つくことを恐れてはおらず新しい自分への道を迷わず選択するタイプの子でした。

突然の別れの生徒は、傷ついた事実に怯え一生今の自分でいるという選択をしようとしたところを教師がまだ変わるチャンスがあるということに気づかせ決心がついて選択をした子でした。

5/19/2024, 3:55:30 PM