黄桜

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「先生、私女の子が好きなの。」

そう言いきった彼女は、私の表情を伺っていた。
たぶん、私がそういったデリケートな問題に嫌悪感があるか確かめているのだろう。

「いいんじゃない?」

私は、別にそういった類に興味がある訳では無い。
だが、理解はある。このご時世なんでも常識が移り変わる世界では常に情報をアップデートしなければ会話を脳に受け付けてもらえなくなる。
女子生徒はこの返事にホッとしたのか、次々と恋物語を喋りだした。
私は、女子生徒の話す内容に時々疑問を投げかけながら自問自答をさせた。

「先生、私どうすればいいかな?」

「さあ、私はそういうの経験したことないから知らん。」

この返事に女子生徒は顔を白くさせた。
そりゃあ先程まで親身になって答えてくれた人間が、急にぶっきらぼうな返事をしたら顔も血の気が引く。
そして、私はこうも続けた。

「でも、たとえ貴方がOKでも相手がNOなら駄目なの。
人は、YESかYESじゃないかで物事を決める。
失敗するのもその選択が間違っていたからだ。
だけど、恋の失敗は間違っていても悪いことには
ならない。
恋の失敗は新しい自分への可能性を提示してくれる。
それに乗っかるかは、自分次第だよ。」

言い切った後に、らしくもないことをしたと少し後悔した。私は、恋愛に関しては専門外なんだ。
だが、女子生徒は私の無理やり出した返事に背中を押されたのか明日告白すると宣言して帰ってしまった。
いや、なんで教師の私が生徒の恋に一喜一憂させられなきゃいけないんだ。
次の日、あの子達は-----

恋物語を始めたとさ。めでたしめでたし。

お終い

5/18/2024, 4:54:53 PM