題:命
命には、限りがある。
そんなことは分かりきっていた。
ーー私はそれを、否定した。
✧ ✧ ✧
楽しい日々だった。
ママは、魔法が少し使えたけど、私は完璧に使いこなせていた。
ママの魔法は、『人を幸せにする魔法』。
私の魔法は、『星を操る魔法』。
私はもっと他にも魔法が使えた。
……病気を治す魔法は、使えなかった。
ママは、不治の病に冒されていた。それは、長い年月をかけて、ママの身体を蝕んでいった。
私は病気のことを知らされていなかった。
きっと、私に心配をかけさせたくなかったんだと思う。
そうして、ママはいなくなってしまった。
✧ ✧ ✧
自分が魔女だと気付いたのは、チコのママを探しに星の世界に旅立ってからだった。
私は、とても長い間探した。
……見つからなかった。最初から分かっていた。
でも、泣いている私をチコが救ってくれた。
ーー自身の命の灯火を消して。
✧ ✧ ✧
それから私は、チコ達のママになった。
私はこの子達のママになってから、夜に必ずやることがある。
それは、灯火をチコ達と囲むこと。
私のために星になってくれたチコに感謝してーー。
お題『灯火を囲んで』
題:運命
ーー私のママは、病気だった。
ママからは、そんなことは聞かされていなかった。いつも元気だった。笑顔が綺麗だった。
無理をしているようには、とても見えなかった。
ママが出かけていたのは、多分病院に行って診てもらっていたのだろう。
そこでママは、不治の病だと、言われたのかもしれない。
パパはママの病気を何とか治そうと頑張っていたのだろう。私が知らないところで。
……どれだけ手を尽くしても、ママの病気は治らないと分かっていながら。
運命とは、神の与えた試練だと、私は思う。
神は乗り越えられない試練など与えないと信じている。
……ママは、死という試練を与えられた。
大切なものを捨て、散ることを。
その試練をなぜママに与えるのか。理不尽でならないと思っていた。
何度もママを連れて行かないでと、行かないでと、星に、神に願った。
でも、その願いが聞き届けられることは無かった。
運命には逆らえない。
それは、ママが一番よく分かっていたことだ。
なのに私は、運命が変わることを願った。こんな非力な私では、決して変えられないというのに。
……でもね、ママ。
大切なものを奪われた代わりに、大切なものができたの。
………好きな人が、できたんだ。
私はその人が愛おしくてたまらない。本当に大切なものを見つけた気がしたんだ。
この人だけは、行かないでほしいと、本気で願った。
お題『行かないでと、願ったのに』
題:手の温もり
皆さんこんにちは!キノピーチです!
今回も、私の推しであり同じレジェンドチームのあの二人についてです!
最近、寒いですよね?特に朝!その日もすごく寒くて……。寒〜って思いながら準備して皆さんと合流したんです(あ、レジェンドチームとね)。
そしたら、まだロゼッタさんが来てなかったんですよ。
まだ来てないんだって意外に思ってたんですけど、とりま居たリンクさんとロゼッタさんを待ってたんです。
それから十分くらいかな、ロゼッタさんが来たのは。
『冬服を探してたら遅くなってしまいました』って言ったロゼッタさんの服装は、トレンチコートだったんです。そのくらい寒いんですよね。
それでそのまま練習に行こうとしたんですけど……その時!!
リンクさんがロゼッタさんの手を両手で包んだんですよッ!!
で、『ロゼッタさん、手がすごく冷たいです。手が悴んで練習できなくなってしまいます』だって!!死んでも悔いなし!!
そしたらロゼッタさんの顔真っ赤で……。え、どう思ったか?
……好きなんだなぁって思いました。
誰か結婚式の準備をしろ!!って思ったくらいですもん。
レジェンドチームの二人尊い……。推しを近くで見られるなんて、これ以上の至極はありませんよ!
マジでリンクさんの手の温もりがこっちにまで伝わってきそうで……!叫びたくなるのを必死で我慢してましたよ!
私が推測するに、『手が悴んで練習できなくなってしまいます』という言葉は、照れ隠しだと思うんです。
いや~、あのまま結ばれて欲しいですね!
題:最高の一時を
(今日は彼が来るのだから、最高のおもてなしをしなくては……!)
ほうき星の天文台の書斎では、ロゼッタが熱心におもてなしについての本を読んでいた。
ロゼッタは普段、そんな本は読まない。しかし、彼女がその本を読んでいる理由は。
意中の彼ーーリンクが、天文台に来るからだ。
しかし、初めてのピーチ以外の初めての来客なので、バトラーに相談してみると……。
『来客におもてなしは当たり前ですぞ、ロゼッタ様。まずはおもてなしをマスターしましょう!』
……とのことだった。しかし、そこでロゼッタの恥ずかしすぎる事実がバレる。
それは……。
“ピーチ以外初めてと言っているがピーチは一回しか天文台に来ていない!”というもの。
気軽に話せる友達なのにそれはないでしょ……と、天文台中がしん、となったほど、チコ達は衝撃を受けていた。
そんな中ロゼッタはというと、
『友達少ないし招待するのも相手の都合とか余計に考えちゃって誘えないんですよ!!』
という、見苦しい言い訳だった。当然、チコ達は返答に困り俯き、ロゼッタは恥ずすぎる事実がバレ顔を真っ赤にし、同じく俯いていた。
そこでバトラーは、
『まずは書斎へ行っておもてなしについての本を探しに行きましょう。無ければ近くの星へ買いに行きましょうか』
と提案した。これには一同賛成し、ロゼッタも頷いた。
✧ ✧ ✧
……と、こんな感じで今に至る。
ロゼッタはもとの勉強熱心なところを活かし、三百ページほどのその本を半分ぐらいまで読み進めた。
今は朝の6時半ほど。彼が来るのは夜の9時くらいだ。
それまで時間を潰すためにチコ達の世話やグランドスターの管理などをしていく。
そして夜の6時になると、ロゼッタは書斎を出てキッチンへ入っていった。
エプロンと三角巾を装着すると、星杖を駆使し料理を開始した。
ロゼッタが作るおもてなし料理は、ハロウィンが近い季節というのもあり、濃厚なかぼちゃタルトと、かぼちゃのムサカを作ることにした。
かぼちゃタルトとかぼちゃのムサカは時間がかかるので、バトラーの手伝いと星杖で効率的に作る。
そうして1時間半後、ついにロゼッタのおもてなし料理が完成した。
オレンジ色の綺麗な色をしたタルトと、具だくさんなギリシャ料理のムサカは、とても食欲をそそるものだった。
あとは、彼が来るのを待つだけだ。
✧ ✧ ✧
夜9時。
約束通り、彼は来た。
天文台の戸を叩いて、中に入ってきた。
「こんばんは、ロゼッタさん」
「こ、こんばんは、リンクさん!」
力んでしまい、つい声量が大きくなってしまう。
そしてリンクがテーブルの方を見ると、その顔が喜びに満ちた。
「この料理はロゼッタさんが作ったのですか?」
「まあ、はい……。バトラーの力もありますが……」
「すごいですね!おもてなし、ありがとうございます!」
(褒められた……!初めてのおもてなしで自信無かったけど、成功して良かった!)
その後、二人で談笑したり食べたりして、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
リンクが帰ったあと、ロゼッタは後片付けをしていた。
しかし、その顔は楽しそうだった。
「上手くいって良かったですね、ロゼッタ様」
バトラーが話し掛けた。
「ええ、彼もすごく喜んでいたし……私、幸せです」
そう言って本当に幸せそうに笑うロゼッタは、胸が温かくなるのを感じていた。
外では雪が、静かに降っていた。
『おもてなし』
題:キスで返して
「なぜ貴方は、私のことが好きなのですか!」
「美しいからです」
「なぜ貴方は、私のことが好きなのですか!」
「優しいからです」
「なぜ貴方は、私のことが好きなのですか!」
「頑張り屋さんだからです」
「なぜ貴方は、私のことが好きなのですか!」
「全てが好きだからです」
「なぜ貴方は、私のことが好きなのですか!」
この問いは、一生続くのだろうか。
ずっとこの問いを繰り返している。それはもう、疲れるほどに。
ーー貴方の全てが好きだから。
それ以外に理由はない。けれど、あの人は心配なんだろう。
そんな理由じゃ。その理由だけでは。
何で返せばいいんだろう。
この人の護衛を始めてから、段々この人のことが解ってきて、良いところもたくさん知った。
当然、好きになった。
柔らかい笑みとか、挫けず頑張るところとか、英傑達と優しく接するところとか……。
そういうのを含めた全部が好きなのに、この人ーーゼルダ姫は分かってくれない。
だから俺はゼルダ姫に近づいてーー。
「……っ!」
キスをした。
キスでもしないと、この問いは終わらなそうだったから。
「〜〜〜っ!」
キスを止めてゼルダ姫の顔を見つめる。
頬が紅潮して、息が少し荒い。恥ずかしがっているのは一目見て分かる。
「……これで、分かっていただけましたか?」
「っ……!」
何か言おうとしているんだろうけど、言葉になっていない。
キスで、貴方の全てが好きだということが伝わったと思う。
ーー全部が好きなんですよ、ゼルダ姫。
お題『終わらない問い』