彗星

Open App

題:命

 命には、限りがある。
 そんなことは分かりきっていた。
 ーー私はそれを、否定した。

✧ ✧ ✧

 楽しい日々だった。
 ママは、魔法が少し使えたけど、私は完璧に使いこなせていた。
 ママの魔法は、『人を幸せにする魔法』。
 私の魔法は、『星を操る魔法』。
 私はもっと他にも魔法が使えた。
 ……病気を治す魔法は、使えなかった。
 ママは、不治の病に冒されていた。それは、長い年月をかけて、ママの身体を蝕んでいった。 
 私は病気のことを知らされていなかった。
 きっと、私に心配をかけさせたくなかったんだと思う。
 そうして、ママはいなくなってしまった。

✧ ✧ ✧

 自分が魔女だと気付いたのは、チコのママを探しに星の世界に旅立ってからだった。
 私は、とても長い間探した。
 ……見つからなかった。最初から分かっていた。
 でも、泣いている私をチコが救ってくれた。
 ーー自身の命の灯火を消して。

✧ ✧ ✧

 それから私は、チコ達のママになった。
 私はこの子達のママになってから、夜に必ずやることがある。
 それは、灯火をチコ達と囲むこと。
 私のために星になってくれたチコに感謝してーー。

お題『灯火を囲んで』

11/8/2025, 7:19:58 AM