彗星

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8/9/2025, 11:33:04 AM

題:美しき、風

 真夏の風は生ぬるい。全然気持ちよくない。
 いや、風量が足りないのか?とにかくぬるくて不快な気持ちになる。
「ちょっと待って、日傘忘れた!」
「お疲れ」
「ちょっと?」
 日傘忘れたんだ。これは確かにお疲れ。
「私の日傘小さいから二人は無理」
「え〜、デイジー、予備ないの?」
「無いわよ」
 なんか可哀想になってきた……。でも、かと言って俺も一つしか無いんだなぁ。
 涼しい風だったら良かったんだけど……。
「暑〜。日傘無しはキツイわよ〜」
「もしかしたら、リンクが貸してくれるかもよ?」
「え!それは恥ずかしいって!」
「え〜なんで〜?」
 小声でなんか相談し始めた?
「……」
 どうしよう、貸そうかな……。でもなぁ……。
 ……。
「良ければ使ってください」
「えっ」
「日傘を忘れたようなので」
「でも……」
「俺はダッシュで帰るので」
 ピーチさんに日傘を渡した後、俺はダッシュした。
 こうやってダッシュして風を感じるのも悪くないかも……。
 
 その後……。
「良かったわね、ピーチ!」
「ええ、良かった……良かったんだけど……」
「どうかしたの?」
「持ち手の部分にリンクの体温を感じて恥ずかしい……!」
「マジ??」
「マジ……!明日めっちゃ綺麗にして返そ!!」
(……ピーチさん、リンクさんに日傘借りたんだ……。追い付きそうならリンクさん入れてあげたかったな……)
 ロゼッタはピーチ達の会話を聞いて、心の中で風を感じて帰るリンクを思い浮かべていた。

お題『風を感じて』

8/7/2025, 12:00:29 PM

題:進むべき方向

 『心の羅針盤』。それは、一朝一夕で出来るものではない。日々の生活の中で、自分の心に耳を傾け、自分にとって本当に大切なものは何かを考え続けることで、少しずつ形作られていくもの。
 人生の進むべき方向を示す指針という、とても重要な羅針盤。
 何かに囚われることなく決められるとは、何とも便利な……。
 ……便利なのか……?
 少なくとも私は心の羅針盤を感じたことはない。感じる人は特別な人なんだろうなぁ。
 ま、私は特別じゃないってことでいいかな。心の羅針盤なんてどうでもいい。
 人生、心の羅針盤通りに行くとも限らないし。

お題『心の羅針盤』

8/6/2025, 9:29:50 AM

題:尊く

 海の泡って綺麗よね。儚くて。
 泡みたいに散れるのなら、泡になりたい。
 ママを失った人生に、意味なんてない。
 『だから泡になりたいの?』
 うん、そうだよ。でなかったらこんな事言わない。言うわけない。
 『星のように尊く生きなさいって言われたんじゃないの?』
 ……そうだけど、泡も充分尊いじゃない。儚いものほど尊いのよ。
 『残された貴方が、ママの分だけ幸せになるんじゃないの?』
 幸せになれるんならなりたいよ。幸せになれないから泡になりたいんだよ。
 幸せなんて泡みたいに消えちゃうんだ。
 なら、泡になる前に自分が泡になったらいいじゃない?

お題『泡になりたい』

8/5/2025, 12:00:24 AM

題:刻の流れ

 刻の流れとは残酷なもので、もう5月末。
 もうすぐさよならですね、春。
「1年ってあっという間よね〜」
「そうですね~、もう春が終わってしまいます」
 こうピーチさんと他愛のない会話をしている時間もあっという間。
 夏は明後日。
 ーーただいま、夏。

お題『ただいま、夏。』

8/3/2025, 8:56:52 AM

題:海の向こうの貴方へ

 瓶の中に手紙を入れてコルクの栓をする。自分でも馬鹿らしいと思う。
 だけど。
 だけど、あんなに恋焦がれるのは初めてだから。
 海の上にそっと置く。波にさらわれていく手紙。
 ーー虚しいな。
 そう思った。想いが波に奪われていくようで。悲しくも思った。
 けれど、どんなに虚しくても、悲しくても、彼女に想いを届けたい。
 ーーどうか、海の向こうの彼女へ、届きますように。


 その後、リンクの手紙が海の向こうの彼女ーーロゼッタに届いたことを、彼は知る由もないだろう。

お題『波にさらわれた手紙』

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